「蒼穹のファフナー THE BEYOND」特報の感想 Part4

 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」特報の感想 Part3の続きになります。書いた順に並べてあります。先週後半、夏バテで体調を崩してしまったので、公開が遅くなりました。

 

・無線機-島と外をつなぐもの-

 一期1話のアバンに描かれているが、衛の修理した無線機で子どもたちが「あなたはそこにいますか」というフェストゥムの声を受信して、フェストゥムに竜宮島の位置を知られてしまったところから物語の始まりが始まる(※1)。

 竜宮島にフェストゥムを招き入れた無線機が特報の中にも出てくる。(特報の0:08

美羽「私たちみんな、あなたを探し続けたんだよ」
『THE BEYOND』ティザーPV

 美羽のこの台詞から一期とは逆に『THE BEYOND』でこそうしたちがアルヴィスのこそうしを探すを呼びかけを受信したことで、アルヴィスはこそうしの居場所を知ったのではないだろうか。

 一期で竜宮島にフェストゥムが攻め入ったのは、無線機でフェストゥムの声を受信したら9年後(※2)だった。冲方丁の書いたノベライズでは始業式の日、フェストゥムの襲来が近いことを知っている総士が5年ぶりに一騎に声を掛け、放課後、ファフナーを見せようとした。しかし、ファフナーを見せる前にフェストゥムが襲来してしまった。つまり、一騎が世界の真実を知る前にフェストゥムが攻撃が始まってしまった。しかし、『THE BEYOND』では特報の中に一騎の「お前に真実を見せよう」という言葉の後、こそうしがゴルディアス結晶を見ているシーンがあることから、アルヴィスがこそうしのいる島を攻撃したのは一期とは逆に、こそうしがフェストゥムの視点による世界の真実を知った後なのかもしれない。

 

・灯籠と提灯

 竜宮島ではお盆に灯籠流しを行っていた。(『EXODUS』17話)

 

 一方、こそうしのいる島では空に向かって提灯を飛ばしていた。(特報の0:05~0:06

 灯籠流しにはお盆に帰ってきた死者を普段いる場所に送り返すという意味が込められているが、空に向かって提灯を飛ばすという行為にはどんな意味が込められているのだろうか。

 

 『EXODUS』14話のEDは雲の上、中学校の放送室、教室、教室にある「希望」の文字、喫茶楽園、川面に落ちる1匹の蛍、堂間食堂、そして、最後に上空から竜宮島を見るというカットで構成されていた。

 竜宮島から遠いダッカ近郊で殺された広登の魂が故郷に帰ってきて、思い出の場所をめぐり、自宅に立ち寄った後、天に召される様子を描いた映像である。竜宮島で天に召されるということは、その人の記憶がミールの元に行ったことを意味する。つまり、天を上った先にあるのがこそうしのいる島、つまりフェストゥムの世界ということになる。それ故、新たな住人(死者)を迎え入れるために、こそうしのいる島では道を示すかのように提灯を飛ばすのではないだろうか。竜宮島の灯篭流しは死者を送る悲しい行事だが、こそうしのいる島では新たな住人の到来を願う喜ばしい行事なのかもしれない。

 竜宮島では人間が灯籠を海に流し、こそうしのいる島ではフェストゥムが提灯を空に飛ばしているが、光を送っている場所はそれぞれが生まれた場所(地球の命は海で生まれ、新しいフェストゥムを生み出すミールとは空、つまり宇宙からやってくる)でもある。

 

・一期と『HEAVEN AND EARTH』、『THE BEYOND』と『EXODUS』

 一期の最後の戦闘は蒼穹作戦-アルヴィスによる皆城総士の奪還-だったが、『THE BEYOND』では一期とは対照的に第5次蒼穹作戦-アルヴィスによるこそうしの奪還-が最初の戦闘になるはずである。一期から『EXODUS』まではフェストゥムが竜宮島を攻撃するところから物語が始まったが、『THE BEYOND』では初めてアルヴィスが敵に攻め込むところから物語が始まる。以下に前史、一期、『HEAVEN AND EARTH』、『EXODUS』の物語の起点となった戦闘の構図をまとめた。

2114年: フェストゥム人類を攻撃
2118年: 人類軍日本を核攻撃
一期1話: フェストゥム竜宮島を攻撃
HAE: 人類軍が北極のフェストゥムを攻撃
HAE: フェストゥム竜宮島を攻撃
EXODUS 1話: フェストゥム竜宮島を攻撃

