蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-22「和解を目指して Part2-ニヒト」

 一期と『HEAVEN AND EARTH』は傷つけ合った一騎(人)と総士(フェストゥム)が互いを許し、和解する物語だった。『HEAVEN AND EARTH』で一騎と総士の和解の物語は終わり、『EXODUS』では人類軍の作ったファフナーでありながらフェストゥムに使役され、一期と『HEAVEN AND EARTH』で竜宮島に甚大な被害をもたらしたニヒトとの和解を目指すことになった。島のコアからニヒトとの和解という役割を与えられたのは総士だった。

 総士は一期と『HEAVEN AND EARTH』でフェストゥム側を象徴する存在だったが、『EXODUS』では一転し、竜宮島でただ一人ニヒトを扱えることから人(=竜宮島)を象徴する存在となった。そして、フェストゥムであるニヒトと向き合うことになった。

 

 ニヒトは人類軍側が作ったファフナーだが、一期9話で海に沈んだマークフィアのコアを使っている。一期18話冒頭にマークフィアを回収するシーンが描かれている。

 そのため、パイロットにはフェストゥムの因子を持つ竜宮島の子どもが必要だった。ミツヒロはパイロットとして真矢を使おうとしたが本人から拒否されたため(一期18話)、竜宮島生まれでミツヒロに恋心を持つ狩谷由紀恵をパイロットとして起用した。しかし、ニヒトの最後のテスト時にイドゥンが基地に入り込んでいため、ニヒトのパイロットだった狩谷由紀恵はイドゥンに乗っ取られ、同化されていなくなった。ニヒトはイドゥンによって奪われ、これ以降、フェストゥム側のファフナーとなった。一期では最終的にザインの中に封じることによって、ニヒトがフェストゥム側の手に渡ることを防いだが、『HEAVEN AND EARTH』では来主操の手により封印を解かれ、ボレアリオス・ミールに奪われた。この時のパイロットはスフィンクス型フェストゥムである来主操。最終的に来主操はボレアリオス・ミールに「ミール、俺はもう、戦いたくない!」(※1)と告げ、自らを犠牲して人類の火を消し、竜宮島を守った。来主操が去った後のニヒトのコックピットには体を取り戻した総士が現れ、ニヒトととも竜宮島へ帰還した。この結果、ザイン同様ニヒトも新国連が作ったファフナーでありながら、竜宮島が管理することになった。しかし、ニヒトは人類が作ったファフナーでありながら、もはやフェストゥムにしか乗れないファフナーとなっていた。

 竜宮島はニヒトを引き取ったものの、使おうとは思っていなかった。

 保「今の技術じゃ、こいつのコアに手が出せん。
   ザインと一緒で機材を同化しちまうからな。
   敵に奪われんよう、封印するしかない」
『EXODUS』3話

 竜宮島としてはコアを摘出して機体を解体することを望んでいたが、それはニヒト自身に拒否された。そのため、ニヒトは封印されていた。

 総士「ニヒトを始末すれば、ザインの共鳴も止まって乗れるようになる」
カノン「ザインの処分は決定事項だぞ」
 総士「本来は、温存すべき最強の機体だ」
『EXODUS』4話

 総士はザインを切り札として考えていたので、解体処分する気はなかった。ザインを単独で使えるようにするために、ニヒトのみを解体処分しようとしていた。

総士「クロッシング? マークニヒト、マークザインまで。
   封印された機体だ、いつまで取り付く。
   クロッシング拒否。
   みんなに干渉させない。
   それが今、僕がいる理由だ」
『EXODUS』2話

 『HEAVEN AND EARTH』での戦闘から3年ぶりにファフナーを起動させた時、起動していないザインとニヒトがクロッシングを求めてきた。知らぬ間にザインとニヒトのコアには自意識めいたものが生まれていて、ジークフリード・システムにクロッシングを求めることで自身の存在をアピールした。

織姫「それに、どちらもあなたたちは捨てる気だった」
 保「待ってくれ。
   それはマークザインとマークニヒトに二人を乗せろってことか」
『EXODUS』6話

 織姫はザインとニヒトを手放そうとしていたアルヴィス上層部を咎めた。アルヴィス上層部の考えとは裏腹に島のミール(=織姫)はニヒトと和解し、島の戦力にすることを望んでいたと思われる。(ニヒトはマークフィアのコアを使用しているが、それも元は島のミールの一部だ)総士はニヒトを解体処分しようとしていたが、島のコアの命令に従う存在であるため、織姫の命令には迷うことなく従った。

