蒼穹のファフナー EXODUS 第10話「希望の地へ」

 『EXODUS』7話のアバンで瓦礫の下敷きになったものの、美羽が願ったらなぜか復活していた弓子。それまでは美羽の力に戸惑っていたけど、復活した後 は娘の力を受け入れ、美羽にとって都合のいい母親になっていた。この作品では数少ない家族の幸せを優先する人で、一期では真矢のシナジェティック・コード の改ざん、CDCの報告書を無断で真矢に教える(ドラマCD『NOW HERE』参照)、『HEAVEN AND EARTH』では子供を守るために真壁指令を銃で撃つといろいろやらかしている。

美羽「一騎お兄ちゃんと総士お兄ちゃん。
   いなくなっちゃうの」
弓子「今はまだ大丈夫よ。
   でも、力を使い続ければいずれその力そのものに同化されるわ」
美羽「死ななかった」
弓子「二人とも自分の意思で来たのよ。
   美羽たちのために」
弓子「さあ、お願いをしましょう」
美羽「うん」
美羽「お願い、皆を守って」
『EXODUS』10話

 弓子は一騎と総士しか知らないことを美羽に話しているのでやっぱりおかしい。「さあ、お願いをしましょう」って部分は明らかに美羽を誘導している。

 

総士「ミールの影響による成長ですか」
弓子「ええ、でも大丈夫。
   これ以上の成長は命に関わるってミールも理解してる」
総士「弓子先生?」
『EXODUS』10話

 弓子がさらっとミールなんて言葉を言うことに違和感を感じるんですが。さすがに総士は違和感を感じていた。

 

真矢「これ、道生さんの」
弓子「美羽の父親の物だからお守りに持ってきたけど、
   今の私には使えないのね」
真矢「お姉ちゃん、どうしたの?」
弓子「なあに、私は心配いらないわよ」
真矢「お姉ちゃん、ずっと寝てないでしょ。
   なんか食べた? 食べる物持ってこようか」
弓子「いいの、今は必要ないから
   真矢、あなたが持ってて」
真矢「えっ」
弓子「使い方は教わってるでしょ。お願い」
真矢「うん」
『EXODUS』10話

 弓子はミールに生かされている存在で、睡眠も食事もいらないということなので、やはり人ではない? そしてフェストゥムへの攻撃も禁止された存在。深夜に見ると怖いグレゴリ型は敵なんですかね。それとも今シュリーナガルで問題になっている内通者?

 美羽は精神的に自立して、母親の役割を終えたらいなくなってしまいそう。その時、真矢は7話アバンで弓子の言った「美羽よ、眠っているわ、今はまだ力を受け入れるだけで精一杯だから」という言葉を聞いた時の違和感を思い出すのかな。

 

 『EXODUS』4話で千鶴さんから「とても真剣で使命に燃えていて、怖いくらい似ています、若い頃のあの人に」と言われたジョナサン。9話でザインに憧れの眼差しを向け ていたけど、父親のコンセプトが反映されたのはニヒトの方だ。10話、廊下で溝口、一騎、総士が出てくるのを待ちぶせしていた。

ミツヒロ「教えてください。
     あなたたちの機体はわれわれにも持てるんですか」
  総士「無理だろう、パイロットごと味方を滅ぼしかねない。
     本来、封印すべき代物だ」
ミツヒロ「そうですか」
  一騎「じゃまたな」
ミツヒロ「無理かどうか試すことはできる、命を使って。
     そうでしょう、真壁」
『EXODUS』10話

 ザインとニヒトのどっちにチャレンジするのかなあ。その先にあるのは暴走か同化か。それとも「同胞殺しと紛争調停者」という二つ名を与えられた真矢がとどめを刺すのか。1話で同化キャンセルしていたのが地味に気になる。

 

