『蒼穹のファフナー』見直し時のメモ Part1の続きになります。Part2は11話~17話です。Part2を見直していたところ、あまりの分量の多さに分割し直すことにしました。そのため、最初にPart1をアップした時に含まれていた11話~13話をPart2へ移動しました。
『EXODUS』を最終話まで見た後の感想なので、『HEAVEN AND EARTH』及び『EXODUS』のネタバレ内容を含みます。
第11話「旧新-じんるいぐん-」
この話はロボットアニメでの定番の一つ「作戦指揮所のサポートを失った時、本来の性能を発揮できなくなる」のバリエーション。普通は作戦指揮所と連絡が取れなかったり、その機能が失われるということが多いけど、一騎の場合、失ったのは総士という個人。
基本的にはロングソードは両手で使うものだけど、右手ではなく左手で手に取るというのが気になった。2話のレールガン、6話のルガーランス、8、9話のゲーグナーは右手で扱っているので、ジークフリード・システムとのリンクなしで戦っている=総士不在と関係しているのかもしれない。
人類軍に捕らえられ、潜水艦に連行されるシーンでの一騎は子どもだと感じる。『EXODUS』22話で真矢が人類軍に捕らえられたけど、その時の真矢はプロの軍人そのものだった。
第12話「不在-あせり-」
この回から冲方丁が脚本に参加。戦闘時にCDCとジークフリード・システムの連携が取れるようになった。
真矢「今になってやっと翔子の気持ちがわかるなんて。
あたしも一騎君と皆城君のこと、言えないわね」
ドラマCD『STAND BY ME』で描かれていたが、一騎と総士の関係と同じく真矢は翔子に負い目がある。この2組の同性のペアはよく似た存在で、同じ問題を抱えたところで物語はスタート。しかし、その行く末は正反対で、一騎と総士はずっとペアで居続けたが、真矢と翔子は翔子がいなくなったあと、真矢がその役割を引き継ぐという形になった。
『EXODUS』5話の戦闘はこの回の戦闘との共通点が多いことに気がついた。
・新人パイロットは初の実戦
・敵は遠距離から攻めるタイプ
・変性意識の影響で衛と美三香がゴーバインになりきる
第13話「侵触-フェストゥム-」
史彦「奴はファフナーを救世主にするつもりだ」
ミツヒロ「彼らにも参加してもらいますよ。
ここで戦わねば人類に未来がないということを理解してもらった上でね」
竜宮島のファフナーが北極での決戦に参加した結果、一騎は人類の英雄として祭り上げられたので、ある意味、ミツヒロの思惑通り物事が進んだということのなのかもしれない。
千鶴「紅音さんだけでしたね。
フェストゥムの気持ちを理解しないままでいいのかなんていう人。
あの人のおかげで、私は今の研究を続ける気になったんです」
史彦「彼女が教えてくれたものは私にもまだ遠い。
一騎にもそれを教えるべきかまだ分からない」
史彦は一騎に紅音の考えを伝えるか迷っていた。
洋治「私は人類軍の参謀本部員だ、融通は効く。
私の元にくれば戦うこと以外の道を見せてやれるかもしれない」
一騎「戦う以外の道」
洋治「かつてお前と同化した、真壁紅音という人間の意志に従うのだ」
竜宮島とは違う考えを持ったために島の外に出た日野洋治が紅音の意思を継ぐ者で、その結果生まれたのがザルヴァートル・モデルだった。父(史彦)は息子(一騎)に母(紅音)の考えを伝えるか判断しかねていたが、息子(一騎)は親の保護下にない島の外で第三者から母の意思(ザイン)を引き継いでいた。一騎は他人の意見に左右されず、一人になった時にすべてを決めてしまう人なのである。
バーンズ「これよりAPI-1、通称竜宮島を含むアルヴィス占領作戦に向かう」
ミツヒロ「あの島のコアを奪うことを再優先にな」
ミツヒロは島のファフナーのみならず島のコアをも欲しがっていた。これが『EXODUS』で秘密裏に新国連がミールとそのコアを所有していたことへの伏線になっている。
真矢「あたし、ずっと何もできなかった。
だからわかるの」
弓子「わかるって」
真矢「翔子の気持ちが」
弓子「真矢…」
