「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part7

 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part4Part5Part6に引き続き、1月4日以降に書いた感想になります。これが最後になります。

 

・祝福するということ

 ファフナーの世界でいなくなった人の遺体があることはまれです。そのため、『EXODUS』ではこの世界に存在していた証として、いなくなった人が身につけていた物が残されました。暉はお守り、弓子は結婚指輪、エメリーは弟の靴。最近、祝福とは同化されていなくなることを受け入れた者がフェストゥムに対して残していった、絶対に消すことのできない生きていた証のようなものだと思うようになりました。

 七夕の短冊に思わず「生きたい」という本心を書いてしまった一騎は、竜宮島のミールからいずれ祝福するという条件で命を得たが、いなくなることをどのような形で受け入れるのだろうか。

 

・未来でやり直す

冲方 一騎と総士の関係が、上手くフェストゥムと人類の関係になっています。
INTERVIEW 冲方丁×プロデューサー座談会(※1

 『EXODUS』のラスト、一騎とこそうしが海神島の浜辺で一緒にいる場面は、フェストゥムと人類の過去に対する考え方の違いをよく表している。『EXODUS』で一騎と総士の二人は生まれ変わったが、フェストゥム(=こそうし)は過去の出来事を否定し、なかったことにしてゼロからやり直すことを選び(※2)、人類(=一騎)は過去の出来事を肯定し、その記憶をすべて持ち続けることを選んだと見ることもできる。

 ティザーPVで美羽が「あなたが小さかった頃、たくさんお話したの、覚えてる? 総士」と言っていることから、おそらくこそうしは幼い頃、海神島から連れ出されたため、『BEYOND』で一騎とこそうしは以下の状態で出会うことになる。

一騎が知っているこそうしは生後数年間。こそうしは見知らぬ人に育てられ、一騎が再会した時は少年になっていた。当然、一騎はこそうしがどういう人間なのか全く知らない。
「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part2

 一騎=人類、こそうし=フェストゥムだとすると、人類はフェストゥムについて何も知らないが、言葉でコミュニケーションが取れる状態で人類とフェストゥムが出会ったということになる。北極ミールと人類が出会った時とは異なり、ミールと人類が出会った時に言葉を使って話し合うことができる状態であれば、フェストゥムと人類が互いを傷つけ合うことなく、理解できるようになるかもしれない。そして、人類とフェストゥムが理解した後、一緒に竜宮島に眠るアルタイルと対話すれば、北極ミールと人類の出会いを最初からやり直すことができる。そして、これが成功した暁には、島民は竜宮島を取り戻し、帰還することができる。おそらくこれが竜宮島のミールの考えなのだろう。人類がフェストゥムを理解するためにはこそうしが敵に奪われることさえも、竜宮島のミールは必要不可欠なことだと考えている節がある(※3)。

 

織姫「あなたたちは新たなミールの奪い合いに参加した」
『EXODUS』6話

織姫「みんな、未来を探してる、
   滅びではない、未来を」
『EXODUS』11話

 アルタイルの到来は地球にミールと人類の出会いを最初からやり直す機会を与えたということになる。アルタイルを獲得した者が地球の未来を決める権利を有するため、新国連と複数のアザゼル型フェストゥムの間でアルタイル争奪戦が勃発した。アショーカを所有するナレイン将軍が竜宮島を訪れたことで、竜宮島もアルタイル争奪戦に参加。最終的にアルタイル争奪戦は竜宮島の勝利で終了。しかし、これはアルタイル争奪戦の第一ラウンドが終了したにすぎず、その直後、第2ラウンドがスタートしていた。竜宮島がこのことに気がつく前にフェストゥムがこそうしを奪い、先手を取ったと見ることも可能だろう。となると、「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part4のアルタイルと対話する人にも書いたが、アルタイルと対話するのは美羽ではなくこそうしの可能性が高い。

 

 一方、新国連は接収した蓬莱島のコアを使って密かにベイグラントを所有し、アルタイル争奪戦に参加していた。アザゼル型のフェストゥムはミールと人類の出会いをやり直そうとしていたが、新国連は人類とミールの出会いそのものをなかったことにしようとしていた。

