ドラマCD「THE FOLLOWER2」感想 Part3

 ドラマCD「THE FOLLOWER2」感想 Part2の続きです。

 

・自己犠牲の否定

 一期6話で翔子が自分を犠牲にして、一騎の居場所である島を守ったが、翔子の行為そのものは一期を通して否定され続けた。「戦いにおける自己犠牲」というテーマは『THE FOLLOWER』と『THE FOLLOWER2』で美羽、一騎、総士、真矢を通して再び問いただされた。

 シュリーナガルがアザゼル型ロードランナーに襲われた時、美羽がアショーカと一つになって戦う存在になることを望んだ。

美羽「あのお星様に食べてもらうのがいいんだけど、今はできないから。
   あの大きな木と一つになって、違うものになってもらうの」
道生「違うもの?」
美羽「エメリーが教えてくれたから。
   戦うって怖いことだけど、そうしなきゃいけない時もあるって。
   だからね、美羽とあの大きな木が怖い怪物みたいな子たちよりも
   もっと強いものになって、戦うの」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

道生「なぜ、それが正しいことだと信じられるんだ」
美羽「美羽のパパがそうしてくれたから。
   美羽が産まれる前にね、美羽のパパはママたちを守ってくれたんだよ。
   パパは正しい人だったってママは言ってたもん」
道生「だから同じ選択をするのか」
美羽「うん。美羽もパパみたいに怖い子たちをやっつけるの」
道生「君とミールが争うための存在になれば、
   敵はフェストゥムだけじゃなくなる。
   同じ人間とも争うことになるかもしれない。
   君はそのために命を使うのか」
美羽「みんなを守るためだもん」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

道生「君のパパは本当に戦いたかったのかな」
美羽「えっ」
道生「他に術がなくて、ロクに力もないまま戦いに出た。
   だがそれでも帰るつもりだったんじゃないかな。
   そのために君のパパはそれを作ってもらった。
   ママに持っていてもらうために。
   自分が帰る場所を忘れないために」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 美羽は父、道生と同じことをしようと考えたが、道生自身、あの時死ぬつもりはなく、必ず帰るつもり、自己犠牲による行為ではなかったことを美羽に告げた。美羽には美羽にしかできないミールと対話するという役割があることを思い出させ、美羽が自分の身を犠牲にして、アショーカを戦う存在へ変えようとするのを止めた。

 

 その一方で戦う力を持つ者も心のどこかで、自分の命を使えば今の状況を変えることができるのかもしれないと信じていた節がある。特に自己否定の強い一騎は誰かがいなくなりそうになると、いなくなるのは自分だけでいいと言わんばかりに、ザインの持つ同化の肩代わりという能力で仲間を救っていた。シュリーナガルへ行った後は戦いで自分の命を使うことに迷いはなかった。実際、総士からザインが不要な状況で乗ることを止められた。しかし、外の世界を旅し、自分の目で見たことによって一騎の考えは変わった。

一騎「戦うだけじゃ希望になれないって思い知った。
   ただ命を使うだけじゃ、どこにもたどり着けない」
総士「同感だ。僕らには新たな平和を作る術がない。
   世界を導く者たちを、対話の力を守ろう。
   犠牲になったすべての人のためにも」
『EXODUS』21話

 竜宮島との合流直前になって、一騎はただやみくもに戦って命を使うことをやめた。一騎の出した答えはドラマCDの中で語られた。

一騎「俺には平和は作れない。
   でも、敵と対話できる人たちがいる。
   彼らを守るために俺の命を使いたい」
ドラマCD『THE FOLLOWER2』

 総士も戦いでむやみに命を使うことを否定している。

総士「確かに僕には平和を導く力はない。
   かと言って、ただ仲間を守るために戦うだけでは人類軍と変わりません。
   父さんの言う、迷路をさまようだけです」
公蔵「平和を導く力がないと言ったではないか。
   それでも出口にたどり着けると言うのか」
総士「たとえ僕にはたどり着けなくとも、
   それができる者を導き、守ることができる。
   その希望のためなら、自分を犠牲にして構わない」
ドラマCD『THE FOLLOWER2』

 

 真矢は人類軍の捕虜となった後、マークレゾンのテストパイロットになることを受け入れたが、その大きな力を目の前にした時、自分を犠牲にして人類軍を滅ぼすことを考えていた。

ミツヒロ「だがもう少しであれを目覚めさせられるし、ここを滅ぼすことができる。
     ギャロップもプロメテウスも、ここにいる人類軍も消してしまえる。
     お前の命を使って」
  真矢「今のあたしが島を守るには、それしかないから」
ミツヒロ「それがお前の選択なのだな、真矢。
     力を芽生えさせる時、
     周囲のものすべてその代償となることを受け入れるのだな」
  真矢「うん、そう思っていた。
     こうしてお父さんと話すまでは」
ミツヒロ「お前は他者を犠牲にすることを選んだはずだ。
     あるいは仲間のために自分を犠牲にすることを」
ドラマCD『THE FOLLOWER2』

 しかし、真矢は父と話しているうちにその考えを撤回した。

 

 ここまで絶望的な世界だと、どうしても自分がここで命を使えば状況を打破できるはず、という考えにとらわれれがちになる。それでもなお、この作品で自己犠牲は否定される。

 

・大人になったのは誰か

 『EXODUS』終了時に一騎、総士、真矢の3人で大人になることができたのは誰なのだろうか。『EXODUS』で描かれた大人になるという要素をまとめて表にしてみた。

   一騎   総士    真矢
年齢    20   19     20
父との別離   ×   ◯     ◯
失ったもの  総士   - 弓子、ミツヒロ(?)
得たもの こそうし   -    美羽
『EXODUS』終了時  生存 いなくなった    生存

 『EXODUS』で提示された大人になるという条件を完全にクリアしたのは予想通り、真矢のみ。総士は父から自立したが、20歳になることができなかった。一騎は総士、真矢とは異なり父は生存。しかし、一騎が父から自立するというシーンは描かれなかった。結婚という形で大人になることを表現した剣司と咲良、提示された条件をすべてクリアした真矢は大人になったということを意味し、ファフナーにはもう乗れない存在となったのだと思う。その一方で条件をクリアしていない一騎と総士は大人と子どもの間に閉じ込められた存在となった。総士はいなくなった後、自らが転生し再び子どもになったが、大人と子どもの間に閉じ込められた存在のまま生存している一騎は今後もファフナーに乗ることができるのだと思う。

 

 P.S. ドラマCD「THE FOLLOWER2」感想のPart1を書き終わった後も、Part2を書き終わった後も、残っているネタは物語の本筋に関わる内容ではないと思っていました。しかし、実際に書いてみると、頭の中で考えていた時より物語の本筋に近い内容になってしまい、Part2とPart3というタイトルをつけざるを得なくなりました。Part1を書き始めた時は、最終的にドラマCDの感想がこんなに長くなるとは思いませんでした。
 8日のイベントには参加します。


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