「蒼穹のファフナー THE BEYOND」特報の感想 Part5

 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」特報の感想 Part4の続きで、これが最後になります。イベント終了後、帰りの電車の中で書いたメモの内容がPart5の「美羽とこそうし」と「人間とフェストゥムが共存する世界」になりました。

 

・美羽とこそうし

 竜宮島では人工的にフェストゥムの因子を持つ人間を作り出したが、フェストゥムが地球上に現れ、人間と戦い始めた2118年からフェストゥムの因子は世界中にばらまかれていた。その結果、地球上の生物はフェストゥムの因子に感染し、竜宮島の子どもたちと同じような特殊な力を持つ人間が生まれていた。2151年の時点でフェストゥムの因子に感染した人間が20億人に対して、感染しない人間は5万人(※1)と少数であるため、フェストゥムの因子に感染した人間だけになるのは時間の問題だった。しかし、新国連事務総長のヘスターは地球上にこれまでの人間、すなわちフェストゥムの因子に感染しない人間だけが存在することを望んだ。そのため、人類軍のファフナーのパイロットにはマカベ因子という名のフェストゥムの因子を投与し、人為的にパイロットの寿命を縮め(※2)、パイロットを使い捨てた。そう、フェストゥムの因子に感染した人間を減らすかのように。一方、フェストゥムは対話を試みる竜宮島の住人の努力により人間について学ばされた結果、人間に近づきつつあった。そんな中、アザゼル型は地球に新たなるミール、アルタイルを呼び寄せた(※3)。新たなるミールは地球に人類とフェストゥムが出会う前の状態に戻す可能性をもたらした。ヘスターとベイグラントはともに人類とフェストゥムが出会う前に戻ることを望んでいたが、この二者はエスペラントの抹殺と竜宮島の消滅という最初の目的が一致したため、ベイグラントはヘスターに支配されているふりをして協力した。しかし、エスペラントは新国連(ヘスター)とアザゼル型フェストゥム双方が同じ考えを持っていることを知っていた。

エメリー「対話の力を持つものすべて、世界から消そうとしているの」
『EXODUS』5話

 世界で美羽だけが持っている能力こそ、人類とフェストゥムの共存が実現するための鍵ゆえに、ナレイン将軍、エメリー、そして、美羽の母であり、アショーカの力で生きていた弓子は世界最高のエスペラントであり希望である美羽をとなんとしても守ろうとした。

 

 フェストゥムは地球上に現れた時から自分たちの世界と人間の世界を見ることができたが、人類に見えるのは自分たちの世界だけであり、フェストゥムの世界を見ることはできなかった。総士は同化されてフェストゥムの無の世界に行った後、再び肉体を取り戻してこの世に帰ってきたが、それは初めてフェストゥムの世界に行って帰ってきた人間ということを意味していた。しかし、一期のイドゥンとミョルニアの会話からも明らかなように、フェストゥムの世界は人間に理解できるものではなく、総士は自分が体験したことを言語化できなかった。

総士「僕も何度も報告書を書こうとしたがダメだった」
『EXODUS』14話

 しかし、美羽は竜宮島の記憶、つまりフェストゥムの世界を見ることができた。

弓子「美羽は島の大気になったミールの中で生まれ育ったの。
   あの子の血の中には島の大気と同じものが流れているわ。
   だから、島の記憶の一部を見ることができる」
ドラマCD『THE FOLLOWER』(※4

 つまりエスペラントがなんとしても守ろうとしていた美羽は、フェストゥムの因子を持つ人間がいずれたどり着くであろう未来-フェストゥムの世界を見ることのできる人間-を提示する存在だった。しかし、美羽ですら通過点に過ぎず、最終的に人間がたどり着く先を示すのは、人間でありながらフェストゥムに育てられたことでフェストゥムの世界を完全に理解し、人間に言葉で説明することのできるこそうしということになるのだろう。

 

・人間とフェストゥムが共存する世界

総士「彼女がシステムを通して
   島の出来事をすべて記憶しているのは周知のとおりです」
一期18話

 竜宮島のコアは竜宮島で生きている人々を見続け、その出来事をすべて記憶している。二代目の竜宮島のコアである織姫は未来を見ることができたので、目の前にある今と未来を見ていたということになる。

弓子「美羽は島の大気になったミールの中で生まれ育ったの。
   あの子の血の中には島の大気と同じものが流れているわ。
   だから、島の記憶の一部を見ることができる」
ドラマCD『THE FOLLOWER』(※5

 一方、竜宮島のコアとは異なり、美羽は竜宮島の記憶、すなわち過去を見ることができた。ドラマCD『THE FOLLOWER』で美羽は死んだはずの父、道生と会話をし、助言さえ受けている。つまり美羽は竜宮島の記憶を通して死者と会話をしていたということになる。また、アショーカの力でこの世に存在し続けていた弓子も道生と会話をしていることから、竜宮島のミールが島の出来事を記憶し続けた結果、ミールの中にはおそらく不老不死の死者の国が生まれてしまったのだろう。美羽は竜宮島の記憶の一部しか見られなかったが、こそうしは竜宮島の記憶の中、つまり死者の国で育ったことから、おそらく竜宮島の記憶をすべて見ることができるのだろう。

