【蒼穹のファフナー EXODUS】ずれた時間

 2016年8月3日~8月22日にabemaTVで放送していた『ゼーガペイン』(2006年4月〜10月放映)を見ていたのですが、『蒼穹のファフナー』(2004年7月〜12月放映)の2年後に放映された作品ということもあり、多くの共通点を見出すことができる。すぐに思いつく内容を箇条書きにしてまとめてみた。

  • 2クール全26話
  • ロボットアニメ
  • 近未来を舞台にしたSF
    (ファフナーは2146年~2151年、ゼーガペインは2063年以降(※1))
  • 主人公たちは住んでいる場所から外に出ることができない
    (ファフナーは竜宮島という島、ゼーガペインは舞浜(※2)という町)
  • 主人公たちの生活の基盤は学校に置かれていて、物語の最後まで学生である
    (ファフナーは中学、ゼーガペインは高校)
  • 痛みが作品の中で重要なキーワードになっている

 『EXODUS』を見終わった後に『ゼーガペイン』を見直したところ、これまで気がつかなかった共通点に気がついた。

 

 『ゼーガペイン』について説明すると長くなるので、一切説明していません。この記事には『ゼーガペイン』の終盤のネタバレ内容が含まれています。

 

 キョウ「人間に戻ったそいつは、
     地球でリザレクションシステムを完成させるその日まで、
     一人、別の時間の中を生きることになる」
カミナギ「10年先か、20年先か、あるいはもっと…」
『ゼーガペイン』25話

 abemaTVでゼーガペインの23、24話を見ていた時、同級生の主人公とヒロインの時間がずれて物語が終わることを思い出した。そう、『EXODUS』で同級生の総士と一騎の時間がずれて終わったように……。

 『ゼーガペイン』の主人公ソゴル・キョウは全人類が死滅し、幻体としてサーバー内で存在するようになった後、リザレクションシステムを使って肉体を取り戻した最初の人類となった。その結果、16歳で止まっていたキョウの時間が動き出し、全世界で一人、肉体的に年を取ることのできる人間になった。月から持ち帰った設計図を元にキョウがリザレクションシステムを組み立て、カミナギが肉体を取り戻した時、キョウとカミナギは再び同じ時間軸で生きることができるようになる。リザレクションシステムが完成し、カミナギが肉体を取り戻す時の年齢は16歳だが、先に肉体を得たキョウは年を取っているので、二人の時間軸はずれてしまった。

 一期ラストで一度フェストゥムの側に行った総士はフェストゥムの体を得て、この世界に戻ってきたものの、その命は長くはなかった。それにもかかわらず、ニヒトに乗ったことにより同化現象に見舞われ、最終的に同化されていなくなった。総士は存在と無の地平線を超えたが、その魂は転生し、別の存在としてこの世に産まれた。一方、一騎はいずれ世界を祝福するという条件で島の祝福を受けたが、芹と同じようにおそらく20歳で止められた存在になったと思われる。20歳の一騎と転生して0歳になった総士、同い年だったこの二人の時間軸もずれてしまった。

 『ゼーガペイン』、『EXODUS』ともに主人公とパートナーは片方が時間の止まった存在、もう片方が時間の中で生きる存在になり、主人公とパートナーの時間軸がすれ違った状態で物語は終わった。その上、二作品とも時間が止まっている側の人間の時間もいずれ動き出すことを示唆している。

 

