「蒼穹のファフナー」第1話~第3話の感想

 『EXODUS』の放映終盤から一期のセリフの書き起こしを開始。最終的に一期26話、『HEAVEN AND EARTH』、ドラマCDの全セリフを書き起こした。一期の冲方が脚本に参加する前の話数はシナリオの構造がよく見えて、なかなかおもしろかった。書き起こした後、自分なりに気になる点をメモし、twitterに上げていた。これはそれをまとめた直したものです。twitterだと文字数に制限があるので、文章を一部修正しています。

 なお、CDドラマ、映画『HEAVEN AND EARTH』、『蒼穹のファフナー EXODUS』の内容にも触れています。話数全体の感想ではありません。

 

第1話「楽園-はじまり-」

 映像だけだと、1話冒頭で描かれた子どもたちがフェストゥムの声を聞いてしまう事件と総士が一騎を同化しようとした事件は具体的なセリフが少ないので説明不足だと感じる。

 初見時、爆笑したのはこの場面。

一騎「総士、俺たちはどこへ行くんだ」
総士「楽園だよ」
一期1話

 友達に戦ってくれと頼むシーンでこれはないだろう。脚本担当者はSFを書くセンスがないと思った。

 ちなみに小説版の第一章-4(電撃文庫版P83、ハヤカワ文庫版P84)に一騎の「なあ、総士……俺たち、どこへ行くんだ?」という台詞がある。小説版でのシチュエーションなら一騎がこの台詞を言っても違和感はない。

 1話を見終わった時の感想「本放送時に1話を見たら、1話切り」。見続けた人を尊敬します。ちなみに私は14話から見始め、1話を見たのは21話を見たあとです。

 

第2話「告知-いのち-」

 全体的にテンポが遅いと感じるんだけど、話す速度が後半に比べるとゆっくりめなのかな。『EXODUS』で一期1、2話以下のテキスト量の回は7話、9話で、全面戦闘回。1、2話は説明回でもあるけど、台詞の量は少なめ。

 武器射出の説明を受けた後、公蔵の「ああ、わかってるさ」という台詞を聞いて、『EXODUS』2話、総士が真矢に言った「わかっちゃいないさ」を思い出してしまった。なんか言い方のニュアンスが近いんだよね。

 弓子が自宅に戻って真矢に職員会議で帰るのが遅くなったという場面は意図がよくわからない。もう嘘をつく必要はない。遠見先生は一騎に父親に聞いてと言っているし、他の家でも親が子供に島の真実を話している。

 一番気になったのは遠見先生のこのセリフ。

千鶴「搭乗時に彼の意識が通常と変わったことが記録されています」
一期2話

 変性意識の設定を知らないと流してしまいそうなセリフ。一期では一騎の変性意識は変化なしという設定。

 あとこのセリフも気になった。

 衛「知ってた、蔵前ってロボットのパイロットだったんだって」
咲良「そのロボットって私にも乗れるかな」
一期2話

 衛が言うまで作中でロボットという言葉は出てこない。作中では2146年で日本は失われたという設定なので、今の常識でキャラクターに会話をさせてはいけない。SFでやファンタジーでは原則として作中で出てきた固有名詞で話すべき。当然ここはファフナーと言うべき場面だと思う。

 

第3話「迷宮-しんじつ-」

 要素が多くてまとまりが悪く、とっ散らかっているという印象。どうしても『EXODUS』4話と比較してしまう。

 初見時に引っかかったセリフがこれ。

千鶴「あの子達の中からまた旅立つ者が出るんですね」
一期3話

 SFでこういう格好つけた抽象的なセリフは浮くので、作品の世界観に沿った具体的な内容にしてほしい。

 保が衛の部屋に入って自分の描いた漫画の感想を聞く場面で、2話でロボットという単語を衛が使ったことを納得した。衛がゴウバインが好きなのでファフナーのことをロボットと呼んだということなんだろう。後の話数で説明というのはあまり好きではない。おまけに2話を見ると衛はエンジニアである父親からずいぶん話を聞いていて詳しいので、友達に解説する時はファフナーと言うべきだろう。

 真矢が押入れから父親のカメラを引っ張り出した時の弓子さんのセリフ「あっ、そんなとこにあったんだ、父さんのカメラ」を嬉しそうに話しているのは設定と合っていない。後に弓子さんは父親が大嫌いだと判明し、二期3話で真矢がカノンに話していた。第3話でこのカメラを使って真矢が撮った写真は総士の部屋に飾られ、『HEAVEN AND EARTH』と『EXODUS』8話にも登場する。

 3話終盤の一騎と総士の会話はキャラの立ち位置に合っていない。

一騎「最初に言っておく。俺は飛んだこと、ないからな」
総士「心配するな。僕たち二人なら飛べるさ、そう思うだろう」
一期3話

 初見時、このセリフに愕然として、続きを見るのをやめようかと思った。物語の開始時点で一騎と総士の間には長年のわだかまりがあり、話しさえしていなかった。過去のある事件がきっかけでと遠ざかった一騎と総士が事件と向き合い、それを乗り越えようという物語なのに。結局、脚本家が一騎と総士の関係を理解していないということがよくわかる場面となってしまった。結局のところ、一騎と総士の共依存の関係を他人が理解するのは難しく、それを描けるのは冲方だけということを思い知らされました。

 しかし、このセリフは一期26話でうまく使われ、私はこのシーンは泣きました。

総士「飛べるか、一騎」
一騎「飛べるさ、俺とおまえなら、そうだろう?」
一期26話

 初出時に失笑したセリフでさえ、キャラの描写を積み重ねば感動に変わるということを思い知らされた。そして『EXODUS』6話で一騎が「やれるさ、俺とお前なら、そうだろ」と言っているように、二人の信頼関係を象徴する台詞として昇華されました。