【蒼穹のファフナー EXODUS】人類軍の価値観-補足

 【蒼穹のファフナー EXODUS】人類軍の価値観 を書くために『EXODUS』を見直していた時のメモ。本題に直接関係のない内容もあるので、別の記事にしました。

 

・竜宮島と人類軍

 竜宮島出身の真矢と総士はファフナーで行った行為を後に生身で行っているが、ハワイ防衛戦を経ている人類軍のダスティン、アイは『EXODUS』において、生身で行った行為を後にファフナーで行っている。おそらく意図的に竜宮島の人間と人類軍で逆の順番にしているのだと思う。

真矢
 人類軍の爆撃機を攻撃(14話) →  人類軍の工作員を殺害(18話)
総士
 ファフナーでフェストゥムを同化(9話) →  生身でフェストゥムを同化(23話)
 
ダスティン
 カマル司令を殺害(14話) →  殺意を持ってマークジーベンを攻撃(23話)
アイ
 人類軍の工作員に銃を向ける(18話) →  ミツヒロから殺害を懇願される(21話)

 

・一騎と総士

一騎「何か学んで、やり始めて、でも、それがやり残したことになるのが嫌なんだ。
   お前はそうじゃないのか、総士」
総士「回復の可能性はある、悲観するな」
一騎「してないさ。
   あと3年、それだけあれば覚悟だってできる。
   今は目も見える」
『EXODUS』1話

 この時の一騎と総士の会話は噛み合っていない。初見時、目の前にある死について総士と一騎の考えは同じだと思っていたが、実際自分の目の前にある死に対しての考え方は二人の考え方は正反対だった。まだ死にたくない一騎に対して、フェストゥムの側へ行ったことで、フェストゥムが持つ永遠をも得てしまった総士は人として生きて死にたいということになる。

 

・ソロモンの目

史彦「ソロモンの目を盗んだ」
『EXODUS』13話

 フェストゥムがヴェルシールド内に現れた時に発した史彦の言葉は妙に印象に残った。ソロモンがある場所はウルドの泉である。

ジェレミー「ウルドの泉はソロモンの頭脳である液体型コンピューターのはずですよね」
『EXODUS』3話

 この台詞からソロモンがあるのは液体コンピューターの中ということになるが、「泉の中に隠された目」で思い出すのは『エッダ』の一文である。

オーディンよ、あなたがどこに眼を隠されたか、私はよく知っている。あの名高いミーミルの泉の中です。
『エッダ』~巫女の予言~(※1

 『ファフナー』ではウルドの泉、『エッダ』ではミーミルの泉という違いはあるけれど、液体型コンピューター(ウルドの泉)≒ 知恵と知識(ミーミルの泉)にある眼という共通のイメージになっているのは興味深い。

 

 ミーミルの泉にオーディンの眼がある理由については以下のように説明されている。

霜の巨人のむいている根の下にはミーミルの泉が、知恵と知識が隠されている。この泉の持ち主はミーミルという。(中略)そこへ万物の父がやってきて、泉から一口飲ましてくれ、といった。そして、自分の眼を抵当にしてやっと飲ましてもらった。
『ギュルヴィたぶらかし』15(※2

 『ファフナー』では左目を失った総士がオーディンのイメージと重なるが、総士の左目の有り様もオーディンの眼とどこか重なる。オーディンはミーミルの泉を一口飲むために片方の眼を抵当として差し出したため、オーディンの眼はミーミルの泉にある。一方、総士は自分がフェストゥムであることを拒否したために左目を取り上げられたが、自分がフェストゥムであることを受け入れた時に左目を取り戻した。実際、総士は一騎に左目について聞かれた時、こう答えている。

総士「一度失われ、戻った」
『EXODUS』6話

 「戻った」という表現が、ミーミルの泉にあるオーディンの眼と同じく、総士の左目も消えたのではなくこの世界のどこかにあったというイメージを醸し出している。

 

