蒼穹のファフナー THE BEYOND 第1~3話の感想 Part2(後半)

 2019年6月1日に『THE BEYOND』第1~3話を2回見た後の感想(後編)です。この記事には『THE BEYOND』第1~3話のパンフレットからの引用があります。

 

・理由

 新国連が作った3機目のザルヴァートルモデルの名は「マークレゾン」だった。

raison:
1. 理性(推理力、判断力、理知、分別)
2. 理由、訳、動機
『クラウン仏和辞典』第5版(三省堂)

 ファフナーの中で “理由” という単語で思い出したのは以下の台詞だった。。

    溝口「生きて帰ってくる理由さえ用意してやれないのか、俺たちゃ」
一期24話

プロメテウス「理由がなければ許す可能性もない」
『EXODUS』23話「理由なき力」

 人間は理由を用意できないことを嘆き、フェストゥムは理由は不要だと言った。

 

 『THE BEYOND』2話、こそうしと父(レガート)、母(セレノア)、乙姫(フロロ)、マリスが島の外の世界について話していた。島の外ではベノア軍とエスペラント軍が戦っているという。しかし、島の沖をベノア軍の軍艦が通るという町内放送はあるが、こそうしは一度もその姿を見たことはなく、ベノア軍の主力兵器であるファフナーは写真で見ただけだった。こそうしはなぜこの島だけが戦いに巻き込まれることなく、平和なのかという疑問を抱いた。しかし、こそうしが納得できるような答えはなかった。

セレノア「ここはずっと平和だもの」
こそうし「なんでわかるのさ。
     外の世界がどうなっているのか誰も知らないのに」
レガート「知る必要はないだろう」
『THE BEYOND』2話

 フェストゥムが作った偽りの島にあったものは「理由なき平和」だった。『THE BEYOND』でフェストゥムは物事には理由が必要なことを学ぶのだろうのだろうか。

 

・人類軍とベノア軍

こそうし「ベノンの兵士になってお前たちと戦ってやる」
  美羽「そうしたらもうなにも教えてもらえないよ。
     本当のことを知りたいんでしょ」
『THE BEYOND』3話

 美羽の言葉からベノア(フェストゥム)における兵士に対する考え方は北極ミールが砕ける前のフェストゥムと同じであり、それは人類軍と全く同じ考え方だった。兵士には何も教えず、ただ上官の命令に従って戦うだけの存在。マリスは「誰かが生きるために誰かが犠牲になる」(※1)という世界に嫌気が差して、マレスペロの元に行ったが、皮肉なことに行った先も新国連と同じ価値観を持つ世界だった。

 

・無意識下と意識下

 一期でアルヴィスは子どもたちにメモリージングを行っていたため、無意識のうちにファフナーに乗る方法を学んでいた。そのため、一騎は初めて見たファフナーに乗って即座に操縦することができ、フェストゥムを撃破した。

 一方『THE BEYOND』で偽りの竜宮島に住むこそうしにとってファフナーとは、自分たちをエスペラント軍から守っているベノン軍の主力兵器だった。こそうしは写真でファフナーを見たことがあり、ファフナーそのものにも興味を持っていた。一期の一騎とは異なり、こそうしにとってファフナーとはすでに知っているものであったため、海の中からファフナーが現れた時は「ファフナー」(※2)と叫び、海神島では「これに乗り、指輪に手を通せば、声が聞こえるはずです」(※3)という説明だけでマークニヒトを起動させた。

 

・人間の死

 偽りの竜宮島でフェストゥムたちは人間の真似をして暮らしていた。しかし、そこは外から隔離されたフェストゥムの世界であることから、死ぬ人というのはいなかったのではないだろうか。『THE BEYOND』第1~3話のパンフレットにはそれをうかがわせる記述がある。

【盂蘭盆、精霊流し】この一連の盆祭りは、毎年、竜宮島(海神島)で行われている慰霊祭で、それをフェストゥムが見よう見まねで再現した。だが、本質が理解できないためか、精霊流しはランタン飛ばしに替わり、そのランタンにお願い事をするという別の祭事になってしまった。
『THE BEYOND』第1~3話パンフレット

 そのため、こそうしは “死” というものを知らないのではないだろうか。事実、『THE BEYOND』1話で甲洋はフェストゥムに向かって「それが死だ。死を学びたいものからこい」と言っていた。

 

 では、こそうしは誰から “死” を学ぶのだろうか。

総士「未知の希望が新たなる戦いと訪れたその日、僕らの最後の時間が始まった」
『EXODUS』1話

 ここでの “僕ら” とは語り手の総士と聞き手のこそうしを差していると思われるので、こそうしが親である総士がマークニヒトに残したメッセージを最後まで聞くことで、”死” を文字通り体験するのではないだろうか。

 

・人類軍の内部紛争

 こそうしが教えられた島の外の世界と現実の世界の敵対関係を表にまとめてみた。

  偽りの竜宮島
    ベノン軍 エスペラント軍
    人間 人間
    軍艦、戦闘機、ファフナー 軍艦と戦闘機?
 
