蒼穹のファフナー EXODUS 第25話「蒼穹作戦」

総士「同化された人間の思念、これほどか」
『EXODUS』7話

総士「憎しみと虚無の塊、ニヒトと同じだな」
『EXODUS』9話

グレゴリ型「あいつらはたくさんの心を作っては消した。
      僕がいた島の人たちもみんな殺した。
      でもそのたびに力が育った。
      そして、君という器が生まれた。
      僕たち…みんなを…憎しみの器が」
『EXODUS』22話

 同化された人間が残した感情は憎しみ。
 生きている人の中にも消すことのできない憎しみを抱えている人はいる。

里奈「あんたら、あたしらになにした。
   島を占領してさ、爆弾落としてさ」
『EXODUS』3話

織姫「あなたが憎むマークニヒトはあなただけの器」
『EXODUS』22話

 真矢もまたキースに憎しみという感情を与えてしまった。ビリーにもその感情が生まれてしまうのだろうか?

キース「殺す。絶対に殺してやる」

ビリー「兄さん、返事をしてよ、兄さん」
『EXODUS』23話

 

グレゴリ型「君を世界の王様にしてあげる」
 ディラン「バーンズ将軍、どうかご命令を」
 バーンズ「世界の王か」
『EXODUS』25話

 フェストゥムからの誘惑に負けて、利用するのではなく利用される側になってしまったバーンズはやはり普通の人間。利用価値がなくなれば、即座に切り捨て、撤退のヘスターの方が上手。この場面を見て、ふと一期15話の「ふふふ、悪くない座り心地だ」のシーンを思い出してしまった。

 

ビリー「なに? どういうこと」
 アイ「真矢の銃よ。仇を討ちなさい、ビリー」
『EXODUS』25話

 ビリーは兄の死に対する気持ちの整理がついていない中、アイからそそのかされる。バーンズの時と同じく、フェストゥムは人の心を読んで誘惑する者。一期23話で総士が「僕の心を読んで、僕を誘っているのか」と言っていたのを思い出した。ここでビリーは初めて自分一人で決断することになるが、さてどちらを選ぶ。

 

里奈「暉が行っちゃった。広登と一緒に」
『EXODUS』25話

 『EXODUS』17話、SPDの副作用で眠っている時に里奈は祖母にこう言っている。

  里奈「広登が帰ってきたよ」
西尾行美「いいや、まだ帰っちゃいないよ」
  里奈「広登が言うの。
     もし敵や誰かがいなくなってもその分強くなれるって。
     力を育てろって」
『EXODUS』17話

 この時、里奈が広登の記憶と触れているような描写がされていたけど、里奈自身もまた広登がいなくなったことを理解していたということになる。里奈が大人になるために、暉と里奈は最終的に別々の人生(たとえば最終的に暉が島を出る)を選ぶ必要があると思っていたけど、正直ここで暉がいなくなるとは思わなかった。

 

一騎「アショーカのコアが死にかけている」
織姫「希望はある。
   守りなさい。
   平和を願って、戦いを選んだのなら」
『EXODUS』25話

 一騎は『EXODUS』24話で島のミールの祝福を受けた結果、一騎も総士と同じく島のコアの意志に従う者となった。しかし、総士は一期から島のコアの意志に従う者だった。詳細は 蒼穹のファフナー EXODUS 第24話-3『島のコアの望みを叶える者』 を参照。

 

史彦「一騎、戻ったんたな」

総士「帰ってきたな、一騎」
『EXODUS』25話

 父、史彦は「戻った」、総士は「帰ってきた」で、二人で表現が違うところに注目。一騎が史彦はミールの祝福を受けたことを理解していないが、総士は輸送機から降りて一騎を見た瞬間、何が起きたのかを瞬時に理解した。『HEAVEN AND EARTH』の最後で総士は一騎にこう言っている。

総士「島を、僕の帰る場所を守ってくれて」
『HEAVEN AND EARTH』

 存在と無の調和を選んだ場合、この世界へ「帰る」という言葉で表現されるということか。

 『EXODUS』23話、キール・ブロックで総士が島の存在と無の地平線を見た時、一騎の人としての命は尽きかけているが、かつての自分と同じ選択をすれば、こちら側に戻ってくることを総士は知っていたんだと思う。この時点で一騎が島のミールの祝福を受け入れたことを知っているのは総士と織姫のみ。史彦と真矢は一騎の変化に気がついていない。

