abemaTVでEXODUSを配信 その3

 2016年9月29日から10月18日までabemaTVで『EXODUS』が配信されましたが、これは10月18日、19日の配信分、23話~25話までのメモです。分量が多くなってしまったので、26話と全話見終わった後の感想は別記事にしました。やはり物語終盤の密度と情報量は半端ない。

 

第23話「理由なき力」

 総士は9話、ニヒトを使ってフェストゥムを同化していたが、この23話では生身でパペットを同化した。まずファフナーに乗っている時に敵を同化し、次に素手でやるという順序になっているが、真矢がすでにこの流れで人を殺めていた。(真矢は15話でファフナーを使って爆撃機を落とし、18話では一騎を狙った人類軍の刺客を銃で殺害した)総士の生身での同化能力はおそらく『HEAVEN AND EARTH』で帰還した時から持っていたと思われるが、ここまでその力を見せることはなかった。時期列的には真矢を取り戻すために新国連の基地に行く前に位置するドラマCD『THE FOLLOWER2』で総士が大きな決断を下した後だからこそ(※1)、必要とあらばためらうことなくフェストゥムの力を使ったように見受けられる。このシーンでの総士は両目と両手が金色に変化している。

 

第24話「第三アルヴィス」

 『HEAVEN AND EARTH』で「空がきれい」だと思ったスフィンクス型フェストゥムの操が生まれたことにより、フェストゥムは心を理解した。

グレゴリ型「あいつらはたくさんの心を作っては消した」
『EXODUS』22話

   総士「同化された者の亡霊か」
『EXODUS』23話

 それと同時に第三アルヴィスの瀬戸内海ミールを使って新国連が作ったパペットにも心が生まれた。ただし、総士の言葉から想像するに、シモンは同化した人の記憶を元に作られたパペットだったのかもしれない。一方、アショーカはエスペラントの望みをかなえるべく、いなくなった人の記憶を元にエメリーと弓子を作った。新国連のパペットもアショーカの作ったエメリーと弓子も人が作られた存在だと見抜くのは困難なので(真矢と総士が弓子には違和感を感じていたが)、ほとんど人と同じような存在なのではないだろうか。新国連の作ったパペットは所詮は使い捨ての道具。不要になると心は消された。一方、アショーカの作ったエメリーと弓子は役割を終えるとその存在は消滅したが、エメリーの記憶はアショーカに、弓子の記憶は竜宮島に残った。(※2

 

 羽原監督がラストシーンの音楽を「楔」にしようと考えていたとツイートしていたので、試してみた。「楔」だと暉の感情に寄り添った音楽であまりにも悲痛すぎる。「命」にして正解だったと思う。

 

第25話「蒼穹作戦」

 ビリー「ミツヒロ、アイ」
ミツヒロ「復讐の機会を与えてやる、キース」
 ビリー「なに? どういうこと」
  アイ「真矢の銃よ。
     仇を討ちなさい、ビリー」
 ビリー「あっ」

 25話は対話シーンでのレイアウトが印象にカットがいくつかあるのですが、このシーンもその一つ。ビリーはドアが開いた瞬間「ミツヒロ」と呼びかけるのですが、ビリーの目の前に立つのはアイ。

 ビリーが呼びかけたミツヒロはキースの顔を見て話すのみ。このシーンでミツヒロはビリーと顔を合わすことも言葉を交わすこともなかった。ビリーはアイから真矢の銃を受け取った後、仇という言葉で頭がいっぱいになり、ミツヒロのことは頭の中から消えた。コアの少年によってミツヒロの記憶が消された後だが、わずかに残ったミツヒロの心がビリーとは顔を合わすことを拒んだのだろうか。

 

 輸送機から下りた総士は一騎を見た時、一瞬驚いた後にほほえむが、初見時、ほほえみの意味がわからなかった。総士は一騎を見た瞬間、島の祝福を受けたことを見抜いた。それは総士がいなくなった後も一騎が存在し続けることを意味し、嬉しくなったので思わずほほえんだということなのだろう。

