蒼穹のファフナー THE BEYOND」カテゴリーアーカイブ

【蒼穹のファフナー THE BEYOND】実体化

 『蒼穹のファフナー』の主人公である一騎が竜宮島ミールの祝福を受けた『EXODUS』24話以降、物語はフェストゥムの言語を使って描かれています。

 

●フェストゥムの言語

 フェストゥムの言語とは何でしょう。

総士「これが、フェストゥム」
公蔵「いいや、こんなものではない」
一期1話

 竜宮島に初めてフェストゥムが来た時、人間はフェストゥムの姿を見ることができませんでした。しかし、実体化というというフェストゥムの行動によって、人間はフェストゥムの姿を見ることができるようになりました。つまり、フェストゥムの言語は「行動」ということになります。

 

●実体化

弓子「フェストゥム、実体化します」
一期1話

 竜宮島に初めて来たフェストゥムが行ったことは、目に見えないものを実体化することによって、目に見えるようにすることでした。一方、フェストゥムの言語(行動)で描かれた物語である『THE BEYOND』で行ったことは、目に見えないものを実体化することによって、目に見えるようにすることでした。それでは『THE BEYOND』で実体化した目に見えないものとは何だったのでしょう。

 

●真実

一騎「これが真実だ」
『THE BEYOND』3話

 それは「真実」でした。しかし、私はフェストゥムの言語(行動)を知らないため、実体化した「真実」を読み取ることはできません。

総士「僕も何度も報告書を書こうとしたがダメだった」
『EXODUS』14話

 

●翻訳

 私はフェストゥムの言語である「行動」を抽象、人間の言語である「言葉」を具象だと考え、論理的思考の抽象と具象を行き来するという手法を使って、フェストゥムの言語(行動)を人間の言語(言葉)に置き換えていきました。これを続けていくと、フェストゥムの言語(行動)を使って書かれた物語を私が理解できる人間の言語(言葉)を使って表現する、つまりフェストゥムの言語(行動)を人間の言語(言葉)に翻訳できるようになりました。

 外国語を日本語に翻訳する場合、意味を理解した言葉のみ、日本語に翻訳することができます。外国語と同じようにフェストゥムの言語(行動)も、自分が理解したフェストゥムの言語(行動)のみ、人間の言語(言葉)に翻訳することができます。つまり、私はフェストゥムの言語(行動)を人間の言語(言葉)に翻訳するという行為を通して、フェストゥムの考えを理解していったのです。そして、フェストゥムの言語(行動)を使って描かれた物語をずべて人間の言語(言葉)に翻訳し、実体化した真実を見た瞬間、『蒼穹のファフナー』という物語が終わりました。

 

【蒼穹のファフナー THE BEYOND】親との別れ

 『ファフナー』では定番の展開を入れ替えたり、定番の展開を一部分を抜く(!)ということを行っているのですが、岩明均『ヒストリエ』(講談社)では定番の展開を丁寧に描いていました。『ファフナー』と『ヒストリエ』を対比させることによって、『ファフナー』で描こうとしたものを明らかにして見ようと思います。

 この記事には岩明均『ヒストリエ』12巻のネタバレ内容が含まれています。

 

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【蒼穹のファフナー THE BEYOND】真実

 『THE BEYOND』を見終わった視聴者は、偽竜宮島で暮らしていたこそうしと同じように「今、見たものが真実である世界」にいます。

一騎「これが真実だ。
   お前が家族だと思っていた相手も
   お前がいた島も全部偽物だ」
『THE BEYOND』3話

 こそうしは真実を見た時、偽りの世界である偽竜宮島から脱出し、真実を知る旅が始まりました。こそうしと同じように、視聴者も物語の中では直接、描かれていない真実を知った時、『蒼穹のファフナー』の真実を知る旅が始まるのです。

 

