蒼穹のファフナー EXODUS 第21話-2「一期から反転した人間関係」

 一期と『EXODUS』を比較して、一騎、総士、真矢、カノンの人間関係と役割の変化をまとめました。

 

・一騎とカノン

一騎「たくさん考えたんだ、たくさん迷った」
『EXODUS』6話

 一期22話でカノンが同じ台詞を言っていたが、今思えば一騎とカノンの立場が一期と『EXODUS』で入れ替わっていることを示す証拠だった。

 残りの人生が3年と宣告された一騎は次々に進路を決めていく同級生を横目で見ながら、「何か学んで、やり始めて…でも、それがやり残したことになるのが嫌なんだ」と言って、一期から『HEAVEN AND EARTH』の間に「人手不足を嘆く溝口の助けを買って出たのが真矢で、料理下手を嘆く真矢の助けを買って出たのが一騎という構図」(『Preface of 蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』)という理由で始めた喫茶楽園での仕事を続けているので、実は料理ですら一騎自身が選んだ道ではない。

 一期のカノンと同じく『EXODUS』の一騎は自分では決められず、ある意味、命令待ちの状態。6話で島のコアから「今すぐ美羽を守りに行きなさい」と言われれば、「お前が行くなら、俺も行く」と即答。カノンに「今日、命の使い道を教えてもらった」と言って、戦えという命令を待っている状態だった。

一期16話でカノンが一騎と話をした結果、ここにいることを選んだが、『EXODUS』17話冒頭、一騎は夢の中のカノンとの話した時、一騎は彼女の選んだ道を悟ってしまった。『EXODUS』はカノンと一騎の会話が、一期ではカノン、『EXODUS』では一騎が決断するきっかけとなっていることから、この二人の立ち位置と役割が一期と『EXODUS』で入れ替わってることがわかる。

 カノンは一期22話で「たくさん困った、たくさん考えた」と言った時にはすでに心は決まっていたので、続けて「答えは一つしかなかった。私はここにいることを、この島にいることを、選びたい」と言ったが、一騎が『EXODUS』6話で同じ台詞を言った時にはまだ心定まらずだった。結局、一騎が一期のカノンの言葉に相当する「そのために俺はここにいる」と言ったのは、旅の終わりが近い『EXODUS』21話だった。

 

・一騎と総士と真矢

 総士と一騎、真矢の関係を簡単に図式化してみた。

   一期   EXODUS
総士と一騎   ×   ◎
総士と真矢   ×   ◯

 一期で総士は一騎、真矢の二人と別の形で意志の疎通がうまくいかない状態で物語は始まった。一騎には子供の頃の同化未遂事件を含め、自分のことがわかってくれるはずという思い込みと言葉の選び方が下手だったためにすれ違い。真矢は総士が心の中に隠している本音を遠慮なく指摘するが、総士は立場上態度が煮え切らないので、その関係はうまくいかない。その上、世界の真実を知らず、立場の違う同級生からも総士は精神的に孤立し、一期16話でザインとともに一騎が帰ってくるまで孤立した状況に置かれていた。妹の乙姫が岩戸が出てきて、一騎と同級生との関係もその後、改善されたものの、真矢との関係は一期18話と19話の間を描いたドラマCD『NOW HERE』に描かれた通り、一騎が帰ってきた後もあまり変わらなかった。このドラマCDを聞いた後、19話ラストの一騎と真矢の会話を見ると、総士がちょっとかわいそうになる。

 『EXODUS』では総士を取り巻く状況は一変。剣司、咲良、カノンといった同級生ともうまくいっているし、一騎、真矢とは互いの立場を尊重した上できちんと話ができる状態になっている。一度フェストゥムの側へ行って体を再構築したので、左目の視力も回復。『RIGHT OF LEFT』で起動試験に失敗したファフナーに乗ることさえできる。 総士は一期の最後で祝福をしてしまったこともあり、私自身は自らに与えられた役割をすべて演じ切ったキャラクターだと思っていて、 『EXODUS』はいわばボーナスステージ。そう考えると、一期とは逆に総士には優しい世界となっているのは当然なのかもしれない。あるいは総士は子供の頃、一度フェストゥムになりかけ、人とフェストゥムの間の存在であることを拒否し、人であることを選んだが、島のコアと同じように心は人、体はフェストゥムという自分を肯定した結果が『EXODUS』の状況なのかもしれない。ただし、どちらでも真矢への思いは伝わらない模様(笑)

 

 一方、一騎と総士、真矢の関係はこんな感じだと思う。

   一期   EXODUS
一騎と総士   ×   ◎
一騎と真矢   ◯   ×

 一期で一騎は総士とうまくコミュニケーションが取れない状態で物語が始まった。戦いが続く中で二人の考えはずれていき、一騎は総士のことを理解するために、島を出て外の世界を見に行ってしまった。一方、真矢との関係は最初からうまくいっていて、島に帰ってきた後、総士との関係がうまく行き始めると真矢との関係は少し進展し始める。が、総士が敵に奪われてしまった時、真矢との距離が開いてしまった。蒼穹作戦で総士を取り戻すことができず、総士はフェストゥムに同化され、彼らの世界へ行ってしまったた。一騎は助けられなかったが帰ると約束した総士のことで頭がいっぱいで、真矢は一歩引いた状態で一騎を見守るのみ。一期終了時から一騎と真矢の距離は開いてしまったのだろう。総士が体を取り戻して帰還したところで『HEAVEN AND EARTH』は終了。

 『EXODUS』では一騎は自らの残りの時間を言い渡されており、自らの死と向き合うことになった結果、精神的に引きこもった状態に陥っていた。そして、総士と同じく、一期の時とはすべて状況がひっくり返っている。ファフナーへの搭乗はアルヴィス上層部から禁止。余命を言い渡されていることからもわかるように健康状態は悪化。真矢とはお互いに相手は戦ってほしくないという気持ちからすれ違い。一騎が本音を言える相手は一期とは逆に総士になっていた。

 島の外での現実と自分の置かれた状況を少しづつ受け入れた結果、『EXODUS』では19話で真矢が言ってほしかった言葉を言って、やっと二人は歩み寄った。が、一期の総士との間に起きたことを思い出してほしい。一期16話で一騎が島へ帰ってきた時に総士と和解したものの、最終的に総士は一騎に帰ると約束してフェストゥムの側へ行ってしまった。ということは、『EXODUS』で一騎は真矢とは別れる(しかも永遠に?)ことになるのだろうか。余命宣告されているにもかかわらず、一騎はザインに乗ってしまったため、その命が尽きる日もそう遠くない。その上、織姫からは「あなたはどう世界を祝福するの」と言われ、祝福をする側であることを告げられている。

 

 この三人の人間関係を一期からすべてひっくり返した結果、『EXODUS』では一期の一騎の位置に総士が来たような感じになり、その結果、総士が物語の真ん中にいて、主人公に見える。しかし、総士は一期ですべての葛藤や悩みはすべて描き切ったキャラクター。むしろ主人公の持つ葛藤や悩みは一騎を通して描かれているけれど、一期のように誰かにぶつけたり、過激な行動を取るということもなく、一人で抱え込んでいるので、主人公に見えない。

 

 私は一期放送時から『蒼穹のファフナー』というシリーズの真の主人公は総士だと思っていて、今もその考えに変わりはない。その理由は最終回放送後に明らかにする予定。