ヘスター「怪物たちが呼び寄せる新たなミールを破壊し、
     この星を再び人類の絶対生存圏とするのです」
『EXODUS』6話

 そのため、新国連が保有するベイグラント以外のアザゼル型フェストゥム、アショーカ、瀬戸内海ミールをすべて滅ぼそうとした。

ヘスター「怪物たちを1ヶ所に集めなさい。
     人類のため、地上のミールを撲滅するのです」
『EXODUS』21話

 しかし、新国連の作戦は失敗し、地上のミールをすべて撲滅することもアルタイルを破壊することもできなかった上に、ベイグラントを失った。5万人ほどいるというフェストゥム因子に感染しない人間の存在も含め(※4)、『BEYOND』で新国連がどのような行動に出るのかが気になる。

 ミールと人類の出会いをなかったことにしたい新国連、ミールと人類の出会いをやり直したい北極ミール、この二者は北極ミールと人類の出会いをなかったことにしたいという点では同じ穴の狢である。それに対して、ボレアリオスとアショーカを含む竜宮島ミール側は北極ミールと人類の不幸な出会いをすべて肯定した上で、ミールと人類の出会いをやり直し、この地球上での共存を考えている。

 

・偽装鏡面-偽りと真実の壁-

 一期1話、真矢は偽装鏡面が解除された時に太陽の位置が反対になる様子を見た。非常に印象に残る映像だが、それが何を意味しているのかはわからなかった。その答えはアニメの放送終了後に発売されたノベライズの中にあった。

影が凄まじい速度で、右から左へと動いてゆく。まるで時間が急激に進み、その場にいる全員をそれまでとは違う未来へ――異なる世界へ連れてゆくかのようだった。
『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』第二章2

 偽装鏡面が解除される様子を見るのは総士、一騎、甲洋、蔵前、真矢、翔子の6人だということからもわかるように、偽装鏡面の解除というドラマティックな映像と子どもたちが偽りの世界から真実の世界に出ていく様子を重ねていたことがわかる。事実、ノベライズでは現実の世界と偽装鏡面の中の竜宮島は西と東、北と南、さらに季節は逆で暦も半年のずれがあるという感じで、偽りの世界であることが徹底されていた。

すべてが逆転した世界――太陽が位置を変え、影が凄まじい速度で動いた、あのときなのだろう、と思った。あのときから自分は、見たこともない未来へ放り込まれたのだ。
『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』第三章1(※5

 冲方丁がPVの感想で “生と死” を “死と生” と意図的に逆にしていたことからもわかるように、冲方丁が脚本を担当していなかったために、一期1話では描けなかった “逆転した世界” というのがおそらく『BEYOND』でのテーマの一つなのだろう。『EXODUS』では指輪痕の描写、バトルフィールドの設定などノベライズから逆輸入された要素が多かったが、こそうしが囚われている島から外に出る時の描写はノベライズでの描写を意識したものになる可能性が高い。ニヒトに残されたメッセージを聞いた後のこそうしは文字通り、突如、見たこともない未来へ放り込まれることになる。ノベライズでは一騎の一人称で書かれているが、『BEYOND』では一騎と総士の立場が入れ替わり、この部分はこそうしの視点で描かれることになる。

 

・総士、一騎、竜宮島

織姫「あなたはどう世界を祝福するの」
『EXODUS』4話

 『EXODUS』における一騎の物語はこの問いかけから始まった。一騎はシュリーナガルの人々を守るためにザインに乗ったが、竜宮島を目の前にしてその命を使い果たし、昏睡状態に陥った。

カノン「今、我々とお前の間で調和の可能性が開かれた。
    皆城総士が存在と無の調和を選んだように
    お前が世界を祝福するなら、
    我々が生と死の循環を超える命を与えよう」
『EXODUS』24話

