『ファフナー』では定番の展開を入れ替えたり、定番の展開を一部分を抜く(!)ということを行っているのですが、岩明均『ヒストリエ』(講談社)では定番の展開を丁寧に描いていました。『ファフナー』と『ヒストリエ』を対比させることによって、『ファフナー』で描こうとしたものを明らかにして見ようと思います。
この記事には岩明均『ヒストリエ』12巻のネタバレ内容が含まれています。
『ヒストリエ』第107話のエウメネスとエウリュディケのエピソードは『ファフナー』では三分割されたと考えることができます。
●「ヒストリエ」第107話 Part1 -真矢-
『ヒストリエ』では第107話のエウリュディケが第7話の母親と見られる女性となり、第7話で描かれた出来事が第107話で再現されました。 『ファフナー』では一期18話のミツヒロが『THE BEYOND』の一騎となり、一期18話の出来事が『THE BEYOND』で再現されました。(【蒼穹のファフナー THE BEYOND】真矢の望み/ミツヒロと一騎 を参照)
『ヒストリエ』第7話、エウメネスは夢の中でエウメネスの母親と見られる女性が殺された後、エウメネスは遺体を見ながら、以下のようにつぶやきました。
エウメネス「顔は……
やっぱりよくわからない
ふふふ……
誰なの?
きみ……」
岩明均『ヒストリエ』第7話
一期18話、真矢はミツヒロが竜宮島から旅立つ時、ミツヒロに以下の言葉を言いました。
真矢「お父さん、あたしここにいます」
真矢「さよなら、お父さん」
一期18話
『ヒストリエ』第107話で第7話の出来事が再現された時、エウメネスは以下のような行動を取りました。
エウリュディケが死んだ後、エウメネスはエウリュディの顔を見て、名前を何度か呼んだ。
『THE BEYOND』12話で一期18話の出来事が再現された時、真矢は以下のような行動を取りました。
真矢は一騎に何か言おうとしたが、言うことができなかった。その後、真矢は一騎の服の袖を掴んだ。
『ヒストリエ』第7話のエウメネスは母親と見られる女性の死を理解できなかったのに対し、『ヒストリエ』第107話のエウメネスはエウリュディケの死を通して、死を理解しました。一期18話の真矢はミツヒロとの別れを理解できなかったのに対し、『THE BEYOND』12話の真矢は一騎との別れを通して、別れを理解したということになります。
●「ヒストリエ」第107話 Part2 -一騎-
『ヒストリエ』第107話、瀕死の重傷を追ったエウリュディケはエウメネスに子どもを託しました。
エウリュディケ「その子はね
いずれ……
王になるの…………」
岩明均『ヒストリエ』第107話
『EXODUS』26話、総士が一騎に未来(生まれ変わった総士である子ども)を託しました。
総士「未来へ導け、一騎」
『EXODUS』26話
『ヒストリエ』第107話、エウリュディケはその後、亡くなり、エウメネスはエウリュディケの遺体を抱えて立っていました。
総士は存在と無の地平線の彼方へ去ってから5年後の『THE BEYOND』12話、一騎は総士の灯籠を抱えて立っていました。
「ヒストリエ」第107話 その1-ミツヒロと真矢-で書いたように、エウリュディケ=エウメネスの母親と見られる女性であることから、エウリュディケの遺体はエウメネスの母親と見られる女性の遺体でもあるということになります。つまり、一騎が持っている総士の灯籠は一騎の母の灯籠でもあるということになります。
エウメネスはエウリュディケから子どもを託された瞬間、親になり、その時、エウメネスの子ども時代が終わりました。エウメネスが抱えている遺体は、エウメネスの母親と見られる女性の遺体の遺体であるのと同時に子どものエウメネスの遺体でした。同じように、一騎は総士から未来(=子ども)を託された瞬間、親になり、その時、一騎の子ども時代が終わりました。一騎が持っている灯籠は、総士の灯籠であるのと同時に一騎の母の灯籠と子どもの一騎の灯籠だったということになります。
●「ヒストリエ」第107話 Part3 -一騎と真矢-
『ヒストリエ』第107話で『ファフナー』と重ねることのできる場面はあと一つあります。あなたはこの場面をどう読みますか?
エウメネス 「行く?」
エウリュディケ「でも私は……
エウロパのそばに……
行ってあげないと」
エウメネス 「じゃあ……次の機会に」
エウリュディケ「うん……」
岩明均『ヒストリエ』第107話
一騎「遠見、一緒に来るか」
真矢「私じゃ一騎君のいる場所には行けないから、
ここで帰る場所を守ってるね。」
たまには帰ってきてね、竜宮島に」
一騎「約束するよ」
『THE BEYOND』12話