 私は2019年10月26日、墓じまいを見た時、物語の中で直接、描かれていない真実を知ってしまったため、『蒼穹のファフナー』の真実を知る旅が始まったのです。たとえ2019年10月26日に墓じまいを見なかったとしても、 『THE BEYOND』12話の中に私が真実を知ることのできるシーンがあるので、 『THE BEYOND』12話を見た後、2019年10月26日と同じ状態になったと思います。

 

【蒼穹のファフナー THE BEYOND】世界を祝福する

 2024年5月29日、『蒼穹のファフナー』を理解し終わりました。以下に感想をまとめました。

 

●物語の終わり

 私は一騎と総士を理解すれば、物語は終わると思っていたので、このブログの中で「終わった」という言葉を使いました。しかし、物語を終わらせるためには一騎と総士だけなく、真矢を理解する必要があったのです。

カノン「我々はお前によって世界を祝福する」
『EXODUS』24話

 この言葉の意味を理解し、一騎が祝福した世界を見た時、物語が終わりました。

 

●THE BEYOND

 『THE BEYOND』で描かれたものは「真実」でした。この真実の中には過去の真実も含まれています。

 『THE BEYOND』は一騎が親になる物語でした。一騎は血縁関係のある子を持っていないため、母、紅音の姿をしたミョルニアから受け取ったマークザインから降りた時、親になりました。そのため、『THE BEYOND』は一騎がマークザインから降りた後から物語が始まりました。

 

●主人公

 私はずっと「『蒼穹のファフナー』の主人公は誰なのか?」という疑問を抱えていました。最終的な答えは「物語の主人公は一騎。視聴者のアバターとしての主人公は真矢」となりました。

 

●心残り

 『EXODUS』は総士の心残りを解消するための物語でした。『BEHIND THE LINE』は一騎の心残りを解消するための物語であり、『THE BEYOND』は真矢の心残りを解消するための物語でした。

 

●鍵

 『THE BEYOND』12話には物語を理解するための鍵が、『BEHIND THE LINE』には物語を理解し終わった時に使う鍵が含まれていました。

 

「蒼穹のファフナー」を見直した感想(2024年4~5月)

 『THE BEYOND』の分析が一段落ついたので、一期を全話見直しました。感想は一期と『THE BEYOND』を対比させたものになりました。

 

●真矢と甲洋

 一騎と甲洋の関係は一期6話の翔子の死を契機にこじれましたが、世界が平和になった時、竜宮島にフェストゥムがやってくる前の平和だった時の状態に戻りました。

「なあ……甲洋は、来年になったら、どうする?」
何となく答えを予想しながら、訊いた。
「島を出るよ」
「そうか」
「お前も多分、そうするんだろ? 一騎?」
「ああ」
冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』一章3

史彦「お前は、どこかへ行くのか」
一騎「甲洋と一緒に世界を見てくる」
『THE BEYOND』12話

 

 『THE BEYOND』で総士がいなくなった後の一騎の行動と一期26話で総士がいなくなった後の一騎の行動を対比すると以下のようになります。

   「THE BEYOND」12話 一騎は総士の灯籠を流した(=一騎は総士と別れた)
一騎は甲洋と一緒に竜宮島から旅立った
   一期26話 一騎は総士と別れた
一騎は真矢と一緒に竜宮島に帰った

 一期26話で総士がいなくなった後、一騎のそばに甲洋はいなかったので、一騎は真矢と行動しました。一方『THE BEYOND』12話で総士がいなくなった後、一騎のそばに甲洋はいたので、一騎は甲洋と行動することを選びました。つまり、真矢は総士の位置にいるキャラではなく、甲洋の位置にいるキャラクターだったのです。そのため、一騎と真矢の関係は、『THE BEYOND』12話で竜宮島にフェストゥムがやってくる前の平和だった時の状態に戻ったのです。

「(前略)帰ってきてよ。私……多分ずっと、ここにいるから」
冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』一章2

真矢「私じゃ一騎君のいる場所には行けないから、
   ここで帰る場所を守ってるね。
   たまには帰ってきてね、竜宮島に」
『THE BEYOND』12話