・見る=知る

  暉「竜宮島に来ませんか。
    俺たちの故郷を見て下さい。
    空からじゃ、何を壊そうとしたかわからないでしょう」
『EXODUS』21話

 『EXODUS』21話で一番印象に残ったのは暉のこの言葉だった。この言葉で思い出したのが、一騎がカノンに言った言葉だった。

カノン「近づくな」
 一騎「離れていちゃ顔も見えないだろ。
    お前、いるじゃないか、そこに」
一期17話

 一騎はカノンに相手の顔を見ることが、相手を知ることだと言っているが、一騎はカノンに近づく前、暉と同じように故郷である竜宮島について話していた。

 一騎「島を見ろよ、人がたくさん住んでいるだろう。
    俺の大事な人たち、みんなここにいるんだぜ」
一期17話

 しかし、この時は一騎とカノンはファフナーに乗っていて、直接顔を見ることができない状態であるため、一騎の言葉はカノンには伝わらなかった。

 

・死と変容

その肉体はすでに普通の人間のものではなく、島のコアに近い存在になっている。

 『EXODUS』の物語開始時の総士について、公式サイトのSPECIAL/CHARACTER/皆城総士のページにはこう書かれているが、総士は乙姫とは逆の順序で同じような存在になってしまったことを意味している。

 乙姫は胎児の時に母が同化されたが、乙姫は同化されずにコア型のフェストゥムになった。心を持つことを選んだ乙姫には時間が生まれ、人間と同じように命ある存在へと変化した。それは有限の存在になることを意味し、乙姫の寿命が尽きた時、人間と同じようにいなくなった。一方、人として生まれ育った総士はフェストゥムに同化されていなくなった。しかし、一度は失った肉体を取り戻し、この世界に帰ってきた。しかし、フェストゥムの組織でできた肉体を獲得したのと同時にフェストゥムの持つ永遠をも獲得てしまった。乙姫はフェストゥムから有限の命を持つ人間に近い存在へと変化した。一方、総士は人間だったが、同化された後、肉体を取り戻してフェストゥムに近い存在になったが、皮肉なことに島のコア、つまり乙姫に近い状態になってしまった。

 エメリーによると総士は一度フェストゥムの世界へ行った結果、「フェストゥムにとって抜くことのできない棘」(※3)であり「彼らに痛みを与え続けるため、この世に居続ける」(※4)存在になってしまったが、総士自身は「僕は人間として生き、命を終える」(※5)ことを望んだ。

エメリー「あなたの祝福が、そうであることを祈ります」
『EXODUS』14話

 エメリーは総士が自身の望みをかなえるためには祝福が必要だと告げたが、フェストゥムに近い存在になってしまった総士が、島のコアと同じように人のように命が終わる存在になるためには、祝福が必要ということになる。『EXODUS』における総士の祝福はわかりにくいのだが、『EXODUS』の第1クールの放送終了後に公開されたTVアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」 続編告知PV!の中にアニメでは使わなかった総士の台詞がある。

総士「祝福を果たそう。マークニヒト」

 この台詞を頭に入れた上で『EXODUS』26話で総士がベイグラントのコアの少年を祝福した後の台詞を読むと、憎んでいたニヒトとともに還ることを選んだ総士の心情が理解しやすくなる。

総士「これがたどり着いた未来。
   怖いかニヒト、僕もだ。
   存在が消える恐怖。
   痛みの根源か」

総士「還ったか、織姫。
   僕らも還ろう、命の源へ」
『EXODUS』26話

 また、総士の「人として命を終える」という望みは少し違う形でかなえられた。

織姫「消えた後もきっとあなたの命は続く」

織姫「もうひとつの島に新しいミールが根付く時、
   あなたとあなたの器が生まれ変わる」『EXODUS』22話

 つまり、島のコアである乙姫と同じく総士も循環する命を持つ存在になった。命を持つ者からフェストゥムに、あるいはフェストゥムから命を持つ者になるためには祝福が必要ということなのだろう。そういえば、スフィンクス型フェストゥムの来主操も祝福した結果、ボレアリオス・ミールのコアに転生した。

 

P.S. 『EXODUS』放送前の第三弾PVで台詞を見て、いろいろ先入観を持ってしまったことを反省し、TVアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」 続編告知PV!は見ないようにしていました。しかし、2015年5月24日に開催されたイベント「痛み」で開演前にこのPVを流していたので、音声だけは嫌というほど聞かされました。それでも台詞は覚えないようにしていたので、2クール目は1クール目のような先入観を持たずに見られました。

 

※1 『エッダー古代北欧歌謡集』(新潮社)から引用。

※2 『エッダー古代北欧歌謡集』(新潮社)から引用。

※3 『EXODUS』14話、エメリーの台詞

※4 『EXODUS』14話、エメリーの台詞

※5 『EXODUS』14話、総士の台詞

 


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