ファフナーは一期から『EXODUS』に至るまで、同性2、異性1で構成される3という人間関係が2となって物語が終わっている。『EXODUS』において、後輩組はやや変則的な形で最終的に2となった。
・一騎の世代
一期の物語開始時、一騎たちの世代は同性の友人2+異性1=3 を基本にして人間関係が構成され、どのグループも最終的には2となった。
以下は同性の友人2+異性1ではないので番外編。
・後輩組
一期
9話で里奈、10話で芹と広登が登場。女性2+男性1=3で、一騎の世代と同じキャラクターバランスになっている。18話で乙姫は後輩のクラスに編入してこの3人と友だちになり、その結果、女性3+男性1=4になった。暉は一期でもたまに画面に登場しているが、この時点ではモブといってもいい存在なので、数に含めない。
HEAVEN AND EARTH
一期ラストで乙姫が生まれ変わり、芹はアルヴィス地下の岩戸に通っていた。この作品で暉がメインキャラに昇格したので、芹、里奈、乙姫(転生)、広登、暉となり、女性3+男性2=5という状態から始まった。
後輩組の4人がファフナーのパイロットになり、戦うことになったが、友人だった芹と里奈の価値観の違いが表面化した。
芹「ねえ、あの子達、絶対に何か言おうとしてた。
どうしよう、気になって戦えないよ」
里奈「敵が言うことなんて決まってるし。
嫌いとか憎いとか。
しゃべるまえにやっつけなよ」
芹「乙姫ちゃんはそんなこと言わない」
里奈「乙姫ちゃんはもういないの」
芹「なんでそんなこと言うの?」
『HEAVEN AND EARTH』
芹と里奈の距離を開いた一方で、広登が芹の気持ちを理解しようとし始める。
広登「大丈夫か、芹」
芹「なんて言ってるか、やっとわかった」
広登「芹」
芹「痛い、助けて、痛い、助けて」
広登「なら、楽にしてやれよ」
芹「うわーん」
広登「な、泣くなよ」
芹「蒼い空が見たいよー」
『HEAVEN AND EARTH』
広登は核攻撃により傷ついたフェストゥムの発する言葉がわかった時、芹の気持ちを理解した。
広登「痛い、助けて」
広登「蒼い空だぞ、芹」
『HEAVEN AND EARTH』
一方、芹と意見が食い違った里奈は暉を失いかけた時、弟の存在の大きさを実感する。
里奈「おばあちゃん年だし、あんたいなくなったら、あたし一人だよ。
だあれもかえんない家でさ」
暉「ごめんな」
里奈「バカ」
『HEAVEN AND EARTH』
芹と乙姫(転生)+広登、里奈と暉という形になったところで物語は終わった。
EXODUS
芹と織姫、広登は一期から続く同性の友人2+異性1=3というグループだが、里奈と暉は2である。ファフナーは3から2になる物語なので、物語開始時に2ということは安定していると見なされ、そのままの状態が続くのだろうか? その答えはノーである。兄妹で2というのは一期の総士と乙姫と同じく、それぞれが自立した後に別れ、第三者と2になる。
芹と織姫+広登は広登が人類軍によって殺されたことにより、芹は織姫と生きることを選び、竜宮島で眠りについた。
里奈は剣司に恋をし、暉は真矢に恋をした。この作品において、兄弟のどちらかが精神的に相手に依存している場合、個を得る時に強制的な力が必要とされている。総士と乙姫の時は総士が左目に傷を負うという形だったが、里奈と暉の場合は暉がいなくなるという形だった。1も不安定ということで、里奈は自分に思いを寄せる彗と2になった。
一期から『EXODUS』までの人間関係の変化をまとめると以下のようになる。『EXODUS』でパイロットになった世代を含みます。
一期
芹と里奈、広登+織姫(+暉)
↓
HAE EXODUS
芹と織姫・広登 → 芹と織姫
里奈と暉 → 里奈と彗
彗と零央・美三香 → 零央と美三香
『EXODUS』で新規でパイロットになった世代も3から2となっている。
ファフナーは同性の友人のペアには厳しい物語である。同性の友人のペアで二人とも生き残ったのは一騎と総士、芹と織姫、一騎と甲洋というフェストゥム側へ行ってしまった者のみ。一騎の世代では真矢と翔子、剣司と衛、真矢とカノンという3組の同性の友人のペアでは後者がいなくなった。後輩組は『EXODUS』5話で芹が一人、喫茶楽園の外にいることからもわかるように、中学生の時は仲がよかった芹と里奈の間の距離が開き、芹は竜宮島とともに眠りについた。広登と暉は共に島外派遣に参加したが最終的にいなくなり、『EXODUS』25話では二人で一緒に島のミールの元に行ってしまった。
・親子関係
史彦「一騎がいなければ俺もミツヒロと同じ道を選んでいた」
一期21話
大人たちに与えられた運命は子どもたちより過酷だった。親2子1、親1子2で3、もしくは親1子1で2という安定している状態から2どころか1になることも珍しくない。
遠見家と真壁家はやや例外的な形になっている。
ここまで書いた後、2016年5月に行われた「蒼穹のファフナー EXODUS」スペシャルイベント-同化-の冲方丁への質問コーナーで、史彦、千鶴、一騎、真矢について冲方丁が言っていたことを思い出した。(※3)
「単純な話、(史彦、千鶴、一騎、真矢の4人の)誰か一人が欠ければね、(史彦と千鶴、一騎と真矢の)片方は繋がるんですね」
また、史彦と千鶴について冲方丁は「今の状態がもう望外なので、二人はだいぶ満足してしまっているので、先に進むには何か外圧が必要」と言っていた。
ファフナーという物語の根幹を支える皆城家は乙姫と総士が転生する存在となったことで永遠に2となったので、一部例外はあるものの、この作品で2という人間関係は安定している状態を意味しているのだと思う。
※1 竜宮島回覧板・1106号の「娘をなくした羽佐間容子」の項を参照。
※3 「蒼穹のファフナー EXODUS」スペシャルイベント-同化-は『EXODUS』BD/DVD、12巻に映像特典として収録されている。