 物語における主人公の役割の一つに、それまでだれも成し得なかったことを、たとえリスクを背負ってでもやる、というのがあると思う。『EXODUS』でその役割を担ったのは自らの役割を終えて存在と無の地平線を越えていなくなったものの、ミールのコア以外のフェストゥムで初めて転生した総士だと思う。一騎はいずれ総士と同じ状態になることが示唆して物語は終わっている。『ゼーガペイン』と『EXODUS』を比較すると、キョウ=総士、カミナギ=一騎という構図になり、やはり『EXODUS』の主人公は総士だったのだと思う。『ファフナー』の一期では総士の後を追う形で一騎は島の外に出たが、劇中で総士が島の外を見る場面は描かれていない。そのため、島の外に出て、新国連の支配する世界を見たのは一騎の世代では一騎が最初という形をとっている。また、『HEAVEN AND EARTH』で一騎は初めて生まれた人の形をして、人の言葉を話すことのできるスフィンクス型フェストゥムと話すという役割を与えられた。この二作品において一騎は主人公の役割を果たしていたと思う。

 カミナギ=一騎という構図で思い出すのは『ゼーガペイン』17話。敵であるシンが戦う理由を知りたくなり、単身オケアノスに乗り込んで、クルーに戦う理由を聞いてまわる。しかし、どの答えもシンにはピンとこない。最後に答えたカミナギの戦う理由がシンに理解できるものだった。シンはそのお礼として敵の攻撃(シンは攻撃した機体のパイロットの一人だった)によってダメージを負い、不完全な状態となったカミナギの幻体データを修復する。そう、『HEAVEN AND EARTH』のラストで一騎の目を治していなくなった来栖操(彼もまた人類の敵であるフェストゥムだ)のように……。

 

 キョウ=総士、カミナギ=一騎だとすると、シズノに相当する役割を演じているのはさしずめ真矢ということになるだろうか。この記事の冒頭に引用したキョウとカミナギの会話の後、キョウはリザレクションシステムに行くために去り、カミナギが一人残された。そこにシズノがやってきて、カミナギにこう言う。

シズノ「待っていてあげて、ここで」
『ゼーガペイン』25話

 このセリフを聞いた時、『Preface of 蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』の真矢の台詞「皆城くんも、待ってたよ。昔、一騎くんが島を出て行っちゃった後。ずっと待ってた」(※3)を思い出した。真矢は何者かに呼ばれるかのように海岸の波打ち際まで歩いて行く一騎の姿を見て、一騎に声を掛けて引き止めた。真矢は一騎に話しかけるが、一騎から返事は帰ってこない。そんな一騎を引き止めるかのように真矢はこの台詞を言った。シズノと真矢、ともに主人公とパートナーを近くで見守るしかなく、自身の思いは報われないという点も共通している。

 

※1 舞台となった年は作中ではっきりと表現されていないが、以下の状況から推測した。

  • 5話で主人公のキョウがコンビニの店頭で「2022年 IALジュニアオリンピック水泳競技大会 千葉県国際水泳場9月9日〜10日」と書かれたポスターを見る場面がある。
  • 15話でシズノがキョウにこう言っている。
     「キョウ、あなたはもう舞浜の夏を百回以上生きているのよ」
  • サーバー内の世界は4/1〜8/31の5ヶ月間を繰り返している。

 以上のことから、5ヶ月×100回=500ヶ月。500ヶ月÷12ヶ月=41.6年となり、2022年+41.6年=2063.6年ということで、『ゼーガペイン』は2063年以降が舞台の物語ということになる。

※2 2010年8月31日に放送されたネットラジオ番組で話していたが、ゼーガペインの舞台は企画当初、沖縄の孤島という案があった。

※3 『Newtype Library 冲方丁』(角川書店)より引用。

 

P.S.
 宇宙に行った人が地球に戻ってきた時、ウラシマ効果により地球にいた人との間で時がずれるというのはSFでは定番のネタ。アニメでは『トップをねらえ!』が有名。

 『EXODUS』のテーマの一つである「生物は生きていくために他人の命を頂く」を『仮面ライダー アマゾンズ』(2016)が取り上げているのが興味深い。2004年は人が生きていると実感する瞬間は「痛み」だったが、2015年には「食べる」になってしまった。

 このブログで何度か言及したワーグナーの『パルジファル』が10月17日(月)〈16日(日)深夜〉午前0時からNHK BSプレミアムで放送されます。