蒼穹のファフナー THE BEYOND 第1~3話の感想 Part3

 2019年6月8日に『THE BEYOND』第1~3話を2回見た後の感想です。この記事には『THE BEYOND』第1~3話のパンフレットの内容が含まれています。

 

・真矢と美羽

 『THE BEYOND』1話、美羽がロケットの発射台にたどり着いた時、すでにロケットは打ち上げられていた。美羽はルガーランスを構えたものの撃つことはできず、ただ上昇してくロケットを見送ることしかできなかった。この場面は『HEAVEN AND EARTH』でマークザインがマークニヒトと空を上っていき、ワームスフィアに飲まれて消える様子をただ見ていることしかできなかった真矢の姿と重なる。『HEAVEN AND EARTH』でボレアリオス・ミールが竜宮島に総攻撃を仕掛けた時、真矢は一騎を取り戻すことができたが、美羽が総士を取り戻したのは3年後だった。

 

・主人公グループの変化

 『EXODUS』までの主人公グループは一騎、総士、真矢の3人だったが、『THE BEYOND』では世代交代し、主人公グループは唯一残った一騎、こそうし、美羽の3人へと変化した。

 まず、一期と『THE BEYOND』の物語開始時点での一騎と総士(こそうし)の関係を比較してみた。

一騎と総士
    一騎 → 総士 左目を傷つけ、負い目がある
    総士 → 一騎 同化しようとした
一騎とこそうし
    一騎 → こそうし 島と家族を奪い、心を傷つけた
  こそうし → 一騎 島と家族を奪われ、殺したい

 一騎は一期も『THE BEYOND』も総士から何かしらを奪って傷つけた状態からスタート。一期で一騎は総士の顔に傷をつけ、視力を奪い、その結果、総士からファフナーパイロットの地位を奪った。『THE BEYOND』で一騎はこそうしの住んでいた島と乙姫を奪い、こそうしの心に傷を負わせた。

 それに対して、総士の一騎に対する感情は一期と『THE BEYOND』で友情から憎しみへとひっくり返っているが、一騎に向ける感情はどちらも “死” である。実は一騎から総士に向ける感情よりも総士から一騎に向ける感情の方が重いのである。

 次に総士と真矢(美羽)の関係を比較してみた。

総士と真矢
    総士 → 真矢 片思い
    真矢 → 総士 本音をぶつける
こそうしと美羽
  こそうし → 美羽 本音をぶつける
    美羽 → こそうし こそうしの気持ちに寄り添う

 一期と『THE BEYOND』では総士(こそうし)と真矢(美羽)の間で本音をぶつける相手が入れ替わっている。さらに真矢の総士に対する態度と美羽のこそうしに対する態度は正反対である。

 

・人質

 海神島のミールをベイグラントに送り届けるロケットにマリスとこそうしと島の子どもたちも乗っていたが、こそうしと島の子どもたちはアルヴィスにロケットを撃ち落とされないようにするための人質として使われた。こそうしはアルヴィスが竜宮島に帰るための「道しるべ」(※1)であるため、美羽はロケットを撃ち落とせなかった。

 

・目覚める前のこそうし

こそうし「明日から頑張ろうっと」
『THE BEYOND』2話

 こそうしは家事もやらず、生徒会のの会長でありながら仕事もサボるので、乙姫(フロロ)から「ダメ人間」と呼ばれていたが、この台詞から今すぐやらなければいけないことを先送りする性格だということがわかる。

 

・ゼロスタート

一騎「お前をいるべき場所に返す」
『THE BEYOND』2話

史彦「君の本当の生まれ故郷に戻す」
『THE BEYOND』3話

 マリスに奪われフェストゥムによって育てられたこそうしをアルヴィスが取り戻した後にできることはこそうしを生まれた場所、すなわちすべての始まりの場所に戻し、マークニヒトに乗せ、親である総士からのメッセージを聞かせることだった。こそうしがマークニヒトに乗った後、たとえこそうしがどのような行動を取ろうとも、アルヴィスはそれを受け入れる覚悟を持っていた。こそうしに対するアルヴィスの態度を見てこの台詞が頭に浮かんだ。