 一期の完結編として制作されたのが『HEAVEN AND EARTH』だったが、冲方丁が脚本にかかわらなかった部分を冲方自身の手で書き直すかのように、『HEAVEN AND EARTH』の物語はフェストゥムの襲来後に島を移動(一期4話)、新人パイロットの模擬戦(一期7話)など、一期の展開をなぞりつつ始まった。それは『EXODUS』でも引き継がれ、『HEAVEN AND EARTH』では使われなかった竜宮島の最初の戦闘(一期1話)とパイロットの親への通知(一期4話)が冲方丁の手で書き直されていた。『THE BEYOND』では一騎と総士の立場が入れ替わり、こそうしが一期の一騎と同じような状況下に置かれ、一期と対になるような状態になっている。しかし、『HEAVEN AND EARTH』は一期の続き且つ完結編だった。そして、『THE BEYOND』は『EXODUS』の続きであることから、『THE BEYOND』は『HEAVEN AND EARTH』と同じ位置にいると考えられる。そして、『EXODUS』で描かれた最初の戦闘は竜宮島ではなく、アバンで描かれた人類軍のハワイ防衛戦だった。PVで公開された情報から『THE BEYOND』のこそうしのいる島での戦闘は『EXODUS』のハワイ防衛戦と同じ構図になるはずである。

EXODUS 1話: フェストゥムハワイ基地を攻撃)
 人類軍フェストゥムを攻撃
 人類軍人間がいることを知っていたが、
 交戦規定アルファを発令しフェストゥム人間を攻撃
BEYOND: フェストゥム海神島からこそうしを奪う)
 アルヴィスフェストゥムを攻撃
 アルヴィス竜宮島の死者がいることを知らなかった
 結果的にアルヴィスフェストゥム竜宮島の死者を攻撃

 しかし、人類軍とアルヴィスの作戦の目的は殲滅と救出と正反対であり、PVで提示された内容から対照的な結果になるのは明白である。

EXODUS 1話: 作戦=人類軍がフェストゥムを殲滅
結果=成功
BEYOND: 作戦=アルヴィスこそうしを救出
結果=失敗

 そういえば『THE BEYOND』特報の美羽の台詞は『EXODUS』1話でフェストゥムに同化された仲間を撃ってしまったアイの台詞と対照的になっている。

美羽「あたしに撃たせないで」
『THE BEYOND』特報

アイ「わたし、仲間を撃った、わたし」
『EXODUS』1話

 つまり第5次蒼穹作戦に参加したメンバーは『EXODUS』1話のハワイ防衛戦に参戦したモーガン隊と同じ経験をすることになるのではないだろうか。『EXODUS』1話のハワイ防衛戦で人類軍は民間人を攻撃したが、『THE BEYOND』でアルヴィスは視聴者がよく知る竜宮島の死者をも攻撃することになる。おそらく『EXODUS』の最初の戦闘はハワイ防衛戦よりも後味の悪いストーリー展開になるのだろう。

 ここまで書いた後、頭に浮かんだのはドラマCD『THE FOLLOWER2』の台詞だった。

ミツヒロ「だがそれは古きものを破壊する可能性をはらんでいる。
     これまで培われてきたすべてが失われるかもしれない」
ドラマCD『THE FOLLOWER2』(※3

 竜宮島が現状維持をした場合、竜宮島は滅ぶのを待つだけだった。そのため、総士、一騎、真矢、カノンの4人が竜宮島が変わることを選んだ。残念ながら、総士とカノンは選択後の世界を自分の目で見ることは叶わず、未来に希望を託していなくなった。

 

・逆転した世界

 『THE BEYOND』の物語開始時からとアルヴィスによる攻撃時にこそうしが置かれている状況は、一期1話と『HEAVEN AND EARTH』の冒頭の要素をひっくり返したものになっている。一部は疑問符付きだが、表にしてみた。

  一期 BEYOND
無線機 竜宮島の場所を知られる こうそしの居場所を知る
偽りの平和を享受 総士と蔵前以外の全員 こそうしのみ
 
  HAE BEYOND
夏祭りの時に敵襲来? 犠牲者0 こそうし以外は全員死亡?

 一期1話、『HEAVEN AND EARTH』の最初の戦闘、『EXODUS』1話に出てくる要素をすべて洗い出してひっくり返し、それを元にして『THE BEYOND』の物語を構築したのではないだろうか。

 

※1 無線機は一期1話のアバンでは線画で描かれたが、『EXODUS』の2クール目のOPで描き直されている。

   

 これを見ると一期1話と『THE BEYOND』の特報に出てきた無線機は同じものではないことがわかる。

※2 無線機でフェストゥムの呼びかけを受信したのが2137年で、一期1話で描かれたフェストゥムが竜宮島を最初に攻撃したのが2146年。
  『蒼穹のファフナー EXODUS』公式サイト内、SPECIAL/CHRONOGYを参照。

※3 『EXODUS』のDVD/BDの11巻に同梱。『EXODUS』のBD-BOXには未収録。

 


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