蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-13「EXODUSにおける祝福 Part2」

 蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-10「EXODUSにおける祝福 Part1」の続きになります。

 

・一騎と総士の望み

一騎「ずっと考えてた、最後の生き方を」
総士「僕もだ」
『EXODUS』6話

 一騎と総士は自らの命の終わりという問題と直面していたものの、二人の置かれた状況と望みは正反対だった。まだ辛うじて人として存在していた一騎の望みは、七夕の短冊に書かれた文字そのもので「生きたい」(※1)だった。一方、一度同化され、その体が完全にフェストゥムのものとなり、エメリーから永遠の存在だと言われた総士の望みは「人間として生き、命を終える」(※2)ことだった。

 いなくなることばかり考えていた一騎は死と直面した時、初めて生きたいと思った。その時、一騎の望みを叶えようとする者が現れた。

ナレイン「君なら永遠の戦士になれるだろう。
     我々のミールの祝福を受ける気はないかね。
     命の果てを越えて生きるために」
   一騎「祝福…」
『EXODUS』18話

 人がミールもしくはフェストゥムから祝福を受けるためには、当然、代償が必要。その代償とはまず一騎自身が祝福をすること。つまり人としての命を差し出す必要がある。もっとも竜宮島を出る前に島のコアから「あなたはどう世界を祝福するの」(※3)という言葉を突きつけれ、ずっとそれについて考えていた一騎にとって祝福という言葉は重い。

ナレイン「君の因子と共鳴しているからだ」
  一騎「共鳴…。おれとこいつらが」
  総士「そこまでだ。
     代わりにお前の命をくれてやる気か」
  一騎「命が終わる時はそれもいいな」
  総士「おい」

  総士「人として生きることが僕らの意思です。
     島のコアが生と死をミールに教えたように」
『EXODUS』18話

 総士自身はフェストゥムを祝福してフェストゥムの側へ行ったけれど、一騎が祝福することは望んではおらず、むしろ人の側に留まって命を終えることを望んでいるように見える。しかし、竜宮島のミールが世界を祝福をするために一騎という存在を望み、なにより一騎自身が総士と同じものを見たいという気持ちが強かった。一騎は祝福した後に竜宮島のミールの祝福を受け入れたことにより、生きたいという自らの望みが叶った。

 一方、総士は同化され、その肉体は結晶化し、砕け散った。それは本人の望み通り、ファフナーのパイロットとして生きて、命を終えたことを意味している。また、コアの少年を祝福したことにより、エメリーから告げられたような永遠の存在になることなく、存在と無の地平線を越え、無に還った。

 一騎と総士は共に自らの命の終わりと向き合った時に望んだものを、自らが祝福することによって手に入れた。

 

・循環する魂

 遼「代謝って……体を生まれ変わらせることだよ。
   お前たちも……それを手に入れたのか。
   それって……命になるってことだろ」
『RIGHT OF LEFT』(※4

総士「彼らがこの星で命に触れ、生と死を初めて知ったように」
『EXODUS』14話

 フェストゥムは地球上で人と触れ合うことにより、ゆっくりと生物へ進化している。それは『EXODUS』においても続いている。

  美羽「とっても怖い子たちが来て、エメリーの町を壊そうとしてるから」
  道生「君が止めるってのか」
  美羽「そうしないとみんな食べられちゃう」
ドラマCD『THE FOLLOWER』(※5

エメリー「町に来たのはもう食べられた。
     食べた方はとても強くなってる」
『EXODUS』12話

 エスペラントである美羽とエメリーはフェストゥムの攻撃を食べると表現している。

一騎「フェストゥムが命をわけてくれた」

一騎「たくさん敵の命を奪ってきた。
   返せるものは返すよ」
『EXODUS』18話

 芹「あたしを食べたかったんだ。
   あたしも本当はたくさん同化したいの。
   もっと食べたいの。
   ちょうだい、あなたの命」
『EXODUS』20話

 一騎と芹は人でありながら、フェストゥムの時間という概念のない状態を体現する存在となった。この二人はフェストゥムのコアを命と表現している。

総士「無に…還れ」

一騎「還りな、お前たちのいるべき無へ」
『EXODUS』25話

 一騎が島の祝福を受けた後、フェストゥムと戦った時には総士と同じように無に還れと言うようになった。一騎が『EXODUS』14話で総士が話していたフェストゥムの世界を完全に理解したことを意味している。

総士「僕らも還ろう、命の源へ」

総士「ぼくは今度こそ地平線を超えるだろう。
   無と存在の調和を未来へ託して」
『EXODUS』26話

 これまで命の循環を学んで転生したのは一期での竜宮島のミール、『HEAVEN AND EARTH』でのボレアリオス・ミール、『EXODUS』26話でのアショーカ。いずれもミールのコアだった。総士とニヒトは存在と無の地平線を越えて無に帰ったが、その魂はミールのコアという形ではなく、転生する前と同じ存在として生まれ変わった。これが総士とニヒトに対するフェストゥムからの祝福であり、フェストゥムも命の循環を学んだことを意味している。だとすると、『HEAVEN AND EARTH』でスフィンクス型でありながら個を持っていた来主操のようなフェストゥムはいずれ総士やニヒトと同じように生まれ変わり、命を繋いでいくようになるのだろう。そして、転生し続ける総士がフェストゥムを祝福することで、フェストゥムはゆっくりとこの地球上で生きる生物になっていく。

 

※1 『EXODUS』5話

※2 『EXODUS』14話

※3 『EXODUS』4話

※4 『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』(ハヤカワ文庫)収録の「蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT」より引用。

※5 『蒼穹のファフナー EXODUS』DVD/BD 4巻付属。

 


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