 『EXODUS』の物語開始時、総士は自分自身の余命は短く、いずれいなくなることは受け入れていたが、一騎がいなくなるということは真矢と同じようにおそらく受け入れられなかった。一期では一騎と総士が真矢にファフナーには乗ってほしくないと思っていたが(※3)、『EXODUS』では総士と真矢が一騎にいなくなってほしくないと思っていた。

総士「一騎とは話したのか」
真矢「行きたがってるからダメって言っちゃった」
総士「君に言われれば諦める」
『EXODUS』5話

 一期では不仲だった総士と真矢だが、『EXODUS』では一騎に対する気持ちが一致しているので、関係はうまくいっている。 しかし、総士と真矢の考えは異なっていた。真矢は一騎が戦わなければ島で静かに人生を全うできると考え、一騎がザインに乗る必要のない状態を作り出すために行動していた。一方、総士はなによりも島を守ることが最優先だった。そのため、島を守るためにはザイン使う覚悟を持っていた。

 総士「ニヒトを始末すれば、ザインの共鳴も止まって乗れるようになる」
カノン「ザインの処分は決定事項だぞ」
 総士「本来は、温存すべき最強の機体だ」
『EXODUS』4話

 総士は島のコアの命令に従う存在(※4)であるため、織姫から「総士、一騎、今すぐ美羽を守りに行きなさい」と言われた時、一騎の「行くよ、俺も」、「お前が行くなら、俺も行く」(※5)という言葉を否定することなく受け入れた。『EXODUS』開始時点、総士と真矢の間では「一騎をザインに乗せない」という考えで一致していた。それにかかわらず、真矢の不在時に一騎がザインに乗ることを選んだため、総士はシュリーナガルで再会した真矢から「なんで、一騎君を止めなかったの」(※6)と責められることになった。

 

 一期から総士の最優先事項は妹が一体化してしまった島を守ることだった。総士は同級生には島を守るために命を使わせないようにしていたが、必要とあらば自分の命を使って島を守る行動に出たかもしれないと思わせる雰囲気が、一期の総士からは感じられる。(※7

史彦「ただあいつの場合、君という存在が近くにいることで、
   精神を安定させていたんだろう」
総士「安定したがっていたのは僕の方です」
一期12話

 この台詞からわかるように総士は自分自身が一騎に依存していることを自覚していた。その一方で、総士の言葉の前にある真壁司令の言葉からわかるように、一騎も自身の存在価値を総士に依存していた。一騎は総士がいないとこの世からいなくなってしまうことを総士は知っているため、一期でも『EXODUS』でも総士は一騎に帰ってくると約束した。

 

※1 ドラマCD『THE FOLLOWER2』で総士はこう言っている。

総士「ただ閉じこもり、自ら対話の道を拒むと言うなら、
   今の僕はその選択を、この島のあり方を否定する」

※2 ドラマCD『THE FOLLOWER』で道生と弓子の会話から引用。

道生「日野道生とお前の記憶は一つになって島で生き続ける」
弓子「今はまだ美羽のそばにいるわ。
   私の心も最後の欠片が消えるまで」
道生「そっか。島で待ってるよ、弓子」
弓子「ええ、島で会いましょう」

※3 ドラマCD『NOW HERE』を参照。

※4 『EXODUS』6話で総士は「ぼくはコアの言葉に従う。ずっとそうしてきたように」と言っている。

※5 織姫と一騎の台詞は『EXODUS』6話から引用。

※6 『EXODUS』10話。

※7 一期16話の「たとえ強いられた運命であっても、自分の意思で選び直せというのか、乙姫」という総士の台詞ににじみ出ている。私は一期の時、総士を神話に登場する運命に殉ずるキャラクターと重ねていた。

 


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