「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第1~3話の感想 Part1

 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第1話第2話第3話を書いた後の感想になります。一気に3話見るというのは情報量が多くて、以前から気になっていたけど、なかなかメモに残せなかった内容も含まれています。

 

・雑感

 『THE BEYOND』2~3話は『バビル2世』+『六神合体ゴッドマーズ』、『勇者ライディーン』という印象を受けました。少し前からYouTubeに行くたびに公式配信による『バビル2世』1話がお勧めされていたのですが(※1)、今の私にぴったりなお勧め動画でした。

 

 『機動戦士ガンダムUC』の1話を見た時、主人公の住んでいる世界をきちんと描くと、主人公がロボットに乗るまでに2話必要だと思ったのですが、『THE BEYOND』でもこそうしがマークニヒトに乗るまでに2話かかっていた。

 

 おそらく物語終了時、二者が和解、一つになる、片方が消滅などの形ですべて一つになるのではないだろうか。
【蒼穹のファフナー THE BEYOND】第3話「運命の器」

 「二つあるものうち一つを選ぶ」で思い出したのが、1987年、ベルリン・ドイツ・オペラの引っ越し公演で上演された『ニーベルングの指環』(ゲッツ・フリードリヒ演出)の舞台。ステージにある巨大なトンネルの中で物語は進行するのですが、本拠地の舞台に比べると日本のホールの奥行きが足りなかったため、トンネルは奥で二股に別れていました。登場人物が舞台奥に退場する時、どちらに行くのか迷うという演出が行われ、オリジナルの演出より評判良かったことを思い出しました。メイキング映像が出ていたのでベルリンの舞台は見たことがありますが、日本公演は見ていません(※2)。

 

 『THE BEYOND』2~3話の一騎とこそうしの関係を見て思い出したのが、オスマン帝国時代のブルガリアを舞台にデヴシルメ制度がもたらす悲劇を描いた映画(※3)。子どもはオスマン帝国の兵士として徴兵され教育された結果、親子にもかかわらず全く別の価値観を持ち、理解できない存在になってしまった。

 

 

・マークザイン

 『THE BEYOND』のPVを見た時、私も一騎がマークザインを手放したことにショックを受けました。しかし、『THE BEYOND』1話を見ると、一騎はミールの祝福を受けた結果、かつての総士のようにファフナーに乗らなくてもフェストゥムを同化できるようになったので、マークザインに乗る理由を失ってしまった(※4)。

 

・記憶

 フェストゥム側のキーワードは『EXODUS』に引き続いて “記憶”。『EXODUS』では人間(新国連)が架空の記憶を与えたパペットを作り出したが、『THE BEYOND』では人間(マリス)がかつて存在した人の記憶を持つフェストゥムを作り出した。マリスは新国連の世界で生まれ育ったので、新国連内部からその価値観が否定する人間が現れてしまった。

 

・時

 フェストゥム側のもうひとつのキーワードは “時”である。

セレノア「時は来た」
  甲洋「時を稼がれた」
『THE BEYOND』1話

レガート「今度はこっちが時を稼がれたな」
『THE BEYOND』3話

 操の機体名はマークドライツェン改〈クロノス〉。機体名の由来はギリシャ神話の時間の神、クロノス。操のSDPも時間にまつわるもので、周囲の動きをスローモーションで見ることができる(※5)。

 

・水

ナレイン「ここはバルカという。
     エメリーがミールのかけらを託した古い井戸だ」
『EXODUS』6話

 シュリーナガルでアショーカが根付いた場所は井戸だった。一方、海神島でアショーカが根付いた場所は湖(モデルになったのは函館の笹流貯水池)だった。アショーカは大きな木の形をしているので、大量のきれいな水が必要ということのなのだろう。

 

・金色の眼

 セレノアはその能力を使う時、右目が金色になる。 一方、マークニヒトに乗ったこそうしは過去と共鳴した後、総士の左目の傷を引き継ぎ、目が金色になった。

 

・親殺し

 『THE BEYOND』1話は姉の姿をしていてもフェストゥムだと判断すれば即座に攻撃する真矢の姿が印象に残った。今後、こそうしと美羽はレガート、セレノア、マリスと対峙することになるが、こそうしにとってレガートとセレノアは育ての親、美羽にとってレガートとセレノアは父と母の姿をしたフェストゥムである。マリスは美羽とこそうしの二人にとって友だちという同じポジションになっている。

 

・一期とEXODUSの関係

 『THE BEYOND』1話は『EXODUS』26話ラストからさほど時間が経過していないと思われるので『EXODUS』から2年後の物語、『THE BEYOND』1話ラスト以降はそこから3年後の物語になります。その結果、一期と『EXODUS』で描かれた物語の時間の経過は全く同じになっています。

  前日譚 起点 2年後 3年後
  2145年
RIGHT OF LEFT
2146年
一期
2148年
HEAVEN AND EARTH
2151年
EXODUS
  2150年
EXODUS
1話Aパート
2151年
EXODUS 1話Bパート
EXODUS 26話
2153年
EXODUS 26話ラスト
THE BEYOND 1話
2156年
THE BEYOND
1話ラスト以降

 『THE BEYOND』1話での里奈は『HEAVEN AND EARTH』での一騎の同級生と同じポジションということになる。それから3年後が舞台の『THE BEYOND』2、3話で里奈は一騎たちと同じようにパイロットを引退したので未登場なのだろうか。

 

・新国連の価値観の否定

  マリス「誰かが生きるために誰かが犠牲になる。
      そんな世界を捨てて生きよう、総士」
『THE BEYOND』1話

 『EXODUS』で使われた台詞を通して、マリスがこの心境に至った心理を探ってみよう。

   総士「長い戦いに世界が疲弊する中」
『EXODUS』1話

ダスティン「交戦規定アルファは絶対だ。
      より多くの命を守るために責務を果たす」
『EXODUS』12話

 バーンズ「選ばれた5万人を生かすため、
      残り20億人の人類を敵と共倒れさせる」
『EXODUS』23話

 終わりの見えない戦争に疲弊し、誰かの命を守るために明日の自分の命が使われる可能性が否定できない世界。マリスはエスペラントであることから、フェストゥムと話をした結果、それがたとえ絶望という名(※6)であっても、”死” のない世界に憧れてしまった。

  マリス「ベノンは僕らを守る。
      敵に祝福を与え、仲間にする」
『THE BEYOND』2話

 この言葉をひっくり返すとマリスにとって新国連と人類軍は自分たちを守ってくれず、ただ敵を倒すだけの存在だった。新国連と人類軍の行いに嫌気が差したマリスはマレスペロと同じく、新国連と人類軍に対して謀反を起こした存在ということになる。

 

 

※1 YouTubeから『バビル2世』をお勧めされたのは、現在公式配信している『未来戦隊タイムレンジャー』を毎週見ているからだと思います。

※2 2018年8月、神奈川県民ホールで行われたスペシャルイベント「真実」の時、ロビーにこの公演のポスターが展示されていました。

※3 映画のタイトルは思い出せません。図書館で『ぴあ』のバックナンバーを調べればわかると思いますが、実は見た時期もはっきりと覚えていない。

※4 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第1~3話の感想 Part2(後半)/理由の項を参照。

※5 『THE BEYOND』公式サイト内にあるCHARACTERの来主操の項から引用。

※6 ベイグラントのコアはかつて「海神のみこと(命)」と呼ばれ、新国連は「プロメテウス」と呼び、今は「マレスペロ(絶望)」と自称している。