 一期と『HEAVEN AND EARTH』で島に莫大な被害をもたらしたにもかかわらず、『EXODUS』2話から4話までの総士とニヒトの関係がおもしろすぎて、ニヒトは完全に萌えキャラ扱い。 「ファフナーとは一体化するので操縦する必要ない」と説明されているけど、どう見ても総士とニヒトは一体化していない。『EXODUS』9話でディアブロ型3体がニヒトの コックピットを刺した時、ニヒトは首を揺らしていたけど、総士は微動だせず。『EXODUS』10話では「どうしたマークニヒト、虚無の申し子がこの程度か」とコアに命令している。ふと、一期26話の未公開シナリオで同化された後、総士のコアが紅音と甲洋によって救出される場面を思い出した。以下未公開シナリオから引用。

□上空
 空中に、紅音と、金に輝くコアを両手に捧げる甲洋がいる。
甲洋「おやすみ……総士……。また…合うときまで……」
 紅音、遥か彼方を見やる。
紅音「行こう……。かつてない、発展のために」
 ふっつりと姿を消す、紅音と甲洋。

 総士はミールの遺伝子を移植されていたので、コアがあっても不思議じゃない。一度フェストゥムの側に行って戻ってきた二期の総士は人の心とフェストゥムの体の融合体。パイロットがフェストゥムと同じコアを持つのでファフナーとの一体化はできず、総士がニヒトのコアを支配する形というとしっくりくる。この設定が生きているのかどうかは不明だけど、二期では小説版と未公開シナリオの設定の逆輸入が多い。

 

真矢「なんで一騎くんを止めなかったの」
『EXODUS』10話

 PVに出ていた台詞で一番の地雷がこれ。一騎がザインに乗った後、真矢が総士に言う台詞なのは確実で、一期中盤の再現は勘弁してくれと思っていた。

真矢「なんで一騎くんを止めなかったの」
総士「一騎を乗せたことで、言い訳はしない」
真矢「ごめん、どうしようもなかったよね」
一騎「遠見」
真矢「一騎くん。ありがとう一騎くん、助けてくれて」
総士「遠見と僕に謝るんだな」
一騎「なんでお前に」
総士「いつも僕だけ彼女に泣かれる。
   お前だけ感謝される。
   不公平だと思わないか」
一騎「なんの話だよ」
『EXODUS』10話

 一期の時とは異なり、総士が大人になって言葉で説明したので、地雷を踏まずに済んだ。真矢は総士なら本音を言っても受け止めてくれるだろうという甘えもあると思う。真矢は戦闘機に乗ったり、一騎の世代では唯一現役パイロットで、なんとか一騎のいる場所を守りたいと思っていた。しかし、一騎本人は限られた命(二期1話の時点で3年)では、なにかを始めても最後までやり通せないことを悩んでいた。悲しいかな「一騎君の居場所を守りたい」という気持ちは善意の押し付けに見えてしまう。

 いい加減、真矢は自分の気持ちを総士にぶつけるんじゃなくて、一騎と直接話してほしいと思っていたら、今回は二人に会話シーンがあった。

一騎「ごめん、島で待てなくて」
真矢「皆城くんに言えっていわれたんでしょ」
一騎「やっ、まあ、謝れって」
真矢「なんか情けなくなっちゃって。
   もう犠牲は嫌だとか、
   一騎君の代わりになれるとか思ったり。
   そんな力、ないのにね」
一騎「遠見は十分戦った。
   みんなと島に帰ってほしい。
   美羽ちゃんは俺たちが」
真矢「家族を置いていけないよ。
   こんなに遠くに来たけど、
   一騎くんが願っていたもの見つけられなくてごめんね」
一騎「見つかるよ、きっと」
『EXODUS』10話

 一期から真矢に対する一騎の気持ちは変わらず、真矢は戦わないで島にいて欲しい人。真矢の努力は一騎には何も見えていないし、おそらく見ようともしない。真矢は総士と同じく一騎の横に立ちたいんだろうけど、一騎はそれを望んでいない。一騎は戦うという部分では総士しか見えていない。冲方は一騎と総士をあえて男性同士にしたんだけど、男女にすると一騎と真矢のような形になってしまうことがわかる。片方が何かを決断するたびにこういう展開になると面倒くさい。

 真矢は『EXODUS』9話で一騎、総士と同じ土俵に上がったと感じたけれど、弓子、美羽、ジョナサンと家族の問題と向き合うことになるので、総士の後をついていく一騎とは別の道を行くことになるような気がする。