「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part6

 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part4Part5に引き続き、1月4日以降に書いた感想になります。Part6で終わりにするつもりでしたが、長くなったので二分割します。

 

・人類とミールの出会い、再び

 織姫は未来をつかむために、人間だけでなくフェストゥムも新たに地球にやってくるミールを欲しがっていると言っていた。

織姫「あなたたちは新たなミールの奪い合いに参加した」
『EXODUS』6話

織姫「問題はこの星に、新しい存在が来るということ」
真幸「新たなミールに島が反応しているのか」
織姫「世界中のミールの欠片たちがね。
   みんな、未来を探してる、
   滅びではない、未来を」
『EXODUS』11話

 地球に到来したアルタイルを獲得したのは竜宮島が。

織姫「この星であなたと対話をする相手は未来にいるの。
   その時まで眠りなさい、この島で」
『EXODUS』26話

 しかし、現時点でアルタイルと対話できる存在はいないということで、織姫が竜宮島と一緒に海に沈めて眠らせた。ティザーPVにはミールが海になったウォーカーの姿があることから、アルタイル争奪戦はある意味、振り出しに戻ったと言っていいのかもしれない。

ミョルニア「我々にも時間は操作できない。
      だか、時間の到達していない未来でなら、
      私とお前は求めるものを共有できる」
一期24話

 かつて、ミョルニアは過去をやり直すことはできないが、未来でならやり直すことができると言った。ミョルニアは北極ミールから分岐した存在なので、これが北極ミールから生まれたフェストゥム側の基本的な考え方だと思う。皆城総士はフェストゥムに永遠に痛みを与え続ける存在になったが、転生した時に皆城総士の記憶は消えていた。それならば転生した皆城総士を痛みを知らない存在にしてしまい、その上で北極ミールから生まれたフェストゥムがアルタイルを獲得すれば、皆城総士の祝福である痛みを消し、人類との出会いをやり直せると考えたのかもしれない。

 

 ミョルニアはボレアリオス・ミールに囚われた後、『HEAVEN AND EARTH』で島のコアの命を支えるために島のコアの一つになることを選んだ。つまりミョルニアを通じて竜宮島のミールに北極ミールの考えが伝わったと考えられる。その結果、竜宮島のミールは人類と北極ミールが出会った後に起きたすべての出来事を竜宮島の住人が知っていれば、未来を変えることができると考えた。その結果、一期でマスター型のフェストゥムが行ったのと同じ行動(人間の姿を取り、言動を真似る)を竜宮島のファフナーのパイロットに体験させた。

 一期はフェストゥムが人という存在に近づくことで、人を理解しようとした物語だった。それ故、マスター型のイドゥン、ミョルニアといった存在がいた。その延長上にある『HEAVEN AND EARTH』では、スフィンクス型のフェストゥムにもかかわらず、「空がきれいだ」という感情を持つ来主操が生まれた。『EXODUS』の竜宮島のパートではファフナー・パイロットがSDPを発症し、フェストゥムの力を得た。つまり『EXODUS』では逆に人がフェストゥムに近づくことで、フェストゥムを理解しようとする物語だった。
【蒼穹のファフナー EXODUS】人とフェストゥムの共生 Part2ー補足

 一方、島外派遣組は一期よりもさらに前、日本の国土がほとんど失われた上に人間とフェストゥムから追われた親の世代の経験を追体験した。

 シュリーナガルからダッカ、そしてハバロフスクで竜宮島と合流するまでの旅は一騎、総士、真矢、暉にとっては自らの親世代の追体験であったが、視聴者は2118年以降、日本が人類軍からどのような攻撃を受け、どんな視線で見られていたのかを目の当たりにすることになった。
蒼穹のファフナー EXODUS 第22話-2『旅路の果て』

 竜宮島側の物語は『HEAVEN AND EARTH』を境にして、時間軸的には未来に進んでいるにもかかわらず、ファフナーのパイロットたちは時間をさかのぼっているように見える。『BEYOND』で竜宮島の住民は新国連の住民と一緒に海神島で暮らしている状況から始まるが、これは日本が世界から孤立する前、北極ミールが地球に落下する前の状況と重なる。2114年、北極ミールが宇宙から飛来して人類と出会ったが、これは残念ながら双方が傷つけ合う不幸な出会いになってしまった。それならば、北極ミールとの出会った時の経験をすべて知った状態でアルタイルと出会えば、人類とミールの出会いをやり直すことができる、竜宮島のミールはそう考えたに違いない。