 織姫はザインとニヒトについて「二つで一つの力」(※2)と表現していたが、一期と『HEAVEN AND EARTH』で互いに合計3回封じ合った結果(一期、26話でニヒトがザインを封じ、それをひっくり返してザインがニヒトを封じた。『HEAVEN AND EARTH』では再びニヒトがザインを封じたが、甲洋と真矢が開放した)、共鳴する存在になってしまったのだと思われる。ザインとニヒトは織姫の言葉通り、二機揃ってこそ力を発揮できる機体であり、アショーカをシュリーナガルから海神島まで移動させる旅では必要不可欠な存在だった。総士はその旅の中で必要とあらばニヒトに乗ったが、その存在を最後まで受け入れることはできなかった。

織姫「あなたが憎むマークニヒトはあなただけの器。
   希望のための…
   捨ててはだめ」
総士「わかっている」
『EXODUS』22話

 新国連の捕虜となった真矢を取り戻すために、竜宮島は新国連にニヒトを引き渡すという条件を提示したが、織姫はここでも総士にニヒトを手放してはいけないと言った。

織姫「真矢とニヒト、両方守ったのね」
総士「僕がコアの意思に背くことはない」
『EXODUS』25話

 総士は新国連との捕虜交換の交渉に赴いたが、織姫との約束を守り、ニヒトを手放すことなく、真矢を取り戻した。

総士「これがたどり着いた未来。
   怖いかニヒト、僕もだ。
   存在が消える恐怖。
   痛みの根源か」

総士「還ったか、織姫。
   僕らも還ろう、命の源へ」
『EXODUS』26話

 総士自身は最後までニヒトという存在を受け入れて和解することはできなかったが、ニヒトととも無に還ることを選んだ。ある意味、それが総士にとってのニヒトとの和解だったのかもしれない。ニヒトと和解できたかどうかの確認は転生した後の自分、つまり次世代に託したということになる。

総士「必ず葬ります。
   僕の存在をかけて」
『EXODUS』3話

 『EXODUS』の開始時、総士はニヒトについてこう言っていたが、ニヒトは総士とともに一度無に還ることを選んだため、総士のこの言葉は果たされたと言っていいだろう。

 

 一期、『HEAVEN AND EARTH』、『EXODUS』を通して、竜宮島とフェストゥムとの和解が描かれた。一期と『HEAVEN AND EARTH』の一騎(人)と総士(フェストゥム)は和解して生存という形で終わったが、総士(人)とニヒト(フェストゥム)はおそらく互いに無に還ることで和解したのだろう。しかし、本当に二人が和解したかどうかの確認は転生した次世代に託すという形となった。ここも両者は対称的な形になっている。また『HEAVEN AND EARTH』での一騎(人)と来主操(フェストゥム)は一騎は生存、来主操はコアとして転生という形で、三者とも違う形で終わっている。表にまとめると次のような形になる。

  フェストゥム
一騎(人)と総士(フェストゥム) 生存   生存
一騎(人)と来主操(フェストゥム) 生存 コアとして転生
総士(人)とニヒト(フェストゥム) 転生   転生

 


 『EXODUS』は一期は『HEAVEN AND EARTH』で竜宮島と敵対した新国連とニヒトとの和解を目指す物語だったと思う。このテーマを体現した暉とウォルター、総士とニヒトというの二組のペアは和解する前に全員いなくなった。(総士とニヒトは転生し、『EXODUS』終了後も存在し続けているが)つまり、竜宮島と新国連、竜宮島とニヒトはそれぞれ和解する前に物語が終わったということになる。二組とも完全な和解は次世代に託すという形で終わったが、それは『EXODUS』で描かれたメインテーマの一つに対して、明確な結論を出さなかったということになる。1本の物語としてきれいに終わらせるのであれば、『EXODUS』で竜宮島が新国連とニヒトとの間で完全に和解して物語が終了という形を選ぶはずだ。ニヒトはともかく、長年敵対し続けた竜宮島と新国連(ナレイン率いるペルセウス中隊)が出会ってからわずか5ヶ月(※3)で和解するというのは、あまりにも安易でご都合主義すぎるという気がする。シリーズ全体を見ると『EXODUS』の物語の落とし所は間違っていないと思うが、先送りされた一騎の祝福も合わせると、視聴者には「物語は終わったけれど、『EXODUS』で描いたメインテーマについて明確な答えを提示しなかったので、物語が終わった気がしない」というなんとも曖昧な感覚を与えることになった。

 

※1 『HEAVEN AND EARTH』、来主操の台詞。

※2 『EXODUS』6話、織姫の台詞。

※3 ナレイン率いるペルセウス中隊は2152年6月28日に竜宮島を訪れた。『EXODUS』26話の日時は作中ではっきりと明記されていないが、おそらく同じ年の11月下旬だと思われる。

 


関連記事
 ・蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-21「和解を目指して Part1-新国連」
 ・蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-23「和解を目指して Part3-不完全な物語」