※混乱を避けるため、この記事の中では転生後の皆城総士をこそうしと表記しています。
ティザーPVとは比較にならないほどの情報量を持つPVで、見るたびに新発見があるため、なかなか考えがまとまりませんでした。とりあえず、2017年12月27日から2017年12月30日に書いた感想を公開します。
・PVのBGM
angela「Prologue -君の向こう側-」はPVのBGMとして使われると予想していたので、先入観を排すため、真矢生誕祭で一度聞いたのみ。この時も歌詞を聞かないようにしていた。
・ティザーPVとPVの関係
『THE BEYOND』PVを見た後にティザーPVを見直すと、ティザーPVが『THE BEYOND』の物語全体のプロットを見せていることがわかる。第五次蒼穹作戦中心の『THE BEYOND』PVは「蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH」劇場予告と同じく、物語の冒頭部分のカットから作成したものだと思います。
・『EXODUS』放送終了から2年
2017年12月で『EXODUS』の放送から2年経った。つまり、視聴者の時間も『EXODUS』26話のラストシーンと同じ地点に到達したことになる。ティザーPVとPVを見ると、『THE BEYOND』はおそらくこそうしの奪還を目的とした第5次蒼穹作戦からスタート。一期から『EXODUS』までは物語の冒頭に平和な日常が置かれていたが、『THE BEYOND』の冒頭に一期と同じ偽りの平和を持ってくるために、本当の平和な日常は『EXODUS』のラスト(それも1分足らず!)に移されていた。
これまでも一期から『HEAVEN AND EARTH』までの「総士、帰ってきて」という感情と時間、『HEAVEN AND EARTH』から『EXODUS』までのつかの間の平和という状況と時間が物語の中と外で共有されてきた。『THE BEYOND』ではこれまで以上に物語の外と中の感情と時間をリンクさせているように感じる。第4次蒼穹作戦終了後に訪れた平和はおそらく2年足らずに過ぎず、『EXODUS』の放送終了から2年後に情報量の多い『THE BEYOND』PVが公開された結果、物語にいる外にいる視聴者の時間も動き始めた。
・痛みのない人生
総士「なんでも望み通りにしよう」
乙姫「家族みんなで、暮らしたいな」
一期17話
織姫「普通の家族みたいに、暮らしたかったね」
総士「それがかなう未来を願おう。
僕らがいた証として」
『EXODUS』22話
PVで成長したこそうしの日常生活を見ることができるが(1’30″~1’44″)、総士自身が望んでもかなえることのできなかった子供時代が実現した世界のように見える。その一方、こそうしの表情と動きになぜか違和感を感じた。そう、パラレルワールドもののパロディを見ているような感覚に陥った。(※1)
『THE BEYOND』の物語発端になるのは『EXODUS』26話のラストにある台詞だろう。
こそうし「ねえ、あの向こうにはなにがあるの」
一騎「世界とお前の故郷が」
こそうし「世界、故郷」
『EXODUS』26話
もしかしたら、この時までが一騎とこそうしの幸せな時間だったのかもしれない。そして、『THE BEYOND』のティザーPVはこの言葉から始まった。
美羽「あなたが小さかった頃、たくさんお話したの。
覚えてる、総士」
美羽「私たちみんな、あなたを探し続けたんだよ」
『THE BEYOND』ティザーPV
おそらく『EXODUS』26話からほどなくしてこそうしは奪われた。(※2)『EXODUS』のカレンダーの2017年12月と『EXODUS』のBD-BOXのジャケットに描かれていたのはこの頃の一騎とこそうしだったが、二人が一緒にいたのはこの頃までということを暗に示しているのかもしれない。
ボレアリオス・ミールが痛みや死の恐怖を消すために竜宮島のミールを同化しようとしたように、それとは別のフェストゥムの中に総士を消したいと思う者が生まれたのではないだろうか。
エメリー「あなたはフェストゥムにとって抜くことのできない棘。
痛みを教える存在だとわたしたちのミールが言ってます」
エメリー「あなたは永遠の存在だとミールは言っています。
彼らに痛みを与え続けるため、この世に居続けると」
『EXODUS』14話
フェストゥムの棘となった総士を消すことはできない。だが、フェストゥムとは人の心を読み、誘惑する存在。
総士「僕の心を読んで、僕を誘っているのか」
一期23話
アショーカに作られたエメリーでさえ島のコアと対話した時、いなくなった乙姫の深層意識を読んだ。
エメリー「そうなんだ、あなたの前にも自分を犠牲にしたコアがいたんだ」
『EXODUS』3話
『EXODUS』で竜宮島のミールとアショーカは人の望みをかなえるということをしていたが、総士を消したいと思った存在はこそしの心を読み、故郷に帰りそこで暮らすという望みをかなえた。そこにはいなくなった道生と弓子、そして妹の乙姫の姿があった。
喜安「一騎がロケットの中で寝てたじゃないですか。どんないい夢見たんですかね」
冲方「実はちょっとカットされてしまってて、誰も死ななかった島の夢ですね。翔子も衛も道生さんも生きている。学校の中で生活している。フェストゥムなんか現れなかった」(※3)
こそうしがいる島にはいなくなった道生、弓子、そして妹の姿があることから、『EXODUS』9話で一騎が見た夢の世界そのもののように見える。海神島にいた時と同じように一騎はこそうしにとって同級生ではなく父だったなら、一騎が総士の左目を傷つけることはなく、総士はその痛みを知ることはない。また、フェストゥムのいない世界であるならば、妹は島のコアではないので、一緒に暮らすことができる。かつて能戸総監督が総士の家族への思いをこう話していた。
ワルキューレの岩戸での皆城さん
8歳くらいの頃は、よく来てはそこで眠ってしまい、公蔵に抱かれて家のベッドに寝かされることの繰り返しでしょうか。
『アニメージュ』2006年1月号
総士を消したいと思った者は、総士に痛みを与えたものをすべて消した人生をこそうしに与えれば、こそうしは痛みを知ることはなく、自らに与えられた役割ーフェストゥムに痛みを与えるーを果たすことはないと考えたのだろう。
・島に閉じ込め込められる総士
一期で一騎が竜宮島を出た後、新国連にいるとわかった時、総士は迎えに行けなかったことからもわかるように、総士は竜宮島に縛り付けられ、コアの許可なしには竜宮島から出られない存在だった。そして、囚われているこそうしも総士と同じく島から出られない存在である。
ここにいると定められたのなら
僕はその運命に抗う
『THE BEYOND』ティザーPV
総士は島のコアの許可なく竜宮島から出られないことを受け入れていたが、こそうしは逆に島にいつづけることを良しとせず、島から出たいと思っているのかもしれない。また、一期で一騎は刈谷の手引で竜宮島を出たが、総士はそれとは逆に島から出ようするが、阻止されるという状態なのかもしれない。
※1 この場面を見た瞬間、頭に浮かんだのは『新世紀エヴァンゲリオン』最終話「世界の中心でアイを叫んだけもの」でシンジが同級生と普通に学園生活をしている世界。
※2 だとすると、能戸総監督が書いていた「こそうし記」は意味が変わってくる。弓子と同じく、おそらく一騎も子どもの成長を見られなかった。
※3 2015年5月24日「蒼穹のファフナーEXODUS」スペシャルイベント-痛み-」での冲方丁への質問コーナーでの発言。このイベントは『EXODUS』BD/DVD12巻の特典ディスクに収録されている。
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2017年の更新はこれが最後になります。
今年は公式からの情報がほとんどなかったにもかかわらず、お越しいただきありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。