蒼穹のファフナー EXODUS 第11話「変貌」

 アバンの「エンゲージからわすか7分で12体を殲滅。とてつもない戦力ですね」を聞いて、一期21話の「陸地進入から僅か17分で殲滅。記録更新ね」を思 い出した。ファフナーで戦闘シーンが描かれないときの圧倒的な勝利なんてロクなもんじゃない。一期21話を見直したけど、一期21話は銭湯→合宿で、 『EXODUS』11話が合宿→銭湯という流れで逆転させている。

 

 ファフナーで涙と言えば、一期20話で甲洋が「翔子はもういない、翔子は」と言って涙を流し、真壁指令が「溝口、フェストゥムは泣かない」と言った場面が思い浮かぶ。

 『EXODUS』7話の戦闘の後、彗が無意識のうちに涙ぐんでいるのを里奈が指摘する場面がある。

里奈「明日また検査あるから、サボるんじゃないわよ。
   って、どうしたの、鏑木」
 彗「えっ、あれ、何だろう」
里奈「何? どっか痛いの?」
 彗「俺、死にたくないって思っちゃって。
   ごめんなさい。
   戦えば誰かいなくなるのが当然なのに、怖くなって。
   ごめんなさい」
『EXODUS』7話

 『EXODUS』11話には美三香の元に空間跳躍した零央が美三香に泣いていると指摘する場面がある。

 零央「痛っ、ここ美三香ん家か」
美三香「零央ちゃん、どこから来たの?」
 零央「俺ん家だよ。
    なんか勝手に…。
    あっ、泣いてんのか、お前」
美三香「えっ。
    あれ、なんだろう。
    変なの」
『EXODUS』11話

 『EXODUS』11話でパイロットのフェストゥム化が始まってしまったけれど、涙が出るということは人の心を持っている証なのだろうか。

 

 竜宮島の子どもたちは遺伝子操作でフェストゥムの因子を埋め込まれていて、ファフナーに乗るたびに染色体が変化し、同化現象が進行する。しかし、それとは別の形でフェストゥムとの融合が進んでしまった者が何人かいる。

 皆城乙姫:母が同化されたため、胎内にいた乙姫も同化された。
      島のコアであるが、コア型のフェストゥムでもある。
      織姫は乙姫が転生した存在。
 皆城総士:一度フェストゥムに完全に同化されたが帰還した。
      フェストゥムの体と人の心を持つ存在になった。
春日井甲洋:中枢神経を同化され、
      同化機能を消したスレイブ型のフェストゥムになった。
 真壁一騎:ファフナーに乗り続けたため同化現象が進行し、
      一期26話で視力を失ったが、『HEAVEN AND EARTH』で操が治した。
      また、ザインとともに二回、ニヒトに同化された。

 11話でファフナーのパイロットにこれまでとは違う形の同化現象が起きていることが描かれ、ファフナーに乗っている時に獲得した能力を生身でも使え るようになってしまった。おそらく肉体のフェストゥム化が進んでいるのだと思う。島の子どもたち以上にフェストゥム化が進行した乙姫(織姫)、総士はいず れもその寿命は普通の人間よりも短い。そして、肉体の同化現象が進み余命3年と宣告された一騎同様、11話で同化現象に見舞われた子どもたちも長生きする と思えない。たとえこの後、人とフェストゥムの融合した新世代の存在が未来を築くとしても、島の子どもたちは進化の過程での通過点でしかなく、新世代のた めの犠牲者ということになる。

 『EXODUS』で注目すべき点は体はフェストゥムである織姫と総士が人間味あふれる存在して描かれ、体はまだ人であるはずの一騎が人間性を失ったよう に見えること。人とフェストゥムが融合した存在としては一歩先を行く者たちであるけど、11話で変貌を遂げた子どもたちの未来を示唆する姿なのだろうか。

 一期12話で遠見千鶴はこんなことを言っています。「フェストゥムと何度も戦った彼の目に同化現象を積極的な進化と捉える研究がどううつるか」

 さらに一期20話、涙を流す甲洋の姿を見た後の場面。

史彦「溝口、フェストゥムは泣かない」
弓子「ソロモンに応答あり。スレイブ型と断定」
千鶴「フェストゥムが自分から同化機能を消した」
史彦「我々の考えは間違いではなかった。
   我々の道、フェストゥムと人の最初の一歩だ」
乙姫「今はまだ少しだけ早いの。
   いつかその日が来るまでおやすみ、甲洋」
一期20話

 さて「同化現象を積極的な進化」と言っている大人たちが11話での子どもたちの変貌を見て、どういう反応をするのか楽しみ。

 

立上真幸「なぜ今、ゴルディアス結晶が現れた」
  織姫「逆に聞くけど、アルヴィスやファフナーの形が
     あまり変わらないのはなぜ?」
立上真幸「我々の最高の技術だ、変えようがない」
  織姫「変わるとしたら、何が理由」
立上真幸「未知の文化との接触だ。
     つまり人類軍の到来が島を変えたと」
  織姫「それは大したことないわ。
     問題はこの星に新しい存在が来るということ」
立上真幸「新たなミールに島が反応しているのか」
  織姫「世界中のミールの欠片たちがね。
     みんな、未来を探してる、
     滅びではない、未来を」
立上真幸「滅び…」
『EXODUS』11話

 人が滅びる未来が見える展開が続いてしんどい中、ミールも生き残ることを望んでいることを語った場面。しかし、乙姫とは少し違うという織姫の能力は何なのか?

 

(織姫は芹の頭を叩いて起こす)
織姫「行くわよ、起きなさい」
(山に登り、織姫はカブトムシを捕まえる)
 芹「織姫ちゃん、もっと優しく」
織姫「次行くわよ」
『EXODUS』11話

 この回で個人的なお気に入りのシーン。子供って虫の扱いが雑なのね。そういえば、織姫の伯父さん(総士)もニヒトで子供が虫を殺すような戦い方をしていたけどな。あの場面を見て総士は子供の頃から抑圧されすぎだと思った。公蔵の子育ては失敗だと思う。

 芹と織姫が山に登る場面は『Preface of HEAVEN AND EARTH』で描かれた総士病の一騎と乙姫病の芹が山の中で鉢合わせする場面を思い出した。途中、織姫が芹の作ったフェストゥムの墓を見る場面があった。顔は映さなかったけど、何を思ったのだろうか。