蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-24-2「一騎と暉-二人の主人公-補足」

 暉「行くな、広登を返せ。返せ」
『EXODUS』15話

 人類軍がマークフュンフを奪っていった後、暉はこう叫んだが、一期でイドゥンが総士を奪った後の一騎の台詞を思い出す。

一騎「返せ。総士を返せ。
   返せ。
   総士」
一期24話

 『EXODUS』での暉の立ち位置が一期の一騎だったとすれば、広登の立ち位置は一期の総士だったのではないだろうか。

 

・一騎と総士、広登と暉

 一期で一騎は総士を理解するために、総士が見たという島の外の世界を見るために島を出たが、狩谷先生の裏切りで人類軍の捕虜になってしまった。一騎はそこでかつて島にいた日野洋治と話し、フェストゥムが襲来した時には人類軍の兵士と一緒に戦い、彼らの考え方に触れたことで、総士の考えを理解した。

一騎「お前が、苦しんでたことが」

一騎「俺たちが何も知らない時から、お前は島を守ろうとしてくれた。
    翔子の時も、甲洋の時も、お前一人で痛みを背負ってた」
一期15話

 一方、人類軍によってマークフュンフが奪われ、広登がいなくなった後、暉は広登の後を引き継ぎ、竜宮島との合流を目指す旅を記録していくが、それは人類軍とフェストゥムの両方からの逃避行という過酷なものであった。暉は偵察任務中、人類軍の兵士であるウォルターから声を掛けられた。ウォルターは3年前、竜宮島に爆弾を落とした爆撃機の副操縦士だった。ウォルターは謝罪の言葉を口にしたが、暉はすぐにその言葉を受け入れることはできなかった。しかし、二人はこの後も対話し続け、暉はウォルターに竜宮島を見てほしいと言ったが、その望みはかなわなかった。

 暉「広登は世界を見れてよかったって言った。
   平和を広める価値を知ったって。
   俺もそう思う」
『EXODUS』24話

 これが島の外の世界を見た暉の出した答えだった。

 

 一期の総士と『EXODUS』の広登はともに敵にさらわれたが、一騎と暉のその後の行動は真逆だった。一騎は敵にさらわれた総士はもう生きていないと考え、自分もフェストゥムと戦っていなくなろうとした。

一騎「父さんたちが作った、フェストゥムを倒すための武器は、
   たぶん思ってる以上に、俺たちの全部になったよ」
史彦「バカを言うな。
   だから人類軍の無謀な決戦に参加させろというのか」
一騎「だって、それ以外もうないだろ」
ドラマCD『GONE/ARRIVE』

 一方、暉は広登が生きていると信じることで、必ず生きて竜宮島に帰ると自分に言い聞かせているようなものだった。

 暉「広登がさらわれたんです。
   助けに行きましょう。
   あいつはきっとまだ生きてる」

 暉「広登、必ず助けてやるからな」
『EXODUS』15話

 つまり一騎も暉もさらわれた友人と同じ状態になって一緒にいることを望んだ、ということになる。一騎はフェストゥムと戦った後、総士と同じようにいなくなることを望み、暉は広登が生存を信じることで生きること望んだ。それは友人が敵にさらわれた時、すでに友人を理解してしていたために終着地点となった一騎と、友人を理解するためのスタート地点となった暉との違いだった。そして、暉の終着地点は一騎と同じように広登の考えを理解した時、だった。

 最終的に暉と一騎は友人の生死を確認するが、その結果は逆だった。総士はもういないと考え、父に仇討ちを懇願した一騎だが、島を訪れたミョルニアが総士がまだ生存していると告げた。

ミョルニア「ミールはお前たちの力を手に入れようとしたが、
      我々にあれは使用できない。
      だからミールは今もあれを使用できる人間を生存させている」
   史彦「それはシステムの搭乗者のことか」
ミョルニア「皆城総士という名の人間だ」
一期24話

 ミョルニアの情報通り、総士は北極で生きていた。

一騎「総士、そこにいるか、総士」
総士「一騎」
一騎「総士、いるんだな、ここに」
総士「ああ、ぼくはまだ、ここにいる」
一期26話

 一方、暉が自分に言い聞かせるように生きてると言い続けていた広登はもういなかった。

 暉「本当は、わかってた。
   お前はもういないって。
   でも、そんなの、耐えられなくて」
『EXODUS』24話

 一騎と暉は友人がさらわれた時、友人と同じ状態になってでも一緒にいることを望んだが、最終的に二人ともに友人と同じ状態になって一緒にいるという形になった。

 一騎は総士を救出することができたが、その時に総士の体はほとんど同化されていたため、最終的に同化されていなくなった。しかし、総士はフェストゥムを祝福をしたことで、フェストゥムから祝福されたため、同化されたものの心は残り、肉体を作り直して戻ってきた。しかし、すでに人ではなく、一度フェストゥムの側へ言ったことで彼らの持つ永遠を獲得していた。総士は島のコアの命令によりファフナーに乗ったが、最終的に同化によりいなくなったが、フェストゥムの永遠を持つ存在であるため、地球上の生物が命を繋ぐ方法を使って、永遠にこの世に存在し続けることになった。一騎もまたファフナーに乗り続けたため、人としての命は消える寸前だった。その時、一騎は竜宮島のミールの祝福を受け入れたため、総士と同じようにフェストゥムの永遠を持つ存在となった。つまり、一騎と総士はともに永遠にこの世に存在し続けることになった。

 一方、暉はゼロ・ファフナー搭乗時に里奈を守るために自分の命を使い、同化されていなくなった。竜宮島の存在と無の地平線であるキール・ブロックで里奈にすべてを託した後、広登と一緒にいなくなった。

 一騎と総士の関係は人とフェストゥムが互いを理解し合う物語だったが、最終的に二人はフェストゥムとなって永遠に存在し続けることになった。『EXODUS』で描かれた暉と広登の関係は竜宮島と人類軍が互いを理解し合う物語だったが、最終的に二人とも人として生きていなくなった。つまり同級生で同性の友達という共通項を持つ2組のペアは正反対の結末を迎えたということになる。

 また、総士と暉はともに異性の姉妹と別れ、同性の友人と一緒にいることを選んだが、その二人が恋したが思いの通じなかった女性が真矢だったというのは興味深い。

 

 冲方丁は「一騎と総士の関係が、上手くフェストゥムと人類の関係になっています」(※1)と言っていたが、『EXODUS』では同性の友人である暉と広登を通して、竜宮島と人類軍が理解していく過程を描いていったということになる。残念ながら暉と広登はいなくなってしまったが、暉が島の外を見て理解した広登の考えは里奈が引き継いだ。

 

※1 『蒼穹のファフナー Blue-rau BOX』のブックレットに掲載されている「冲方丁×プロデューサー座談会」より引用。

 


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