abemaTVでEXODUSを配信 その2

 2016年9月29日から10月18日までabemaTVで『EXODUS』が配信されましたが、これは10月11日から10月14日までの配信分、15話~22話までのメモです。

 

 14話の放送の後、『EXODUS』1巻のDVD/BDに収録されている1話の長尺版を視聴。9話は1話Aパートと対称的になっている部分が多いので、長尺版を見ないと人類軍側の事情がわかりにくいことを再認識。ハワイでダスティンが率いた部隊の生き残りがこの戦闘の後、アルゴス小隊にダスティンとキース、ペルセウス中隊にアイ、ビリー、ミツヒロという形で分裂。いわば一期ラストでマークザインが砕いた北極ミールの欠片から多様な考え方を持つフェストゥムが生まれたのと同じことが、人類軍内部でも起きたということである。ダスティンの部隊に起こったことはTV放映版を見ただけではわかりにくいが、『EXODUS』の後半を理解するためには重要なポイントである。

 

第15話「交戦規定アルファ」

  ビリー「立って暉、早く逃げて!」
ダスティン「ビリー、来い、ビリー」

ダスティン「来るんだ、ビリー」
  ビリー「兄さん、なんで」
     (中略)
 ミツヒロ「逃げろ、ビリー」
ダスティン「邪魔をするな」

 カマル司令の言葉から後方部隊に回したはずのビリーがペルセウス中隊にいると知らされたダスティンは戦場で弟、ビリーと出会い、連れて帰ろうとする。しかし、最初は暉が、次にミツヒロがダスティンを攻撃したため、ビリーを連れ出すことに失敗した。

 ダスティンは一度ビリーの手を掴んでいるので、ミツヒロが間に入らなかった場合、ビリーは兄、ダスティンの手を拒むことなく、ダスティンと一緒に戦場を去ったと思う。『EXODUS』21話~22話でビリーは戦場で再び兄、ダスティンと会うが、この時はビリーを引き止める人がいないため、ダスティンはビリーを連行していった。フェストゥムと戦っていただけの時代ならビリーのような考えでも問題ないが、状況は変化し、人類軍でさえ一枚岩ではない。親しい戦友がある日突然、敵になるということも起こりうる状況になってしまったので、戦いにおいて自分なりの信念を持たない人間が生きていくのは難しい時代になった。

 

 視聴者の憎しみがアルゴス小隊へ向けられるようになっているので、「竜宮島部隊とペルセウス中隊が人類軍を攻撃したらどうなるのか?」ということを視聴者に考えさせる作りになっている。それため、視聴者の視線は人を助けるために爆撃機を攻撃してしまった真矢に向く。

 

第16話「命の行方」

 芹「先生たち、あたしの健康心配しているの。
   ケガをしたり病気になったら、
   たぶん、周りの命を同化して生きようとするって」
織姫「どんな命も他の命を奪って生きてるわ」

 『仮面ライダーアマゾンズ』の水澤悠の台詞「だって、生きるのは、他の誰かを食べるってことだよ」(シーズン1、13話)を思い出した。

 

 元人類軍のファフナー・パイロットだったオルガの死は17話のカノンの命の使い方に引き継がれていく。

 

第17話「永訣の火」

 【蒼穹のファフナー EXODUS】孤独な決断を参照。

 

第18話「罪を重ねて」

真矢「この先には誰もいないんだ」
アイ「人類の生存圏を取り戻す作戦が、人が住めない場所を作っただけなんて」

 昔、アイスランドの内陸を旅した時、一人で山に登ったのですが、見える範囲にいる人間はあの山小屋に泊まっていた十数人なんだと思った時のことを思い出した。人の住んでいない荒野は本当に寂しい。

 

咲良「ダニみたい。気持ち悪い」

 人前で弱音を吐けない織姫を代弁しているとも受け取れる。

 

総士「代わりにお前の命をくれてやる気か」
一騎「命が終わる時はそれもいいな」
総士「おい」
一騎「たくさん敵の命を奪ってきた。
   返せるものは返すよ」

 「ケガをしたり病気になったら、たぶん、周りの命を同化して生きようとするって」(※1)という芹の台詞を思い出した。生きる力にあふれたSDPを持つ芹とは正反対の考えを持つ一騎。自らの命の終わりを見据えた上で、これまでフェストゥムの命をたくさん奪ってきたので、自分が奪われる側になったとしてもそれを黙って受け入れるということか。

 

 島の外の人間はミールやフェストゥムについてどのくらいの知識を持っているのかわからなので、シュリーナガルの住民が思っていることや考えていることを通してそのあたりを描いてほしかった。英語でEXODUSは聖書の出エジプト記を意味することを考えると、『出エジプト記』23章に登場する金の子牛の話みたいな話が見たかった。シェーンベルクのオペラ『モーゼとアロン』で描かれた話で、2007年にこのオペラを舞台で見た時の印象が強烈に残っている。

 

 真矢が15話でファフナーを使って爆撃機を攻撃(=人を殺めた)したが、この回では銃を使い自分の手で人を殺めてしまった。島に残った一部のファフナーパイロットが機体で発生したSDPが生身でも偶発的に発生したので同じ構図であるが、真矢の場合は大切な人を守るためとはいえ自分の意志で行っている。

 

第20話「戦士の帰還」

 カノンが未来を引き寄せたことにより、コアになっていた甲洋が人の姿を取り戻し、帰還した。島のファフナーはエインヘリヤル・モデルに改装され強化されたもかかわらず、ウォーカーの個体防壁を破ることはできないかった。結局、アザゼル型に対抗できるのはフェストゥムに近いファフナー(ザインとニヒト)かパイロットがフェストゥムである場合のみ。人類軍との戦闘から人との戦い方を学び続けたフェストゥムは強大化していき、その結果、人がフェストゥムの力を借りて戦う(=ミールのコアを使ったファフナーで戦う)というやり方ではフェストゥムに太刀打ちできなくなってしまった。人類がこの地球で生きていくためには人に敵意を持たないフェストゥムと共生していくしか道はないのだと思う。

