蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-31「EXODUSにおける祝福 Part3」

 『EXODUS』での総士の祝福とは何だったのか。『EXODUS』放送終了から2年、ついにその答えに到達しました。

 

・未来

 『EXODUS』で鍵になる言葉は未来だった。

 織姫「そう、彼らがここで今勇気を持てなければ、島の未来はなかった」
 史彦「未来? 皆城乙姫とは異なる、君の力か」
『EXODUS』13話

カノン「未来を変えることで今が変わる。
    未来から今いる私たちに何かが届く」
『EXODUS』17話

 織姫の能力は未来視だった。カノンは現在を掴み取るために自分が存在しない未来で戦った。

 

・一騎の祝福

一騎「これが俺の祝福だ」
『EXODUS』9話

 一騎の祝福とはシュリーナガルの人類軍のパイロットの同化を肩代わりし、命が残っている者を助け、同化されすぎて命が残っていない者には人ととして尊厳のある死を与える、すなわち同化された人を救済することだと思った。しかし、一騎の本当の祝福は別のものだった。

カノン「お前は世界の傷をふさぎ、存在と痛みを調和させるもの。
    我々はお前によって世界を祝福する」
『EXODUS』24話

 一騎は未来に祝福することを担保にして、現在の望みである竜宮島とのミールとの間の調和を手に入れた。カノンと同じく一騎も未来を変えることで今、欲しいものを未来から手に入れた。

 

・総士の本当の祝福

  総士「僕は人間として生き、命を終える。
     それもそう長くない」
エメリー「あなたの祝福が、そうであることを祈ります。
     心から」
  総士「僕の、祝福」
『EXODUS』14話

 エメリーは総士に総士自身の望みをかなえるには祝福されることが必要だと言った。

 総士「コアの亡霊よ、感じるか。
    それが痛みだ。
    僕がお前たちに与える祝福だ」
『EXODUS』26話

 総士はベイグラントのコアに痛みという祝福を与えたが、一騎の「これが俺の祝福だ」(※1)という言葉と同じく総士の本当の祝福ではなかった。総士も一騎と同じく未来に祝福をすること担保にして、「人間として生き、命を終える」(※2)という現在の望みを手に入れたのだとしたら、総士がいなくなった後に総士の祝福は行われることになる。つまり『EXODUS』で総士は祝福していないということになる。それなら総士は何か残していなくなったはずである。総士はニヒトの中に転生した自分宛てのメッセージと転生した自分を残していなくなった。

 『EXODUS』での総士の祝福は「転生した自分、つまりこそうしを痛みで祝福すること」だった。

 総士が祝福を得るために担保にしたものが、自分を痛みで祝福することだったとは恐ろしすぎる。

エメリー「あなたは永遠の存在だとミールは言っています。
     彼らに痛みを与え続けるため、この世に居続けると」
『EXODUS』14話

 つまり総士は転生するたびに違う種類の痛みを知り、それでフェストゥムを祝福することになるのだろう。織姫、来主操といったミールのコアは転生する前の存在の記憶を引き継いでいるが、総士が転生するたびに引き継ぐべきものは痛みの記憶ということになる。

 

織姫「本当は話すべきじゃないけど、
   あなたなら未来を恐れずたどり着いてくれるから」
『EXODUS』22話

 決して会うことのできない親から子に対して伝えられるものがたとえ痛みだけであっても、総士はそれを選ぶと織姫は信じていたのだろう。ただし、その場合「やれるさ、俺とお前なら」(※3)と総士に言う一騎という存在が必要不可欠だった。

総士「帰ってきたな、一騎」
一騎「お前が選んだ道を、俺も選ぶよ」
『EXODUS』25話

 一騎がこの世界に存在し続けることを選んだ後、総士はニヒトの中に転生した自分へのメッセージを残した。それが総士の祝福であり、その結果、総士には「人間として生き、命を終える」(※4)という祝福が与えられたのである。もし一騎が祝福することを選ばなかった場合、総士も祝福をすることなく、エメリーの言葉通り、フェストゥムに痛みを与え続けるため、永遠にこの世に居続ける存在になっただろう。

総士「お前も戻れ。
   まだ僕らの時間は終わっていない、一騎」
『EXODUS』23話

 一騎はアビエイターとの戦闘後、昏睡状態に陥ったが、総士は一騎を信じ、一騎の選択に自分の未来を委ねた。

 

 TVアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」続編告知PV!にあった「祝福を果たそう、マークニヒト」という総士の台詞を本編で使うべきだったと書きましたが、本編でカットしたのは正解だと思います。

 

※1 『EXODUS』9話。

※2 『EXODUS』14話、総士の台詞。

※2 『EXODUS』6話、一騎の台詞。

※2 『EXODUS』14話、総士の台詞。

 

P.S. 総士が存在と無の地平線を越えてから2年。これを書き終えた時は作中と同じく、総士が未来に託した祝福を受け取ったような気持ちになりました。

 


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