『EXODUS』は皆城家と一番近い同性の友人である一騎と芹が同性と異性の友人、あるいは人とフェストゥムのどちらかを選ぶ物語でもあった。
・総士と織姫-対称的な人間関係
『EXODUS』において、総士と織姫はそれぞれ同性の親友がいて、その親友には仲の良い異性の友だちがいるという構図になっている。
皆城家 | 同性の友人 | 異性の友人 |
総士 | 一騎 | 真矢 |
織姫 | 芹 | 広登 |
この作品ではペアとなる関係は同一ではなく常に反転しているが、この二組も例外ではなく、総士と一騎、織姫と芹が対称的な関係になっている。
総士「僕は一度、フェストゥムの側に行く。
そして、再び、自分の存在を作り出す。
どれほど時間が掛かるかわからないが、必ず」
一騎「総士、いるんだろう?
そこにいるんだろう、総士、総士」
総士「僕はここにいる。
いつか再び出会うまで」
一期26話
総士「未来へ導け、一騎。
そして、互いの祝福の彼方で会おう、何度でも」
一騎「ああ、総士。必ず」
『EXODUS』26話
一騎と総士は一期23話で総士9連呼、ドラマCD『GONE/ARIVE』での「父さんだって、母さんを失った時は同じ気持ちだったんだろ」という発言から、一般的に総士と一騎を比較すると相手に対する執着心は総士よりも一騎の方が強いと思われている。しかし、自分がいなくなるという状況であっても、常に一騎との再会を約束する総士には、一騎を絶対に手放さないという強い意思を感じる。私は相手への執着心は一騎より総士の方が上だと感じている。
芹「あたし、どんどん酷くなる」
織姫「あなたの場合、島を離れれば治るわ」
芹「そんなことできないよ」
織姫「そうすべき時が来たら、迷わずそうしなさい」
『EXODUS』19話
織姫「芹、なにをしているの。島を出なさい」
芹「織姫ちゃん、いつも一人で泣いてた。
悲しくてもみんなを守って。
あたしが織姫ちゃんを守るよ。
ずっと一緒にいるよ」
『EXODUS』26話
織姫と芹では織姫は芹と別れる覚悟ができていた。しかし、織姫のいないところで生きていくことに芹が耐えられなかった。総士>一騎だとすれば、この二人の逆で織姫<芹。
一騎と真矢、芹と広登という男女のペアはどちらも一歩踏み込んだ関係にはならず、あくまで親友という域に留まっている。最初に挙げた表を見るとわかる通り、『EXODUS』が始まった時、一騎と芹には二つの選択肢が与えられていた。皆城家の者と一緒に生きる道を選んだ時は人の枠から外れ、異性の友だちと一緒に生きる道を選んだ時は人として生きられる。
真矢と広登は共に島外派遣に参加し、共に人類軍に捕らえられたが、その後、たどった運命は正反対だった。真矢は新国連に捕らえられ捕虜になった。一方広登は人類軍によって殺され、遺体が回収された。一騎は真矢が捕虜になって新国連の基地にいる時に、芹は真矢の帰還と同時に竜宮島に伝えられた後、皆城家の総士と織姫と共に生きるという決断を下した。一騎と芹はいわば人類軍によって人として生きる道を絶たれたと言えるかもしれない。
ふと、このナレーションを思い出した。
総士「対話も戦いも代償は付きまとう」
『EXODUS』3話
一騎と芹は自ら選んだとはいえ、世界が未来を掴むために、人として生きることを諦めるという極めて高い代償を払う形になった。
芹は広登がいたら織姫と一緒に島に眠るという道を選ばなかった可能性が高いけど、一騎は総士と真矢のどちらか一人と言われたら、迷わず総士を選ぶと思う。
・【補完】真矢をめぐる人間関係
真矢は一期では一騎と総士との3人で一組の関係の他に、翔子と甲洋との3人で一組の関係もあった。
同性の友人 | 異性の友人 | |
総士(いなくなる→転生) | 一騎(フェストゥム) | 真矢(人) |
真矢(人) | 翔子(いなくなる) | 甲洋(フェストゥム) |
上記の通り、どちらの3人一組の関係でも人として生き残ったのは真矢のみで、あとはいなくなるかフェストゥムになってしまった。真矢に与えられた役割は人として生きて、記憶し続けることなのだろう。どんな時代でも生き残って後世に伝える役割を担う者が必ずいるが、それは一番つらい役割である。