 一騎は竜宮島のミールからの申し出を受け入れた。一騎は昏睡状態から目覚めた後、総士に「お前が選んだ道を、俺も選ぶよ」(※6)と言っていたことからも明らかなように、一騎は一期26話~『HEAVEN AND EARTH』で総士が選んだ道のりを後追いしたということになる。一方、『EXODUS』で全島民が竜宮島を立ち去ったが、アルタイルとの対話が成功しない限り、竜宮島に帰ることはできないため、一時的とはいえ島の喪失をも意味していた。つまり一期で一騎が総士を失ったのと同じ経験を『EXODUS』では竜宮島の全島民が体験したということになる。一期26話の総士のモノローグと『EXODUS』26話の史彦の言葉が重なる。

総士「お前が信じてくれる限り、いつか必ず帰る。
   お前がいる場所に」
一期26話

史彦「アルヴィス総員、必ずこの島に戻る」
『EXODUS』26話

 

 物語の構造を見ると『BEYOND』で描こうとしているものが見えてくる。総士の後を追う一騎は『BEYOND』で『EXODUS』での総士と同じく自らの望み(一騎が傷を負わせなかった総士と生きる)をかなえることになるのだろう。一方、一騎の後を追う竜宮島の全島民は『HEAVEN AND EARTH』で来主操を通してボレアリオス・ミールとの対話に成功した後、総士が帰ってきたように、『BEYOND』ではアルタイルと対話して、竜宮島を取り戻すことになるのだろう。

 一騎は一期から一貫して総士を理解するために総士の後を追う形で総士と同じ経験をしていましたが、『EXODUS』ではついに竜宮島というコミュニティが一騎の追う形で一騎と同じ経験をすることになりました。サブタイトルを「総士、一騎、竜宮島」としましたが、『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』(ハヤカワ文庫)の後書きの一文を思い出しました。

SFは、わたしという一人称の世界、あなたがいる二人称の世界、社会を構成する三人称の世界の先に、人類という第四人称が存在することを教えてくれる。

 この構図をファフナーに当てはめると、一騎=わたし、総士=あなた、竜宮島=社会となり、『EXODUS』ではわたしの経験が第三人称の世界である竜宮島にまで伝わった。わたしの経験がその先の第四人称の世界である人類=新国連にまで伝わった時、この物語が終わるのではないだろうか。

 

・『BEYOND』は2154年?

総士「22世紀は人類にとって戦いの時代となった。
   遠い宇宙から来た未知の存在フェストゥム。
   人類の理解を越えた力を持つ彼らがこの星に現れてから40年、
   世界の大半が戦場と化した」
『EXODUS』1話

 北極ミールが地球に飛来したのが2114年なので、フェストゥムが現れてから40年後は2154年ということになるが、それは『EXODUS』から3年後である。総士はニヒトに残されたメッセージを転生した自分が聞くのは、自分がいなくなってから3年後の2154年ということを何らかの形で知っていたのかもしれない。だとすれば『BEYOND』は2154年の物語ということになる。そういえばザインに乗らない場合の一騎の残りの人生はあと3年だった。

一騎「あと3年、それだけあれば覚悟だってできる」
『EXODUS』1話

 竜宮島のミールが一騎に与えた生と死の循環を超える命の長さは、ザインに乗らなければ一騎が生きていられた時間なのかもしれない。
「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part5

 

・最後に

 「最後に」というサブタイトルをつけて書き始め、できあがったのがpart6の「人類とミールの出会い、再」。まだ書きたいことが残っているということになり、それから1週間くらい書いてようやく終わりが見えました。が、この時すでに7500字を越えていたので、二分割しました。

 このPVを見た後、『EXODUS』の放送が終了した後の2015年から2016年の年末年始と同じような気分になりました。『EXODUS』は第4次蒼穹作戦終了から2年後の海神島の様子を描いて終わりましたが、視聴者が作中と同じ2年後に到達した時にPVを通して情報公開されましたが、このPVは『BEYOND』の導入であるのと同時に『EXODUS』のエピローグだったと思います。3週間くらいかけて30,000字ほど書いた結果、ようやく『EXODUS』が終わった、というのが今の正直な感想です。