 

 配信時のコメントを見ると、島外派遣組のパートはシュリーナガルの住民の視点で見ている人が多いと思う。この回のラストで追跡するアルゴス小隊に対してナレインがしかけたトラップが発動し、フェストゥムに襲撃されるアルゴス小隊の姿を見て溜飲を下げた人が多いと思う。私もそんな一人だ。

ナレイン「諸君と戦う気はない。
     直ちに撤退しろ。
     さもなくば災いが訪れる」

 作品から「あなたもナレインと同じ考えを持ち続けることができますか?」と問われているような気がしてならない。ナレインの考えよりもダッカを目の前にしてアルゴス小隊から攻撃された後、ペルセウス中隊のファフナー・パイロットの言った「許せん。反撃しよう」や「ダッカ基地を制圧するんだ。我々の健在を証明するために」(※2)という言葉に共感する人が多いと思う。しかし、ペルセウス中隊は統率の取れた部隊であるため、ナレインの命令に反した行動をとる兵士はいない。そんな中、家族や仲間を守るために人を殺めてしまった真矢の存在は異質である。

 

第22話「憎しみの記憶」

 かつての強敵が時を経て味方になるというのは王道で盛り上がる展開。『HEAVEN AND EARTH』のラストから『EXODUS』22話(2151年11月11日)まで作中では3年ほど経過しているが、公開時(2010年12月25日公開)に劇場版を見た人はこの22話(2015年11月21日放映)まで5年もの時が流れていた。『HEAVEN AND EARTH』を公開時に見た人は作中のキャラクターと同じく操が帰ってくる日を、3年と5年という違いはあれど、長い間待っていたということになる。そのため、操が登場した場面を見た時、作中のキャラクターと同じように3年前(リアルタイムでは5年)の約束がやっと果たされたと感じることができた。特に『RIGHT OF LEFT』でファフナーは完全に終わったと思っていたので、『HEAVEN AND EARTH』の制作が発表された時、「一期ラストの約束がついに果たされる! 総士が帰ってくる!」と一騎と全く同じ気持ちになった。正直、リアルタイムで追うのは精神的に厳しい作品であるが、リアルタムで作品を追い続けた者だけに与えられる感動もあるのは事実。

 

 アビエイターを同化したした後、一騎は最後に視聴者の方を見て微笑む。

 ドラマCD『THE FOLLOWER 2』を聞いた後に改めてこのシーンを見ると、一騎は自分の役割を果たして命を使い切ったことに満足している顔に見える。一騎の人としての命はやはりこの時、尽きたのだと思う。

 

 プロメテウスの岩戸にいるのはディラン・バーゼル、ヘスター、真矢、ジョナサン・ミツヒロ・バートランド、シモン・ネタニヤフの5名。

 この中で人間はヘスターと真矢の2人だけで、残りの3人はパペットである。ヘスターが新国連という組織を使って選ばれた5万人(※3)を守るためには、自分で考えて行動するため、いつか裏切る可能性のある人間は不要ということである。

 

真矢「やめて! 言うこと聞くから。
   お願い」

 真矢は精神的に強い人であるが、それと同時に自分の力で大切な人を守りたいという気持ちが強すぎる人でもある。真矢はある日、突然目の前に現れた異母弟であるミツヒロをカノンの望み通り(※4)、家族として受け入れた。そのため、自分が犠牲に家族であるミツヒロを助けたいという気持ちから、この言葉が出たのだと思う。真矢は弓子と同じく家族を大切にする人で、シュリーナガルに来た一騎に真矢はこう言っている。

一騎「遠見は十分戦った。
   みんなと島に帰ってほしい。
   美羽ちゃんは俺たちが…」
真矢「家族を置いていけないよ」
『EXODUS』10話

 その一方で真矢は弱音を吐けない人でもあると思う。そのため、たとえ傷ついたとしても、自分一人で気持ちを整理してしまうため、表に出さない。ふと、この台詞を思い出した。

真矢「ずっとファフナーに乗ってるみたいで、いろいろ平気になるの。
   なんでも平気な自分に」
『EXODUS』19話

 

 この後ミツヒロが目覚めた時、運んでいた二人の人類軍の兵士は同化されてしまう。シモン・ネタニヤフはミツヒロと同じパペットであるため、ミツヒロに同化されなかったのだろう。

 

 ベイグラントに生まれた存在と無の地平線を遠くから見ると真っ赤。フェストゥム側の赤というと人類と戦うことに特化したエウロス型を思い出す。フェストゥムにとって赤とは人への憎しみの象徴なのだろうか。

ベイグラントの存在と無の地平線

竜宮島の存在と無の地平線

 ベイグラントと竜宮島の存在と無の地平線を見比べると、ベイグラントの存在と無の地平線は緑色の柱の部分がものすごく細くなっているのがわかる。竜宮島の存在と無の地平線は液体コンピュータの中から生まれたので根元は見えない。

 

※1 『EXODUS』16話。

※2 『EXODUS』15話。

※3 『EXODUS』23話参照。「フェストゥム因子に感染しない特異体質者」のこと。

※4 『EXODUS』3話で真矢とカノンはこんな会話をしていた。

カノン「私はこの島で家族を手に入れた」
 真矢「うん」
カノン「ずっと孤独だった。
    自分の考えを持つことも諦めていた。
    でも、一騎やお前や島のみんなが私を変えてくれた。
    もし真矢がそいつを嫌っていないなら、受け入れてやってほしい」

 


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