 

一騎「お前が選んだ道を、俺も選ぶよ」
『EXODUS』25話

 『HEAVEN AND EARTH』では「俺がやる、お前が望むなら」 、『EXODUS』6話では「お前が行くなら、俺も行く」と来て、最終的にこの言葉に一騎はたどり着いた。一期16話で一騎は総士に「だけど、今は、少しだけ、わかった気がする」と言っていたけれど、今は総士の見ていたもの、背負っていたものをすべて理解した上で、一騎は総士と同じ道を選んだ。一騎は一期からずっと総士を理解して、同じ位置に立ちたがっていたのだと思う。詳細は 蒼穹のファフナー EXODUS 第24話-2『一騎の選択』 を参照。

 総士は一騎が自分と同じところまで来たことに気がついた時、すごく嬉しそうな表情しているように見えた。多分、これは総士も昔からずっと望んでいたことなんだと思う。

 

剣司「明日、葬儀の後でやるぞ」
真矢「やるって?」
咲良「成人式よ、あたしたちの」
『EXODUS』25話

 『EXODUS』1話の完全長尺版で以下のような場面がある。

剣司「次の検査、来週な、忘れんなよ」
一騎「ああ」
剣司「俺たちの成人式もな。準備手伝えよ」
『EXODUS』1話

 最初から成人式を描くつもりあったのであれば、この場面はテレビ放映版にも入れてほしかった。

 

暉「ウォルターさんに島に来てくれって言った。
  その時思ったんだ。
  広登の無事がわかったら、別の願いを書こうって。
  世界中に竜宮島の平和を知ってほしい。
  そのために俺は生き残る」
『EXODUS』25話

 竜宮島の平和を世界に広めたいという広登の考えは暉が引き継ぎ、長い旅の中でその意味を理解していった。しかし、それを伝えるべき相手は島の外ではなく、『EXODUS』2話で人類軍の兵士に「あんたら、あたしらになにした。島を占領してさ、爆弾落としてさ」と言った姉の里奈だった。

 

総士「僕の生存限界か。
   君の名を僕は知らない。
   もし君がこの機体と出会うなら、それが君の運命となる。
   僕の名は皆城総士。
   君がこれを聞くとき、もう僕はこの世にいないだろう」
『EXODUS』25話

 ここで『EXODUS』1話冒頭にある総士のモノローグとつながった。

 一般的に後継者のいない強大な武器の最終的な行方は「担い手とともに永遠に失われる」もしくは「どこかに隠され、後の時代に発見される」という2パターンがある。『EXODUS』22話で織姫が「もうひとつの島に新しいミールが根付く時、あなたとあなたの器が生まれ変わる」と総士に告げていたように、総士とニヒトは一度消え、それが必要となった時に担い手とともに再び現れるというパターンになった。ニヒトを使えるのは最初の担い手の子孫ではなく、転生した総士自身にしか使えない武器ということで、マイクル・ムアコックのエターナル・チャンピオンシリーズ(※1)を思い出す。

 『エターナル・チャンピオン』を日本語に訳すと「永遠の戦士」。このシリーズに属する『エルリック・サーガ』でエルリックは巨大な力を持つストームブリンガーを憎んでいるが、生きるためには必要で捨てることはできない。一方、武器が使われるには担い手が必要。というわけでこの作品では担い手と自意識を持つ武器の愛憎に満ちた共生関係が描かれている。それは憎みながらも捨てることなく最後まで搭乗した総士とニヒトの関係を思い出させる。しかし、その落とし所まで同じになるとは思わなかった。また、『EXODUS』18話でナレインが一騎に「君なら永遠の戦士になれるだろう」と言っていたけど、ある意味「永遠の戦士」になるのが一騎ではなく総士というのも読めなかった。

 

史彦「今諸君に与えたアルヴィスへのアクセス権限は、諸君が背負う責任そのものだ。
   ともにいた者を尊び、ともにいる者と守り合い、苦難の時代を生き抜いてほしい。
   諸君こそ、我々にとっての誇り高い未来である」
『EXODUS』25話