 一期をリタルタイムで見た人は『HEAVEN AND EARTH』の公開まで現実と作中の時間が同じでないにせよ作中のキャラクターと同じ気持ちを共有し、『HEAVEN AND EARTH』を公開時に見た人は『BEYOND』の放送開始まで現実と作中の時間が同じでないにせよ、作中のキャラクターと同じ気持ちを共有していたと思います。『BEYOND』の情報公開のタイミングを見ていると、『EXODUS』から『BEYOND』では制作側が意図的に作中と現実の時間を合わせているように感じます。

 また、『EXODUS』では一期で冲方丁が脚本に参加していない11話までのエピソードの一部を冲方自身の手で書き直していました。たとえ一期11話までの内容に納得できない部分があったとしても、決して否定せず、むしろ積極的に肯定するという姿勢の現れと見ていました。しかし、アルタイルに対する竜宮島、新国連、フェストゥムの考えを分析すると、この考えが作品の外だけでなく作品の中まで貫かれていることに気がつき、驚きました。

 今になって振り返ると『EXODUS』放送終了後から能戸総監督には完全にはめられたという心境です。総士がいなくなったという事実を受け入れる前に「こそうし記」が始まり、複雑な心境で読んでいました。2017年の一騎生誕祭で「こそうし記」を石井さんに朗読させていましたが、蓋を開けてみれば、実際にはすべて一騎の夢のようなものだったというオチ。PVを見た後だと、2017年12月のカレンダーの絵柄(一騎とこそうし)でさえ、このタイミングを狙っていたと思うようになってしまいました。

 『EXODUS』は最後まで先の見えない物語だったことが精神的にきつかったのですが、『BEYOND』は大まかな物語の流れを見通すことができるので、『EXODUS』よりは精神的に楽に見られると思います。PVの内容を見た後、溝口さんの「これから戦うから勉強しとけってか」(※7)という台詞を思い出したので、『BEYOND』が始まる前までに頭を整理しておこうと思います。

 『EXODUS』を製作時に『BEYOND』の制作も視野に入れてしたと思いますが、一騎と総士、こそうしの設定はよく練られていて、ただ感心するのみ。『EXODUS』の第26話、転生した総士の姿(赤子!)と名前に呆然としましたが、PVを見た後はその理由が判明し、納得しました。また、PVを見た後、『EXODUS』では意味の分からなかった台詞の意味がわかったり、回収されなかった台詞が『BEYOND』への伏線だったことがわかったので、Blu-ray BOXが出たら『EXODUS』を見直そうと思っています。

 

P.S. 公開した後、1ヶ月かけてPVの感想を書いていたことに気がついた……。

 

※1 『蒼穹のファフナー Blue-ray BOX』のブックレットに掲載。

※2 『HEAVEN AND EARTH』でボレアリオス・ミールの使者として竜宮島にやってきた来主操は痛みを消そうとしていた。

 操「そう、俺に君たちのコアを同化させて」
史彦「なんだと」
 操「そうすれば戦ったりせず、
   ここのミールを俺たちのミールが同化できる
   俺たちに痛みや死の恐怖を与えたのはこの島だから」
史彦「我々ごとお前たちの痛みを消すと」

 これが『BEYOND』に至るまで変わることのない、北極ミール側の基本的な考え方である。

※3 『EXODUS』8話、織姫が奏しに言った「あなたの心と力が作り出す未来を、たぶん私は見られない。でも、こうして感じることはできる。信じていい未来だよ、総士」という言葉が心に引っかかっている。

※4 『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』(2013年、ハヤカワ文庫)。

※5 『EXODUS』23話でバーンズは溝口にこう言っていた。

バーンズ「本当の目的はフェストゥム因子の消滅と
     因子に感染しない特異体質者の選別だ」
  溝口「そんな人間がいるのか」
バーンズ「5万人ほどな」

※6 『EXODUS』25話。

※7 『HEAVEN AND EARTH』の溝口の台詞。

 


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