総士「ぼくはコアの言葉に従う。
   ずっとそうしてきたように」
『EXODUS』6話

 ルヴィ・カーマはこそうしを「道しるべ」(※2)と呼んでいたが、竜宮島もコアも存在しない今のアルヴィスにとって、こそうしこそが従うべき島のコアと同等の存在ということなのだろう。

 

・見よう見まね

ディラン「これに乗り
     指輪に手を通せば
     声が聞こえるはず」
『THE BEYOND』3話

 こそうしは『THE BEYOND』2話~3話で一騎と一緒にファフナーのコックピットに乗り、すぐそばで一騎が戦う様子を見ていたので、これだけの説明でファフナーに搭乗することができた。

 

・死者の記憶

 『THE BEYOND』でキーとなるファフナーはオリジナルのパイロットが亡くなっている機体だと思われる。竜宮島とベノン側が所有するオリジナルのパイロットが亡くなっている機体は以下の通りである。

・竜宮島

マークニヒト
パイロット:皆城総士(こそうし)
テストパイロットの刈谷由紀恵はイドゥンに同化されていなくなった。
マスター型フェストゥムのイドゥンの行方は明確にされてない。
スフィンクス型フェストゥムの来主操は人類の火を止めていなくなった。
皆城総士は同化されていなくなった。

マークドライツェン改クロノス
パイロット:来主操(ボリアリオスのコア)
オリジナルの機体のパイロットの羽佐間カノンは同化されていなくなった。

マークツェーン改アキレス
パイロット:真壁一騎
オリジナルの機体のパイロットの西尾暉は同化されていなくなった。

 

・ベノン

マークレゾン
パイロット:ジョナサン・ミツヒロ・バートランド?
マークレゾンは人類軍は鹵獲したマークフュンフの機体を新国連がベースに開発した(※3)。
オリジナルの機体のパイロットの小楯衛はワームスフィアに巻き込まれて死亡。
『HEAVEN AND EARTH』で再建された機体のパイロットの堂馬広登は人類軍に狙撃されて死亡。
マークレゾンのテストパイロットだった遠見真矢は生存。

マークアイン改スペクター
パイロット:レガート
オリジナルのマークアインのパイロットだった皆城総士は同化されていなくなった。
オリジナルのマークアインのパイロットだった日野道生は自ら起動したフェンリルにより死亡。

マークツヴァイ改グリムリーパー
パイロット:マリス・エクセルシア
オリジナルのマークツヴァイのパイロットである蔵前果林はバーンツヴェックで移動中、ワームスフィアに巻き込まれて死亡。
マークエルフは初戦でその機体の大半を失ったため、マークツヴァイのパーツを使って補修した。マークエルフは後に人類軍に鹵獲された。

 

 新国連はこれまでに3機のザルヴァートルモデルを開発したが、マークニヒトとマークレゾンはこれまでに犠牲になった人とフェストゥムの数が際立っている。その一方、マークザインは最初のパイロットである一騎が生存しているため、一人も犠牲になっていない。

 

 竜宮島側のマークドライツェンとマークツェーンは前パイロットは全員、同化されていなくなったため、エインヘリアル・モデルに改修された後、別のパイロットが搭乗している。一方、ベノン側のファフナーの前のパイロットは人間やフェストゥムの攻撃で亡くなっている。アルヴィスから奪ったマークアイン、マークツヴァイ共に機体は失われているため、再建された。

 

 来主操の乗るマークドライツェン改クロノスの「クロノス」は古代ギリシャ語で χρόνος(ラテン文字転記:chrónos)と綴り、”時、時間” を意味している(※4)。一方、マリスが乗っていたマークツヴァイ改グリムリーパーの「グリムリーパー」は以下のような意味を持っている。