 

 乙姫と総士は同じ親を持つ兄妹でありながら、総士は人間、乙姫はフェストゥムという別の世界に所属する存在となり、同じ竜宮島にいながら別の世界に生きていた。竜宮島のコアでありフェストゥムでもある乙姫は、竜宮島の生者の世界-人間の世界-で生きることを選び、その経験を竜宮島のミールと北極ミールに伝えた。

 一方、竜宮島のミールを移植された総士は子供の頃、人間とフェストゥムの間をさまよっていた。一騎とともにいなくなる、つまりフェストゥムとして生きること※6)を望んだが、一騎に拒否された。だが、一騎に拒否されたことで、総士はフェストゥムではなく、人間として生きることを選んだ。人間として生きることを選んだ総士の子であるこそうしは、フェストゥムに連れ去られ、竜宮島の死者の世界-フェストゥムの世界-で育った。成長した後、人間の世界に戻ってきたこそうしは乙姫のように竜宮島の住人にフェストゥムの世界で暮らした時の経験を伝えることになるのだろう。

 フェストゥムの因子を移植された者を親に持つ竜宮島の子どもは、いずれ美羽のように島の記憶を見ることができるようになり、数世代後の竜宮島の住人は全員、人間として生きていながら、フェストゥムの世界、つまり死後の世界を見ることができるようになるのではないだろうか(※7)。竜宮島のように人間とフェストゥムの世界が重なって存在し、そこに住む人間とフェストゥムが自分の世界と相手の世界に自由自在に出入りできるようになった姿こそ、人類とフェストゥムの共存が実現した世界ということになるのかもしれない。

 

 以下は2枚のドラマCDについての個人的な感想。

・『THE FOLLOWER』~BEYONDの序章~

乙姫「もし戦いばかりの世界を悲しいと思うなら
   悲しさを消す一番の方法は何だと思う」
史彦「フェストゥムに我々の悲しみを理解させることだ」
乙姫「そう、真壁紅音が世界で最初に考えついた、簡単でとても難しい方法」
一期22話

 最初にフェストゥムに人間の気持ちを伝えようとしたのは真壁紅音だった。

織姫「皆城乙姫にはみんなの心を読んで
   島のミールと敵の両方に伝える力があった」
『EXODUS』6話

 乙姫は真壁紅音の意志を継ぎ、フェストゥムに人間の気持ちを伝えていた。

史彦「日野美羽はごく自然に身につけた。
   親の言葉を覚えるように。
   そして皆城乙姫でさえ成し得なかった影響力を発揮した」
『HEAVEN AND EARTH』

 フェストゥムの因子を移植された両親から生まれた美羽は乙姫よりもフェストゥムに自分の気持を伝えることができた。新たなるミール、アルタイルが到来することから、『EXODUS』では美羽のフェストゥムとの対話能力が重要視された。事実、『EXODUS』作中でも冲方丁による「作品コンセプト キャラクター概要 主要キーワード」(※8)でも、美羽とエスペラントの説明で強調されているのは “対話” という言葉だった。

織姫「美羽がミールにわたしの声を届けてる。
   島で眠らせるために」
『EXODUS』26話

 しかし、アルタイルが地球に到達し、竜宮島に呼び寄せた時、美羽のミールやフェストゥムと対話できるという力はほぼ役割を終えた。ドラマCD『THE FOLLOWER』では、島の記憶(の一部)を見ることができるという美羽の別の力が描かれたが、あくまで『EXODUS』7話を補足する内容であり、このドラマCDを聞かなくても物語を追うことはできた。ソフトを買う熱心なファン向けだったのは、『BEYOND』の内容を先取りしていたというのも一因ではないだろうか。

 

・『THE FOLLOWER2』

 『BEYOND』のPVで竜宮島のミールがいなくなった住人を記憶している世界というのが映像として表現されたので、ドラマCD『THE FOLLOWER2』で一騎が人として死を選んだ後、どういう状態になったのかが理解しやすくなった。

ミョルニア「眠りながら命を終えるだろう。
      お前の存在の記憶は我々とともに残る。
      かつてこの島に生きた者たちのように」
ドラマCD『THE FOLLOWER2』(※9

 ハバロフスクの戦闘の後、一騎が戦うことを拒否した場合、昏睡状態から目覚めることなく、一騎はいなくなった。その場合、一騎はこそうしの住んでいる島の住人になっていた。しかし、カノン、真矢、総士の選択により一騎には島との調和の道が開かれたが、その時も一騎には人として死ぬという選択肢を与えられた。

