一騎「左目は大丈夫なのか」
総士「お前と同じだ。一度失われ、戻った」
『EXODUS』6話
『EXODUS』6話で一騎は自らが傷つけた左目について、総士に何のためらいもなく話せるようになっていたわけですが、それでは一騎自身の罪悪感が消えたのはいつなのだろう。
一期15話で一騎は「でもせめて、お前に謝りたくて」と言い、乙姫から「総士はね、一騎に感謝してるんだよ」と総士の本音を教えてもらったにもかかわらず、この件について一期で一騎と総士が直接話すことはなかった。一期22話で一騎に発現した同化現象について、ファフ辞苑8(※)にこんな説明がある。
22話で発現した一騎の同化現象が右半分を襲ったのは、右に対しての嫌悪感、罪悪感を今でも抱いていた為で、一騎はそれを罰として受け入れた。
つまり乙姫から総士の本音を聞かされても、一騎は総士を傷つけた後に逃げ出し、自分がやったと言えなかったことに対する罪悪感を消すことができず、自分自身を許すことができなかった。北極での戦闘に参加するために23話で一騎はアクティビオンを投与して、一時的に同化現象から回復した。26話で総士を救い出すために、ジークフリードシステムを覆うフェストゥムの自己崩壊へと導いた時、「効果が切れた後で、深刻な同化現象を起こすおそれがある」という遠見先生の言葉通り、薬で一時的に回復した右目に加えて左目も失明した。左目は総士を救うために一騎が払った代償と考えることもできるし、総士と同じ左目の視力を失ったことで、一騎は自らの罪を償ったと考えることもできる。なぜなら、一度フェストゥムの側へ行って戻ってきた総士の左目は直っていたのだから。そして、『HEAVEN AND EARTH』の最後、来主操というキリストを想起させる名を持つフェストゥムが一騎に祝福を与え、視力を取り戻した。
フェストゥムの側から戻ってきた総士の左目に傷は残っているけれど、総士にとってはたとえ肉体がフェストゥムであったとしても自分が人間であることの証であり、一騎との絆なのでもはや負のイメージはない。
物語の構造的には一騎がどのように自ら犯した罪を償ったのかを説明できるけれど、個人的に「でもせめて、お前に謝りたくて」と言った一騎が総士に謝ったのかが気になります。一騎と総士が左目のことについて話したとすれば『HEAVEN AND EARTH』から『EXODUS』の3年間の出来事なので、今後、アニメで描かれる可能性は低く、あるとすればノベライズ。ここは視聴者の想像に委ねたということなのでしょうか。
※ 一期のバラ売りDVD、DVD-BOX、BD-BOXに掲載。