Grimreaper:死神(鎌で人間の時間を刈り取るとされる)
『ウィスダム英和辞典』第3版

 「グリムリーパー」は真壁紅音という人間がフェストゥムにもたらした時間(※5)を否定する存在ということになる。

 

・兄弟姉妹

 こそうしの妹である乙姫が需要な存在であったことから、『THE BEYOND』では兄弟姉妹でいなくなった人がいるパイロットが重要なポイントになるのではないだろうか。

 『THE BEYOND』1話でセレノアが直接、クロッシングしたのは『EXODUS』で弟の暉を失った里奈と『EXODUS』で姉の弓子を失った真矢の二人である。里奈のSDPの新同化現象は過眠だが、戦闘時に能力を使いすぎると一騎と甲洋は眠りに入る(※6)。また、里奈は眠っている時、竜宮島のミールとクロッシング状態になることができた。マリスが美羽の記憶から形成されたセレノアは真矢の姉、弓子の姿をしている。

 

・蒼穹のファフナー THE BEYOND 第3話「運命の器」/竜宮島の人々 の補足

こそうしの目の前に現れた竜宮島の人々は美羽を除いてフェストゥムに見えるように描かれていた。
蒼穹のファフナー THE BEYOND 第3話「運命の器」/竜宮島の人々

 一騎がこそうしを眠らせた後、偽りの竜宮島を破壊し終わった甲洋と来主操がボレアリオスの甲板に飛んできた。この場面でもこそうしの目の前で美羽以外の竜宮島の人間がフェストゥムの能力を使う一方、一騎以外のエレメントはこそうしの目の前ではフェストゥムの能力を使わず、人間として振る舞うという描写が徹底されていた。

 

・甲洋の内的ヴィジョン

 『THE BEYOND』で甲洋が乗っていたファフナーの機体名はマークフィア改アバドンとなっていが、アバドンという言葉は『ヨハネの黙示録』の中に見い出すことができる。

この蝗に王あり、底なき所の便にて、名をヘブル語にてアバドンと云い、ギリシヤ語にてアポルオンと云う。
『ヨハネの黙示録』9:11(※7

 この文章を読んで思い出したのが、ファフナーに乗る前に行ったメディテーション訓練の海だった。

甲洋「これって海の底か。
   息ができる。
   これが仮想現実の海。
   まぶしいくらいに明るい。
   なのに、なんなんだ。
   この冷たさ。
   氷。
   上の方はどこも氷で覆われてる」
ドラマCD『STAND BY ME』

 甲洋の内的ヴィジョンは上が氷に覆われているため、自分の力では脱出するのは不可能な海の底だった。

 

 

※1 『THE BEYOND』3話でルヴィ・カーマが「道しるべ」と表現していた。

※2 『THE BEYOND』3話のルヴィ・カーマの台詞。

※3 『EXODUS』でマークレゾンの開発状況について語られていた。

ヘスター「ザルヴァートル・モデルは」
 シモン「回収した機体をベースに完成目前」
『EXODUS』21話

ヘスター「ザルヴァートル・モデル、マークレゾン。
     あなたはそのテスト・パイロットになることで、あなたは罪を免れる。
     誠実で勇敢な人類軍兵士に死をもたらした罪を」
  真矢「マークフュンフを使ったの」
『EXODUS』22話

※4 『ギリシャ語辞典』(大学書林)から引用。

※5 一期24話、ミョルニアの台詞を参照。

ミョルニア「いや、多数の因子が彼女に共鳴することで
      我々の中にある種の時間が生まれたのだ。
      時間は我々にとって世界を形成する重力の一つにすぎない。
      だが、真壁紅音だった存在は多くのコアたちと共鳴し、
      我々の中で時間軸を絶対とする場を形成してしまった」

※6 『THE BEYOND』第1~3話のパンフレットを参照。

※7 『新約聖書(文庫訳)』(日本聖書協会)より引用。