真矢「学校にも行けなくって、なにもできなくて、だた見てるしかなくて。
やっとわかったの」
真矢は翔子と同じ立場に立った時、やっと翔子の気持ちを理解できたが、この真矢と重なるのは、総士が見たものを見れば総士を理解できるのではないかと考えて島を出た一騎。
一騎「あいつが、島の外で見たものを、俺も見たかったんだ。
そうすれば、あいつのことがわかるんじゃないかって」
一期15話
真矢と翔子は同性のペアということで、一騎と総士は対になる存在で、一期終了時点で真矢と一騎は共に相手を失っている。お互いに同性のパートナーを失ったので、この一騎と真矢の関係が縮んでもよさそうなものだが、一騎は総士の「僕は一度、フェストゥムの側に行く。そして、再び、自分の存在を作り出す。どれほど時間が掛かるかわからないが、必ず」(※1)という言葉に縛られ、島で総士の帰りを待つことになった。そのため、一期終盤で見えた一騎の真矢への好意もどこかへ消え去ってしまった。一騎と真矢と関係は総士との関係がうまく行っている時にのみ、少し進展するという少し変わった形を取っている。
第14話「覚醒-せんりょう-」
溝口さんの操縦する航空機の発進前に剛瑠島の全景が写っていたけど、ブルク内の場面の前には慶樹島の全景が写っていたことを思い出した。DVDを持っていたので、アルヴィスの全景を知っていたにも関わらず、『EXODUS』放送前までは島の地理が頭に入っていなかった。
総士「あなたは戦いもせず、それでも指揮官ですか」
史彦「君はパイロットたちに人を殺せと命令できるのか。
今はまだ何の打撃も受けていない。
直に奴らの頭がここに来るだろう。
私が彼と離す。
君たちは決して動くな」
総士「僕もここにいます。
あなたの決断が正しかったか、見届ける必要がありますから」
史彦「すぐにわかる」
『EXODUS』15話で総士が人類軍の挑発に乗らず、威嚇攻撃のみ行った場面を思い出した。人類軍によって竜宮島が占領された時、総士は史彦のそばにいてその一挙一動を見ていたが、この時、総士が学んだものは大きかったんだと思う。『EXODUS』ではこの時と同じように一騎が総士のそばにいて、総士の一挙一動を見ていた。
そういえば、総士はドラマCD『THE FOLLOWER2』で人類軍と戦うことについてこう言っていた。
公蔵「新国連との交渉が不可能となった場合、お前が人類軍と戦うのか」
総士「正直、その覚悟は必要だと思っていました。
島に戻るまでの間、人類軍からも追われ続けて来ましたから」
ドラマCD『THE FOLLOWER2』
『EXODUS』での総士は史彦の考え方に近いことがわかる。
岩戸から出た乙姫が空き家で手に入れたシャツが一騎と同じオレンジ色。」(※2)なのが気になる。
容子「この機体が彼女と同じ存在だというのは」
千鶴「同化現象を起こしながら個体であることを保つ。
皆城乙姫が人間として生きる姿そのものだということです」
一期17話
やはり乙姫とザインが同じ存在だということを暗に示しているのかもしれない。
以前、私は蒼穹のファフナー 第13話~第15話の感想で以下のような感想を書いた。
乙姫が最初に出会ったのは芹で、転生した織姫にとっても一番大切な存在となる。最初に会った人が重要な存在になるというと「装甲騎兵ボトムズ」のフィアナを思い出す。
『EXODUS』の芹と織姫は『装甲騎兵ボトムズ』のキリコとフィアナと同じ結末になってしまった。いつか芹が島とともに目覚めた時、織姫は島に命を返したのでもういない。そこも『赫奕たる異端』のキリコと同じということになる。
第15話「記憶-さけび-」
洋治「かつてお前と同化した、真壁紅音という人間の意志に従うのだ」
一期13話
日野洋治が作ったマークザインを一騎はミョルニアから受け取ったということは、一騎が紅音の意思を継いだということを意味しているのだろう。一騎がミョルニアからザインを受け取ってから5年後、ドラマCD『THE FOLLOWER2』の中で一騎ははっきりと母の考えを受け継ぐと言った。
一騎「話をすること。
母さんはそれを望んで敵と一緒になった」