 成人式は大人用のアルヴィスの制服を着て神社で行われた。アニメージュ2005年2月号の表紙(※2)をリアルタイムで見た人としては大変感慨深い。

 『EXODUS』2クール目で冠婚葬祭すべてやる(冠:25話、婚:19話、葬:16話、祭:17話)というなかなかチャレンジングなシリーズ構成。

 ドラマCD『STAND BY ME』及びシリウス版コミカライズ「第八歌 変 アルヴィス 貌」(単行本2巻に収録)で一期のパイロットが初めてアルヴィスの制服を着る場面を通して、制服を着ることの意味について描いていたことを思い出した。アルヴィスの大人の制服を着るということは、イコール島の意思決定に直接参加することができるようになったことを意味する。そして、一期のパイロットたちは同化された甲洋の存在を通して、フェストゥムとの共存を選んだ最初の世代ということ。つまり島のコアの望んでいたフェストゥムとの共存を選んだ世代が島の意思決定に参加することになり、ここで確実に島の世代交代の時が来たことを意味している。

 成人式に参加したのは一騎、総士、真矢、剣司、咲良、甲洋の六人。フェストゥムとの共存を選んだ最初の世代というのにふさわしく、一騎(生と死の循環を超える命)、総士(島のコアに近い存在)、甲洋(スレイブ型フェストゥム)という人を超えた存在が三人含まれている。

 『RIGHT OF LEFT』では一期のメンバーのひとつ上の先輩の世代が描かれているけれど、その世代までは中学を卒業する=島を出て真実を知り、大人とともに働く=成人だった。しかし、一期のメンバーの世代から高校に通うことができるようになり、事実上、20歳で成人という形になった。子どもでいられる時間が5年伸びたというのが、ひとつ上の世代までとの大きな違いだと思う。

 

一騎「必要なら、俺が人類軍と戦う」
『EXODUS』25話

 一騎は真矢が爆撃機を攻撃した後に「また同じことになったら、次は俺がやる」(『EXODUS』15話)と言い、一騎を真矢が狙った暗殺者を射殺した後に「もう戦いに出なくていい。全部俺がやるから」(『EXODUS』19話)と言っていた。一騎は戦うことを選んだので、真矢への約束を守り、ここではっきりと自分がやると言った。もっともこれは少し自信がついた若者の態度であり、この後、一騎は父から諌められる。

 

総士「無に…還れ」
一騎「還りな、お前たちのいるべき無へ」
『EXODUS』25話

 この台詞から一騎は総士と同じく存在と無の調和を選んだ結果、フェストゥムの世界を垣間見て、総士と同じように理解してしまったことがわかる。

 

総士「これか、お前の心臓は」
『EXODUS』25話

 『EXODUS』4話でニヒトに対して「今、お前の心臓を、引きずり出す」と言っていたけど、総士はニヒトを生物として見ていたのだと思う。しかし、『EXODUS』10話ではアザゼル型ロードランナーに対して、「敵のコアを滅ぼせ」と言っていたので、この時総士はまだアザゼル型を生物だと見ていなかった。その後の経験した中で総士はニヒトだけでなく、フェストゥムも生物として見るようになったのだと思う。

 

ワン・イー「Dアイランドは攻撃しないのですか」
 ヘスター「彼らには利用価値があります。
      甘いかしらね、真矢」
『EXODUS』25話

 バーンズよりヘスターは一枚上手だった。さっさとベイグラントを捨てて、後始末を竜宮島に任せるという変わり身の早さ。あと、自分と考え方がそっくりな真矢には一目置いたということか。

 

ミツヒロ「見よ、俺にも乗れるぞ。
     父が作ったザルヴァートル・モデルに」
『EXODUS』25話

 ミツヒロは『EXODUS』9話で「そうだあれがザルヴァートルモデル。父が作ろうとした、人類救済の力」と言い、『EXODUS』10話で「あなたたちの機体はわれわれにも持てるんですか」と言っていたけど、コアの少年はミツヒロの中に残る「嫉妬」というマイナスな感情は消なかったのか。

 

※ wikipediaの エターナル・チャンピオンシリーズ の項を参照。

※2 復刻版 竜宮島回覧板・0127号 を参照。