「蒼穹のファフナー」第7話~第9話の感想

 『蒼穹のファフナー』の第7話~第9話のセリフを書き起こした時の個人的な感想をまとめたものです。CDドラマ、映画『HEAVEN AND EARTH』、『蒼穹のファフナー EXODUS』の内容にも触れています。話数全体の感想ではありません。

 

第7話「家賊-おやこ-」

 この回はプロットで指定された要素が多かったせいか、密度の濃い話だった。逆にそこを省いたのと感じた場面もあった。内容の薄かった4話と5話を見るとこの脚本家はプロットで指定された以外の物語を作れないように感じた。

 剣司、衛、咲良と甲洋親子の描写は問題が少ないので、この脚本家にとって一騎、総士、真矢の性格と関係性が理解できなかったんだと思う。脚本家が主役三人を理解できないというのは大問題。逆に言うと相当個性的なキャラということになる。

 で、問題の翔子の件。

放送音声「ブルクスタッフに業務連絡。
     マークゼクス抹消により作業シフトが繰り上げとなりました。
     各自担当部署での作業、確認をお願いします」
スタッフ「全くあの野郎面倒なことやってくれたよな」
スタッフ「俺たちの大事なマークゼクスをよ」
スタッフ「メカニックの身にもなってみろっていうんだよ」
一期7話

 ブルクでエンジニアが文句をいう場面もあることからして、アニメ製作時は作中での描写通りの意味だったんだと思う。おそらく冲方の考えとは違ってしまった場面で、ドラマCDでうまく補完して意味を変えたと考えるのが妥当。

 

第8話「確執-こうよう-」

 このあたりから戦闘シーンの描写を脚本家に任せるのをやめ、プロットの段階で綿密に決めて、その指定通りに脚本を書いたように感じた。

 フェンリルの起動時間を溝口さんが独断で変更する場面も含め、6話までのお粗末な戦闘シーンを書いた人と同じ人が書いたとはとても思えない。

 とは言え、まだ設定が定まっていない部分があるのも事実。竜宮島と探索に出た島は310キロ離れているにもかかわらず、ソロモンが反応したり、ジークフリード・システムが使えたりと引っかかる部分も多い。

 しかし、7話までにあったキャラクターのブレは消え、一騎と総士の関係がやっと設定通りに描かれていると感じた。

 

第9話「同化-わかれ-」

 6話の翔子の死を受け、「ファフナーを失うことが大問題」でシナリオ上でもそこをきちんと描いて、積み上げるようになった。脚本が少しましになったと感じる。

第7話
 史彦「こちらは新国連の輸送艦隊を守るために、ファフナー一機を失ったのだ」

第8話
 総士「ファフナーを失う危険があれば、救助を中止する」

第9話
 総士「もうファフナーを失うわけにはいかないんだ」
 総士「これは甲洋の、自分で招いた結果だ。お陰でファフナーを失った」
 一騎「ファフナーと俺たち、お前にとってどっちが大切なんだ」

 真矢が総士の頬を叩いた後のセリフがキツイ。「なんでそんなこと言うの。最後に春日井君と話せたのあなただけなんだよ。なにも感じないの」二周目以降の視聴者は友達の死で一番つらいのが総士だと知っているので、いたたまれない気持ちになる。6話、翔子の死の場面でクロッシングしている総士にもダメージがあることを描くべきだった。明らかに総士側の描写不足だったと思う。甲洋が同化される時は総士側も少し描かれているけど、初見でその意味を理解するのは無理。

 ここまででクロッシングというシステムの必然性とデメリットが全然描けていなかった。9話までだとクロッシングは単なるシステムとパイロットの通信システムとしか見えず、なんでCDCを直接交信できないんだと突っ込みたくなる。

 シナリオを担当することが決まった後、『SFマガジン』2004年9月号に掲載された冲方のコメントを引用。

SF的な見所として用意したいのは、シナジェティック・コードによって脳を直結して感情や記憶を共有するのは、お互いを理解したことになるのかということ。機械的なシステムによる感情の共有が、本当に他人を理解することになるのかどうかを描きたいと思っています。

 設定が難しすぎて、一期9話までの時点ではほとんど描けていない。このテーマはドラマCDで描かれることになる。