ミョルニア「確かに真壁紅音は自ら同化を望んだ初めての人類だ。
それが彼女の祝福だった」
一騎「たとえ敵でも、いなくなった誰かでも
心で話すことができるのが人間だって、教えてくれてるんだろう。
そのために、母さんの姿を選んだんだろ」
ドラマCD『THE FOLLOWER2』
一騎「なんで死んだの、母さん。
病気だったのか」
史彦「俺のせいだ」
大人「総士君の目、どうしたの」
大人「一人で遊んでて転んだんですって」
大人「かわいそうに」
一騎「俺のせいだ」
史彦と紅音、一騎と総士のペアは史彦と一騎の「俺のせいだ」という言葉で繋げられ、この二組の関係は同じようなものであることが暗示されている。(※3)史彦と一騎の親子は似た者同士で、史彦にとっては紅音が同化されたことが自分の咎だったが、一騎にとっては総士に傷を負わせたことが自分の咎だった。しかし、史彦と一騎が咎を感じている紅音と総士の行動は対称的で、紅音はフェストゥムに同化されていなくなり、総士は一騎を同化して一緒にいなくなろうとした。
コミカライズ4巻でアニメ4話のマークエルフとフェストゥムとの戦闘シーンが描かれているのですが、その時、総士が一騎に同化現象について説明している場面が追加されていました。その追加された場面を見た後にこの14話を見ると、一騎が総士の左目を傷つけた理由を知る場面の重みが増す。
第16話「朋友-おかえり-」
モルドバは黒海の近くなので、竜宮島のいる太平洋から見ると『EXODUS』のシュリーナガルよりも遠い。
ザインはフェストゥムを同化することができるが、かつてフェストゥム(総士)に同化されそうになった人間(一騎)がファフナーでフェストゥムを同化するという能力を得たというのは皮肉なものである。もっとも『EXODUS』の総士は生身でフェストゥムを同化することができる。
第17話「生存-しかけ-」
狩谷「所詮、私たちは実験台だったのよ。
下の世代を真の子孫にするためのね」
悲しいかな、狩谷由紀恵のこの言葉は真実だと思う。しかし、道生と弓子の間にできた美羽が人とフェストゥムとの共存する未来を導く鍵になっていることを考えると、フェストゥムと共存という未来を築くためには必要不可欠な次の世代を生み出すための存在だったということである。
乙姫「あたしがあたしを選ぶってことはいつか終わりが来るってことだもの」
『EXODUS』での総士の言葉を思い出す。
総士「僕は人間として生き、命を終える」
『EXODUS』14話
総士「人として生きることが僕らの意思です。
島のコアが生と死をミールに教えたように」
『EXODUS』18話
総士は一度同化された後、体を取り戻した時には図らずも島のコアと同じような存在になってしまった。そして、フェストゥムでありながら人として有限の命を持つことを選んだ乙姫と同じく、総士はフェストゥムの持つ永遠を拒否し、人として生きて死ぬことを望んだ。
カノン「これでやっと、本当にいなくなれる」
カノンは一騎と近い存在だと思っていたけど、この台詞を聞いて思い出したのは総士の台詞っだった。
総士「ぼくは初めからどこにもいないんだ。
だったら、お前と一つになれる場所に帰りたい、一騎」
一期15話
カノンは竜宮島と一緒にいなくなろうとしたが、それは一騎と一緒にいなくなろうとした総士と重なる。一騎が総士を傷つけたことによって人として生まれ変わらせたが、一騎はカノンと対話して島の子どもとして生まれ変わらせたということになる。(カノンは一期終了後、羽佐間容子の養女となり、名前を羽佐間カノンに変えた)『EXODUS』で一騎に存在と無の地平線を教えたのが総士とカノンであり、この二人は『EXODUS』でいなくなった。
※2 『蒼穹のファフナー MEMORIAL BOOK』(ホビージャパン)の色彩設計、関本美津子のコメントによると一騎のイメージカラーはオレンジ。
※3 ドラマCD『GONE ARRIVE』の一騎の台詞「父さんだって、母さんを失った時は同じ気持ちだったんだろ」を思い出した。
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