蒼穹のファフナー EXODUS 第24話-3「島のコアの望みを叶える者」

 蒼穹のファフナー EXODUS 第24話-2「一騎の選択」 を補足する内容です。

 

 総士は一期からその行動原理に変化はなく、島のコアの望みを叶える者だった。一期で乙姫が外に出てからの総士の行動を見ていくと明白である。

 総士と乙姫が初めて直接話す場面で、総士は自分の立ち位置をはっきりと言っている。

乙姫「なぜ岩戸を出たか聞きたい?」
総士「それがお前の意志なら僕はそれに従うだけだ」
一期17話

 具体的に動き始めるのが真矢のコード改竄事件をめぐる行動である。この時の乙姫はまだ総士の考えを聞いた上で総士に指示をしている。

乙姫「もし本当はファフナーに乗れるのに
   その人を庇うために嘘をついている人がいたら、総士はどうする」
総士「データ隠蔽は、重大な裏切りだ。
   しかし、罪に問うかどうかは場合による」
乙姫「うふふふ、そう言うと思った。
   いいわ、特別に教えてあげる」
一期18話

 フェストゥムに同化された甲洋が動き出した時、乙姫は島のコアとして独自に判断し、行動し始める。そして、総士はそんな乙姫の行動の意図を汲んで動く。

総士「甲洋は全細胞を凍らせ封印する予定だったんだ」
千鶴「皆城君」
真矢「封…印」
総士「その甲洋が動き出してしまった。
   こうなればフェストゥムとして処理するしかない」
一期20話

 この時、遠見先生は総士が同級生に真実を話すとは思っていなかったのだと思う。総士は他のパイロットとは異なり、アルヴィス上層部と同じ情報を持っているが、島のコアの望みを叶えるために動いているので、時と場合によってはアルヴィス上層部とは別行動となる。そして、総士はフェストゥムに同化された甲洋を受け入れるのか、拒否するのかの判断を大人たちではなく同級生に委ねた。

溝口「春日井甲洋のいる施設周辺の管理データだ。
   見事に改ざんされてるぜ。きれいすぎる」
史彦「やはり凍結処分を解除したのは彼女か」
溝口「てことは俺たちの動きも筒抜けってわけさ、皆城乙姫にな」
一期21話

 甲洋の問題では島のコアの考えとアルヴィス上層部との考えが一致していないことが、真壁司令と溝口の会話で明らかにされる。

総士「新国連の最終決戦計画に参加する場合、一騎達と共に戦いたい。
   僕がこの島を出るためのコアの許しがほしい」
一期22話

 総士は島のコアの望みを叶える存在なので、島から出て自分の意志で行動するときにはコアの許可を必要だった。

総士「還ったのか、もう一つのミールの元へ、乙姫」
一期26話

 そして、乙姫が自分の意志で島と同化する時、総士は乙姫の意志を受け入れ、ただ見送るのみであった。

 

 ここまで見てわかるように、総士は一期を通して島のコアの意志に従い、その望みを叶えるために行動していた。『HEAVEN AND EARTH』では総士は北極ミールから別れたフェストゥムに中にいて、島のコアと意志疎通ができないので、自分で判断して行動していた。島に戻った後の総士は再び島のコアの望みを叶える者となった。『EXODUS』において成長した島のコアは外に出てすぐ、一騎と総士に捨てようとしたザインとニヒトに乗り、美羽を守るように命じる。

総士「ぼくはコアの言葉に従う。
   ずっとそうしてきたように」
『EXODUS』6話

 島からシュリーナガルへ向かい、そこからダッカへ。さらにニューベイジンを経由してハバロフスク近郊で島と合流という長い旅を終えて島に帰ってきた後、新国連から真矢を取り返す時も島のコアに許可を求めている。

総士「島のコアを失望させはしない」
織姫「名前で呼んで、総士」
総士「織姫、島を出る許しを与えてくれ」
『EXODUS』22話

 この場面での注目点は総士は島のコアからお願いされるまで織姫という名前で呼んでいないこと。

一騎「もう一つ、聞いていいか」
織姫「なに」
一騎「君の名前は?」
織姫「まだないの」
『EXODUS』6話

 総士と同様に一騎も最初から生まれ変わった島のコアは乙姫とは別人であると認識していたのが興味深い。

 総士と一騎の二人だけが今の島のコアは乙姫とは別の人格であると認識しているが、その他の島の住民は島のコアが生まれ変わり、別の人格を持っているということをなかなか実感できずにいた。芹は生まれてすぐに「乙姫ちゃん」と呼びかけて嫌な顔をされた。織姫が外に出てきてから1ヶ月近く経った後、CDCではこんな会話があった。

ベラ「人よりファフナーが大事?」
史彦「以前のコアなら決して言わなかった」
織姫「わたしは皆城乙姫じゃない」
『EXODUS』16話

 総士と島の住人との間で島のコアに対する認識の差が最も表現されているのはこのシーンだと思う。

総士「美羽ちゃんがここのミールを通して、島のミールに危機を伝えたんです。
   そして、島のコアが目覚め、僕らを派遣させました」
広登「コアって… 皆城乙姫が」
 暉「目覚めたんですか」
総士「乙姫ではない。
   皆城織姫と名付けられた新たな人格を持った存在だ」
(EXODUS』10話

 

 一騎の行動原理は『HEAVEN AND EARTH』では「俺がやる、お前が望むなら」、『EXODUS』では「お前が行くなら、俺も行く」だった。総士と行動を共にするということは島のコアの望みを叶える者になることであり、それは自分のために生きることをやめるということでもあった。一騎がそのことを知ったのは『EXODUS』24話だった。一騎は拒否することもできたが、総士と同じ道を選んだ。