 竜宮島のミールと北極ミールとの考え方の違いは『EXODUS』の総士の人生と『BEYOND』のこそうしの人生を比較すると一目瞭然である。

 『EXODUS』の総士の人生は以下の通りである。

  • 妹は島のコアなので、一緒に暮らすことができない。
  • 一騎を一騎を同化して一緒にいなくなろうとしたが、一騎は反撃した。総士の左目に傷は残ったが、視力は失わなかった。
  • 左目の視力を失わなかったので、ファフナーに乗れる。
  • ファフナーに乗り続けた結果、同化現象に襲われていなくなった。

 総士が肉体を取り戻してこの世界に帰ってきた時、左目に傷は残っていたが、その視力は取り戻していた。総士の左目に傷を負わせた一騎とは和解していた。つまり、妹はコアなので一緒に暮らせず、一騎を同化しようとして反撃されたが、その傷は外傷のみで視力には影響のなかった場合の総士としての人生を送ることになった。ジークフリード・システムの担当者にはならず、ファフナーのパイロットになって仲間と戦い、そして最後には同化現象でいなくなる。妹が島のコアであることと一騎を同化しようとした過去を受けれた、いわば総士が一番望んでいた生き方だった。
「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part3

 一方、PVから想像できる『BEYOND』のこそうしの人生は以下の通りである。

  • 妹と一緒に暮らしている。
  • 今の生活に満足しているためいなくなりたいと思うことはなく、一騎を同化したいと思うこともなかった。そのため、左目に傷はなく、目も見える。

 こそうしには一期の総士を形作ったもの=苦しめたものをすべて消した人生が与えられているということになる。
「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part3

 北極ミールは過去の出来事をすべて否定してしまったが、竜宮島のミールは過去の出来事を肯定し、受け入れている。人間は過去の出来事から学んで未来に活かす。奇しくも竜宮島のミールは歴史という概念を理解してしまったのかもしれない。

 

・一騎が望んだ人生

 痛みでフェストゥムを祝福した総士はフェストゥムから祝福された結果、肉体を取り戻してこの世界に帰ってきた後、自分が望んでいた人生を全うしていなくなった。『EXODUS』で祝福することを条件に竜宮島との調和を選んだ一騎は『EXODUS』の総士と同じように『BEYOND』で自らが望んでいた人生を与えられるはずである。一騎の望みとは “自分が総士を傷つけない” ことだが、その望みをかなえるために必要なのは、”一騎を同化したいと思わない総士” である。総士が一騎と一緒にいなくなりたいと思うようになった原因は父、公蔵から言われた言葉だった。

総士「ぼくはこの島のコアを守るために生きてるんだって、父さんに言われた。
   自分や他の誰かのために生きてちゃいけないんだって」
一期15話

 それならば、一騎の望みをかなえるためには、総士の妹がコアでなければいいということになる。しかし、一騎が海神島でこそうしを育てた場合はこの条件をクリアできない。皮肉なことにこそうしはさらわれた先で妹と一緒に暮らしていたため、一騎が望む “一騎を同化したいと思わない総士” だった。そのため、一騎が再会した時には少年になっていたこそうしは9歳の時に一騎を同化しなかった総士ということになる。さらにこそうしが痛みを知るのは、総士がニヒトに残したメッセージを聞いた時であるため、こそうしに痛みを教えるのは一騎ではない。こそうしは一騎は望んだ “一騎が傷つけなかった総士” ということになる。つまり、一騎は『BEYOND』でフェストゥムのやり方で人生をやり直す、つまり自分の望みをかなえた人生を生きることになる。

 

・今を反映した物語

──最後に、冲方さんは福島県で、東日本大震災に遭われてますよね? そのことは今後、『蒼穹のファフナー』という作品に影響を与えますか?
冲方 与えるでしょうね。どういう風に与えるかわからないですけれど、どうしたって与えますね。福島なんて3.11から1日も経っていないっていうくらい、何にも解決していませんから。あそこでは未だに震災が続いているんです。
INTERVIEW 冲方丁×プロデューサー座談会

 これは『蒼穹のファフナー Blue-ray BOX』(2012年11年21日発売)のブックレットに掲載されたインタビューからの引用しましたが、竜宮島の住民が島を立ち去らなければならないという『EXODUS』のラストは冲方丁の東日本大震災の体験が元になっていると思います。『BEYOND』制作の可否は『EXODUS』放送終了後に下されたと思いますが、最初から『BEYOND』ありきの企画だったと思います。続編が作られなかったため、主人公が故郷に帰れずに終わった作品というと『勇者王ガオガイガー FINAL』(2000年~2003年)を思い出します。『勇者王ガオガイガー FINAL』の続編は2016年から小説という形でweb連載されていますが、前作からあまりにも時間が経ちすぎていていたため、物語を自分の中ですべて消化してしまい、今となっては必要のない物語になってしまいました。

 


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