【蒼穹のファフナー EXODUS】戦い?それとも平和?-補足2

 【蒼穹のファフナー EXODUS】戦い?それとも平和?を見直しているうちに、『EXODUS』の最初の数話を見た時の疑問を思い出した。

  真矢は一騎との残りの時間をどう過ごしたかったのだろうか?

 

 真矢は総士不在時、一期23話でイドゥンによって連れ去られ、『HEAVEN AND EARTH』のラストで帰ってくるまでの間の一騎の様子をそばで見ていた。『Preface of HEAVEN AND EARTH』(※1)には無意識で海に向かって歩いて行く一騎に真矢が声を掛けて引き止める場面がある。この時、真矢は一騎に「皆城くんがいるかも知れないどこかに、行きたい?」という言葉を掛けているが、真矢は総士がいない状態の一騎は自分には目を向けてくれないということを理解していた。『HEAVEN AND EARTH』のラストで総士は帰還し、島には一時の平和が訪れたが、その後、一騎は残りの命の長さが告知され、この問題と向き合うことになった。しかし、一騎の個人的な問題ゆえに真矢には触れることができず、二人の心理的な距離はおそらく一期ラストから『HEAVEN AND EARTH』までの総士不在時よりも開いてしまった。

 『EXODUS』開始時の一騎の望みは「生きたい」(※2)だった。一方、真矢は「自分が戦えば一騎は戦わずに済む」と考えて、行動していた。以下の表は【蒼穹のファフナー EXODUS】戦い?それとも平和?でミョルニアが『THE FOLLOWER2』において一騎に提示した道が意味するものをまとめたものである。

戦い続ける 存在し続ける フェストゥム
戦いの力を捨てる いなくなる    人

 一騎の「生きたい」という望みは上記の表では「存在し続ける」に該当し、真矢の「自分が戦えは一騎が戦わずに済む」という考えは上記の表では「(一騎が)戦いの力を捨てる=いなくなる」に該当する。この表に当てはめると、生にすがりつき、最終的にフェストゥムの側に行ってでも生きることを選んだ一騎と命が尽きる日まで一騎が静かに生きることを望んだ真矢の考えは対称的であり、つまるところ『EXODUS』開始時の一騎の望みと真矢の望みは正反対だったということになる。

 

一騎「あと3年、それだけあれば覚悟だってできる」
『EXODUS』1話

 『EXODUS』の物語開始時、真矢は一騎がいずれいなくなることを受け入れられず、一騎のこの台詞を同じように考えていたのではないだろうか。剣司と咲良は咲良の母が倒れたことにより結婚という行動に出たが、戦争の合間ではあるものの平和な状態にある島では大きな事件が起きることもなく、一騎と真矢の関係は進展しなかったと思う。真矢は一騎との関係が進展することは諦めていて、あくまで友人として一騎の別れの日を迎えるつもりだったのだろうか。ふと『EXODUS』21話で誕生日プレゼントとして真矢が一騎に花を渡した場面を思い出したが、真矢自身、あそこまで一騎との距離が縮まるとは想像もしていなかったのだと思う。

 真矢は一騎と過ごす時間がいつまでも続くことを望んでいたが、一騎が島のコアの命令によりザインに乗った結果、告知された三年よりも短いものになってしまった。ザインに乗ったことにより一騎の同化現象は急速に進み、島外派遣組が竜宮島と合流する時の戦闘で人としての命を使い果たした。それでもなお一騎は生きることを望み、島のミールの「お前が世界を祝福するなら、我々が生と死の循環を超える命を与えよう」(※3)という言葉を受け入れ、島から命を与えられた。つまり一騎は総士と同じ道を選んだがために、真矢の望みがかなったということになる。が、それは同時に一騎が総士とともに永遠に生きることを選んだということを意味している。

 『EXODUS』で真矢自身は望んでもいなかった一騎との関係が進展し、幸せな時間を過ごすことができた。その上、戦いが終わった後、一騎はザインに乗ったにもかかわらず、生きている。そう、真矢の望みがすべてかなったのかのように……。しかし、一時、一騎と真矢は心が通じたものの、最終的に一騎は一緒に生きていく相手として真矢を選ばなかった。そのため真矢は一騎が転生したそうしと一緒に生きていくのをただくからているだけ。それならば、一騎がザインに乗ったことにより予想された未来、すなわち同化により一騎がいなくなる方が真矢にとっては幸せだったのかもしれない。

 

 P.S. 『EXODUS』を数話見た頃、真矢は一騎と一緒になることはなく、最終的に竜宮島から去ると予想し、真矢は竜宮島よりも人類軍に近い存在になると見ていました。あと、一騎と真矢の関係は戦争時のみ効力を発揮するつり橋効果のようなもので進展するが、戦争が終わるとあっという間にその効力が切れ、二人の関係は戦争前の状態に戻ってしまうという感じ。

 

※1 『Newtype Library 冲方丁』(角川書店)に掲載。

※2 『EXODUS』5話Cパートで一騎は短冊に「生きたい」と書いたものの、握りつぶした。

※3 『EXODUS』24話、カノンの台詞。


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