  現実の世界
    人類軍、アルヴィス ベノン
    人間 フェストゥム
    軍艦、戦闘機、ファフナー フェストゥム

 フェストゥム(ベノン)は新国連に海神島の住人を殺され、新国連に利用された海神島のコアだったマレスペロが率い、その中には新国連の考え方に嫌気が差してフェストゥム側に寝返ったマリスという人間がいることから、フェストゥム vs 人間という構図でありながら、新国連の内部紛争と見ることもできる。そう考えると、こそうしが教えられた島の外で行われている人間(ベノン軍) vs 人間(エスペラント軍)という戦争の構図そのものは真実ということになる。

 

 フェストゥムは偽りの竜宮島でこそうしにベノンの価値観を教えたため、こそうしは敵とみなした人間を攻撃することに迷いはなかった。

こそうし「ベノンの兵士になってお前たちと戦ってやる」
『THE BEYOND』3話

 こそうしはマークニヒトを起動させた直後、ワームスフィアで海神島を攻撃した。

 

 こそうしはフェストゥムの考えと人間側(竜宮島)の考えを理解した上で、最終的に自分が生きたいと思う世界、すなわち「死のないフェストゥムの世界」と「死のある人間の世界」のどちらかを選ぶことになるのだろう。だが、竜宮島にはアルタイルが眠っているため、こそうしの選択がこの後の地球の命運を決めることになる(※4)。

 

・ジークフリートとTHE BEYOND

 『THE BEYOND』を見終わった時、私は2002年に「ワルキューレ」を見た2日後に「ジークフリート」を見た時と同じ気持ちになりました。「ワルキューレ」は未来に希望を残したものの禁断の恋に落ちた兄妹は永遠に別れ、命令に従わなかった娘と父の別れで物語は終わります。しかし、その2日後に上演された「ジークフリート」では舞台の雰囲気が一変。主人公は両親の悲劇を全く知らない明るい若者。そう、『EXODUS』から『THE BEYOND』への流れは「ワルキューレ」から「ジークフリート」と全く同じ構造だったのです。
「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第1~3話の感想(ネタバレなし)

 『ジークフリート』第1幕と『THE BEYOND』第1~3話を構成する要素を比較すると全く同じでした。

  • 産みの親主人公の命と引き換えに死亡。
    主人公は親についての記憶は一切なし。
  • 主人公は血のつながりのない第三者に育てられる。
  • 第三者主人公を育てたのは主人公を通して重要なものを手に入れるため。
  • 主人公は使用不可能になっていた親の武器を手に入れ、使えるようにする。

 上記の太字に該当する固有名詞は以下のようになります。

  ジークフリート THE BEYOND
産みの親 ジークリンデ 総士
主人公 ジークフリート こそうし
第三者 ミーメ レガートとセレノア
重要なもの 指環 竜宮島とアルタイル
親の武器 ノートゥング マークニヒト

 『ジークフリート』でジークフリートは森の小鳥のアドバイスに従い、育て親が狙っていた重要なもの(指環)と女性(ブリュンヒルデ)をゲットして終わるのですが、こそうしもおそらく育て親が狙っていた重要なもの(竜宮島とアルタイル)と女性(妹の孫である竜宮島のコア)の獲得を目指すことになります。

 

織姫「ここが未来の分かれ道になるわ」
総士「信じるさ、お前の告げた未来を」
『EXODUS』25話

 織姫が告げた未来とは「あなたとあなたの器が生まれ変わる」(※5)であることを考えると、『ワルキューレ』第3幕第2場、ブリュンヒルデがジークリンデに子どもを身ごもっていることを告げ、ヴォータンが砕いたノートゥングの破片を渡し、森へ逃げるように助言し、最後に子どもに名付けて別れるシーンを思い出しました。

 

 

※1 『THE BEYOND』1話のマリスの台詞。

※2 『THE BEYOND』2話のこそうしの台詞。

※3 『THE BEYOND』3話のディラン・バーゼルの台詞。

※4 『THE BEYOND』2話、キールブロックで竜宮島のコアがこそうしに「今のあなたでは島を滅ぼすから」と言っていたが、こそうしがフェストゥムの世界を選ぶと竜宮島にはアルタイルも眠っているため、島だけでなく世界も滅ぼしてしまうだろう。

※5 『EXODUS』22話の織姫の台詞。