ミョルニア「また別の調和により戦う力を捨て、
      島の大気となって多くの記憶を司るだろう」
ドラマCD『THE FOLLOWER2』

 この場合、一騎はこそうしの住んでいる島の住人にはならなかった、もしくはなったとしてもすべてを知っているため、他の人とは違う存在になっているはずだ。

 もっとも一騎が戦う力を捨てた場合、総士は転生するという未来を手に入れられなかった可能性が高い。一騎と総士がこの世に肉体を持つ存在であれば、別々の場所に所属していても、その体を自分の意志で移動させることができるため、二人は一緒にいることができるだろう。しかし、一騎と総士がとも精神的な存在になってしまった場合、竜宮島の大気になった一騎とフェストゥムの中永遠に囚われた総士は今いる場所から動くことができないため、二人は再会することなく、永遠に離れたままになっていただろう。

 

 

・あとがき

あれ? 実は『EXODUS』の時点でヘスターは劣勢だったんじゃない?
『EXODUS』を見ている時は新国連の方が優勢だと思っていたんだけどなあ。

 書いている途中でこのことに気がついてしまい、価値観がひっくり返りました。ヘスターは地球上の生物がフェストゥム因子に感染していることを知った時、もはや人類が変化することは避けられないことを悟ったのではないだろうか。そう、大昔、地球にやってきた超古代ミールが類人猿と融合したことにより、人類が生まれたように(※10)。事実、フェストゥム因子に感染した人間が20億人いるのに対し、感染しない人間が5万人(※11)では従来の人類という種に勝ち目はない。結局、ヘスターのやっていることは最後のあがきであり、北極ミールの到来時からやり直すことのできるアルタイルにすべてを賭けたのではないだろうか。しかし、宇宙から新たなミールを呼び寄せたのはアザゼル型であり、人類を同化することを望んでいるため、竜宮島が目指すフェストゥムとの共存を実現した方が人類という種が生き残る可能性は高そうだ。

 

P.S. いろいろ書きましたが、普段、小説を読むときは文庫の裏表紙にある内容紹介を読まないので、当然、フィクションは基本的に事前情報ゼロで見たいタイプの人間です。当然、『BEYOND』もPVを一切見ずに本編を見るのが理想ですが、リアルタイムで見るには情報を追う必要があり、情報にはネタバレはつきもの。実際、『EXODUS』の1クール放送後にネットで公開された続編告知PV!を見なかったのにもかかわらず、開演前のイベント会場で流れていて、公式からネタバレを食らいました。というわけで、やむなく公開された映像もリアルタイムで追っているという状態です。『BEYOND』は劇場先行上映という形になったので、基本的な設定を事前に知っている方が理解しやすそうですが、映像を見て「!?」となる感覚を味わいたかった。

 

※1 『EXODUS』23話でバーンズが以下のように説明している。

バーンズ「本当の目的はフェストゥム因子の消滅と
     因子に感染しない特異体質者の選別だ」
  溝口「そんな人間がいるのか」
バーンズ「5万人ほどな。
     第4プラン、赤い靴作戦。
     選ばれた5万人を生かすため、残り20億人の人類を敵と共倒れさせる」

※2 『EXODUS』3話で総士は「彼らの年齢で染色体変化と同化現象を受けたなら、20代の終わりまで命が持たない。それが彼らの生存限界だ」と言っている。

※3 『蒼穹のファフナー EXODUS Blu-ray BOX』のブックレットの冲方丁「作品コンセプト キャラクター概要 主要キーワード」の中でアルタイルは以下のように説明されている。

【新たなるミール 通称】アルタイル
アルタイルと名付けられた未知のミール。宇宙を漂流するミールたちの一つで、アザゼル型の呼びかけによって地球に到来した。

※4 『EXODUS』のDVD/BDの4巻に同梱。『EXODUS』のBD-BOXには未収録。

※5 『EXODUS』のDVD/BDの4巻に同梱。『EXODUS』のBD-BOXには未収録。

※6 ミールはフェストゥムが同化した人間の記憶を保存するようになった結果、同化された人間がフェストゥムの世界に存在していることが判明したので、ここではあえて「フェストゥムとして生きる」と表現した。感のいい人間ならミールが持っている人間の記憶に人の気配を感じることができる。『EXODUS』3話で封印したニヒトの元を訪れた小楯保は「大勢に囲まれてる気分だ」とこぼし、『EXODUS』7話でニヒトを起動させようとした総士「静まれ、亡霊ども」と叫んでいた。ニヒトには分割された瀬戸内海ミールの一つ、蓬莱島のコアが眠っている。

※7 竜宮島の外の世界に住む人間の多くがフェストゥム因子に感染しているため、その子孫は美羽と同じような能力を有する可能性が高い。

※8 『蒼穹のファフナー EXODUS Blu-ray BOX』のブックレットに掲載されている。

※9 『EXODUS』のDVD/BDの11巻に同梱。『EXODUS』のBD-BOXには未収録。

※10 『蒼穹のファフナー EXODUS』公式サイト内、SPECIAL/CHRONOGYの2019年の項を参照。

※11 『EXODUS』23話のバーンズの台詞。

バーンズ「選ばれた5万人を生かすため、残り20億人の人類を敵と共倒れさせる」

 


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