「蒼穹のファフナー」を見直した感想 Part3(BS11)

 2020年7月3日からBS11で再放送されている一期16話~18話を見た時の感想をまとめました。『EXODUS』までのネタバレが含まれています。

 

・道生と乙姫

 道生はフェストゥムと戦う前、弓子をアルヴィス内の部屋に閉じ込めた。

道生「すぐに終わる、そこにいてくれ。
   お前が、世界のどこかに生きていることだけが、
   俺が戦う理由だったんだ、弓子」
一期16話

 

 乙姫はフェストゥムと戦う前、芹をシェルターに避難させた。

乙姫「芹ちゃんはみんなと一緒にいて」
一期16話

 戦う前、人間(道生)とフェストゥム(乙姫)が大切な人を避難させるという全く同じ行動を取っていた。

 

・真壁紅音

 一騎はモルドヴァで母、紅音と同じ姿をしたミョルニアが母と同じようにフェストゥムに同化される瞬間を目撃し、ミョルニアを同化したフェストゥムを攻撃することで母の仇を討とうとした。一騎はこの戦いの後、溝口から真実を聞いたことで、母、紅音の死を受け入れた。しかし、史彦はまだ紅音の死を受け入れていないため、一騎の言葉には答えなかった。

一騎「母さんのこと、溝口さんから聞いたよ。
   父さんは悪くない」
史彦「帰ったら母さんに謝れ。
   二度と黙って出て行くな」
一期17話

 史彦は竜宮島を訪れたミョルニアとの話し合った。これが史彦にとって紅音の死を受け入れる第一歩になった。

史彦「あれは紅音ではない。
   お前の母さんはもういない」
史彦「ただ、心は今も生きている。
   彼女が対話しようとした相手と。
   そして、我々自身とともに。
   ただそれだけだ」
史彦「それだけのことが今の今まで見つからなかった」
ドラマCD『GONE/ARRIVE』

 紅音を死を受け入れたことを表すかのようにそれから2年後、『HEAVEN AND EARTH』で工房内にある皿は歪んでいなかった。

 

 それから3年後、史彦は一騎に皿が歪まないことを自慢するまでになっていた。

史彦「俺はもう歪まない」
『EXODUS』4話

 

・竜宮島ミールと北極ミール

バーンズ「シンクロニシティだ。
     人類が力を手にすればフェストゥムがそれを読み取り、我がものとする」
  史彦「敵の強大化は事実だが島がすべての原因ではなかろう」
バーンズ「竜宮島を通して敵が人類の力を読んでいるのだ」
一期17話

 バーンズの指摘通り、人類軍とは比にならないほどの力を持つ竜宮島がフェストゥムとの戦闘を開始してから、フェストゥムは進化していった。その後、竜宮島ミールのコアである乙姫が対話を通してフェストゥムに情報を渡し(※1)、総士がフェストゥムを祝福し、フェストゥムの側へ行った結果、フェストゥムは人間に関するより多く情報を得た。その結果、フェストゥムは加速度的に進化していった。

 2114年(北極ミール到来)から2146年(竜宮島が北極ミールとの本格的な戦闘を開始する前)までの32年間と2146年(竜宮島が北極ミールとの本格的な戦闘を開始)から2156年までの10年間を比較すると、フェストゥムは進化速度は2146年から2156年までの10年間の方が上だろう。

 

・一緒にいなくなる

 一騎はカノンがいなくなりたいと思うなら、一緒にいなくなろうと言った。

カノン「今、私がスイッチを入れたら」
 一騎「お前がそう決めたんなら、一緒に消えてやる」
一期17話

 一方、総士は一騎の考えを確認することなく、一騎と一緒にいなくなりたいという自分の気持ちを一騎に押し付けた。

 総士「同化って言うんだ。
    一つになれるんだって」
 総士「一つになろう、一騎」
一期15話

 もし、9歳の総士と一騎が一期17話のカノンと一騎のように話をすることができたのなら、一騎は総士に「お前がそう決めたんなら、一緒に消えてやる」と言って、総士と一緒にいなくなってくれたのだろう。

 

・命令

ダブリンにてカノン・メンフィス保護[2141]
フェストゥムにより故郷ダブリンを焼かれてしまったカノン。その際両親を失っており、戦災孤児となってしまった。行くあてもなく彷徨っているところを、道生に保護され人類軍に所属することになる。(※2

 人類軍の兵士としてカノンは教育されたため、命令以外のことを行う場合、常に上官の許可が必要なものだと思っていた。そのため、羽佐間家で暮らすようになった後、カノンは何かをしたいと思った時、容子に許可を求めていた。

カノン「上官に外出許可を求めたい」

カノン「666と情報を交換する許可がほしい」
一期18話

 

 総士は竜宮島から出たいと思った時、コアの許しを求めていた。

 総士「僕がこの島を出るためのコアの許しがほしい」
一期22話

 総士「織姫、島を出る許しを与えてくれ」
『EXODUS』22話

 総士もカノンと同じように自分の意思で何かがしたいと思った時、自分よりも立場が上であるコアに許可を求めていた。つまり、人類軍と同じように公蔵は総士に対して、命令には絶対服従を求め、命令以外のことをしたい時は予め許可を求めるように教育していたのではないだろうか。だとすれば、総士が初めて従いたくないと思った父の命令はこれだろう。

 総士「ぼくはこの島のコアを守るために生きてるんだって、父さんに言われた。
    自分や他の誰かのために生きてちゃいけないんだって」
一期15話

 この言葉を聞いた時、総士は初めて父の命令から逃げたい(※3)と思ったが、竜宮島の外に行くことはできなかった(※4)。そのため、総士が父の命令から逃げる唯一の手段はこの世からいなくなることだった。その際、総士は一人ではなく一騎と一緒にいなくなることを望み、実行に移してしまった。

 総士「同化って言うんだ。
    一つになれるんだって」
 総士「一つになろう、一騎」
一期15話

 

 

※1 一期22話、史彦と乙姫の会話を参照。

乙姫「そしてもっとたくさんのことを理解したがっている」
史彦:それを教えるために戦闘中に外にでているのか。
   我々の情報を敵に教えたのか」

※2 一期DVD5巻収録のリーフレット「Arcadian project report 05」より引用。

※3 総士は一騎が竜宮島から出て行った時、真矢に「戦いから逃げたいと言ってたか。それとも僕から逃げたいと言ってたか」(一期11話)と言っていた。

※4 その結果、総士の中に竜宮島の外に出たいという気持ちが残り、竜宮島の外で死ぬことを望んだのではないだろうか。総士は一期で戦場での死を覚悟して新国連の最終決戦計画に参加するつもりだった。

総士「ジークフリードシステムとファフナーの二重の負荷がかかっても、
   18時間は活動できる」
乙姫「それが一番大切な人達と一緒にいられる幸福な時間」
総士「そうだ」
一期22話

 しかし、新国連の最終決戦前にイドゥンが総士を北極に連れ去ったため、総士は新国連の最終決戦に参加することができなかった。総士はアルヴィスによって救出されたものの、竜宮島にたどり着く前に体は同化され、竜宮島の外でいなくなった。アルヴィスにとっては蒼穹作戦は失敗という結果に終わったが、竜宮島の外で死にたいという総士の望みはかなえられたのである。

 織姫は総士に「もうひとつの島に新しいミールが根付く時、あなたとあなたの器が生まれ変わる」(『EXODUS』22話)と告げ、総士は海神島に根付いたアショーカの根本で力尽きたマークニヒトのコックピットでいなくなった。竜宮島の外で死にたいという総士の望みは一期同様、かなえられたのである。