【蒼穹のファフナー】左目の傷が意味するもの

 総士の左目の傷が象徴しているもののまとめ。内容的には蒼穹のファフナー EXODUS 第6話『祝福のとき』【蒼穹のファフナー】総士の左側 をまとめたものですが、文章は引用していません。

 

1. 人としての証

乙姫「あなたが総士を総士にした、大事な傷、自分である証」
一期15話

 フェストゥムの側へ行って体を再構築した際、視力は回復させたにもかかわらず、決して消さなかった傷。フェストゥムの側へ言って再構築するということは、皮肉にも一度は否定した自らの体のフェストゥム化を肯定することでもあり、そのため、これは自分が人であるという証でもある。総士がこの傷を大事にしていることは、イドゥンがこの傷を同化しようとした時に「やめろ、その傷に触れるな」(※1)と怒っていることからも明らか。

 

2. 島との契約の証

総士「お前と島を守るために僕は生きている、そう思っていた」
乙姫「一騎に傷つけられるまでは、でしょ」
一期22話

 総士は一騎が同化を拒否したことにより自己を得たが、その代わりに「島を守る」という契約を結ぶこととなり、左目の傷はその契約の証だった。総士はファフナーに乗ることができず、ジークフリード・システムの搭乗者として島から出ることのできない存在となった。「海底から海まで貫く、大きなガラス張りの塔に一人きりで生活をしている。その塔の中を移動して空から海の底まで見ることができるが、塔から出ることはできない」(※2)というのが総士の海であり、島に縛り付けられた存在として描かれている。そして総士が島を出る決意をした時は「僕がこの島を出るためのコアの許しがほしい」(※3)とコアの許しを求めた。

 一期ラストで総士はフェストゥムの側へ行き、『HEAVEN AND EARTH『で操の残したニヒトに乗って島に帰還。EXODUS 6話で左目に視力が回復し、ファフナーに乗れることが明らかにされた。守るべき存在だった妹はいなくなり、島との契約が解除されたことを象徴するかのように左目の視力が回復。島のコアからニヒトに乗るように命令され、ジークフリード・システムの搭乗者という立場からも開放された。その結果、ファフナーに乗ることができるようになり、自由に島の外へ行くことができるようになった。

 

3. 一騎との絆

 最初は一騎の罪悪感の象徴だった左目の傷も、一騎が事件の真相と総士の気持ちを知り、和解した結果、二人の信頼の証となった。総士の左側に一騎が立つ場面を並べてみると、二人の信頼関係が再構築されていく過程を表現しているように感じた。一期20話、総士が一騎に「一騎、信じろ、一騎」と言うところから始まり、『EXODUS』3話、ニヒトの石棺の目の前の海岸で一騎と総士が座って話をしている。ここで重要なのは一騎が本音を話す相手として真矢ではなく総士になったということ。そして『EXODUS』6話では一騎の「やれるさ、俺とお前なら」(※4)という言葉が表現しているように一騎と総士の強固な信頼関係が描かれている。一期1話と10話で総士が一騎に左目の傷を見せる場面と『EXODUS』 6話での同様のシーンを見比べると『EXODUS』でが総士が微笑んでいて表情が柔らかいことが印象に残る。

一期1話

一期10話

『EXODUS』6話

 

※1 一期25話

※2 『冲方丁 Newtype Library』(2010年、角川書店)に収録されている短篇「Preface of 蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH」に総士の海の描写がある。

※3 一期22話

※4 この言葉も一期3話、総士の「僕たち二人なら飛べるさ、そう思うだろう」と一期26話、一騎の「飛べるさ、俺とおまえなら、そうだろう」を踏まえたものである。