ドラマCD「THE FOLLOWER」感想

 『蒼穹のファフナー EXODUS』BD/DVD4巻付属のドラマCD『THE FOLLOWER』の感想です。ネタバレがあります。あらすじは一切書いていないので、ドラマCDを聞いた人向けの内容になっています。

 

 『EXODUS』は美羽がエメリーと会うことを望んだことから物語が始まった。その結果、島は平和ではなく、戦いの道を選ぶこととなった。その場合、人類軍の戦い方が正しくて、平和を望んだ時の竜宮島の戦い方は間違っているのか、というのがこのドラマCDでの問いかけだと思う。人類軍の戦い方は一期14話、死にゆく人類軍の兵士が残した言葉に表現されている。

 気にするな、俺たちは兵士だ。命は惜しくない。

 『EXODUS3話でエメリーと島のコアとの接触し、島が戦う力を得た時、美羽は人類軍の戦い方を正しいと思い、一期の総士が否定した自己犠牲と乙姫が選んだ心を持つことを否定した行動を取ってしまう。

美羽「あの大きな木と一つになって、違うものになってもらうの」
道生「違うもの?」
美羽「美羽とあの大きな木が怖い怪物みたいな子たちよりも
   もっと強いものになって、戦うの」

道生「なぜ、それが正しいことだと信じられるんだ」
美羽「美羽のパパがそうしてくれたから。
   美羽が産まれる前にね、美羽のパパはママたちを守ってくれたんだよ」

道生「君はそのために命を使うのか」
美羽「みんなを守るためだもん」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 美羽のこの行動は一期で総士が否定したものであり、CDドラマ『NO WHERE』で総士が翔子のしたことに対する島民の悪意を演出し、一騎を翔子や甲洋と同じ行動を取らせないようにしたことを語る場面を思い出した。

総士「もし、羽佐間や春日井君がしたことを僕が肯定したら、一騎は同じことをする。
   あいつなら何のためらいもなく、自分を犠牲にするだろう。
   あいつや他のパイロットに自己犠牲をさせないために、
   ファフナーを大事にするということを、
   ファフナーを失えば待っているのは島の住民の悪意だということを、
   教えこまないといけないんだ」
ドラマCD『NO WHERE』

 また、美羽が選んだ大きな木と同化するという道は乙姫の選択とは逆に人としての心を失うことだった。

道生「君の喜びも、幸せも、君だけが持つたくさんの思い出も、すべて消える」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 一期16話で乙姫はこう言っている。

乙姫「ううん、あたしも選んだよ。
   心を持つこと。
   それがあたしの選択」
一期16話

 しかし、美羽の選んだ道は間違いであった。

美羽「美羽、エメリーのこと、ちょっと怖いって思ったの。
   美羽の島でたくさんの人が戦えるようにしてくれた時、
   エメリーは知らない人みたいに思えて怖かったんだ」

美羽「その後、怖がらせてごめんねってエメリーが言ってくれたから。
   戦うって怖いことだけど、そうしないといけない時もあるんだって」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 美羽はいざという時は自分も戦わなければいけないと思うようになってしまったが、それはエメリーが美羽に伝えたかったことではなかった。

エメリー「美羽に誤った道を示してしまった。
     そんなつもり、なかったのに」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 また、美羽は道生が亡くなった最後の戦闘の意味も誤解していた。

美羽「あの大きな木と一つになって、違うものになってもらうの」
道生「違うもの?」
美羽「エメリーが教えてくれたから。
   戦うって怖いことだけど、そうしなきゃいけない時もあるって。
   だからね、美羽とあの大きな木が怖い怪物みたいな子たちよりも
   もっと強いものになって、戦うの」

道生「なぜ、それが正しいことだと信じられるんだ」
美羽「美羽のパパがそうしてくれたから。
   美羽が産まれる前にね、美羽のパパはママたちを守ってくれたんだよ。
   パパは正しい人だったってママは言ってたもん」
道生「だから同じ選択をするのか」
美羽「うん」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 道生が最後の戦いに出た時の心境を美羽に話す。

道生「君のパパは本当に戦いたかったのかな」
美羽「えっ」
道生「他に術がなくて、ロクに力もないまま戦いに出た。
   だがそれでも帰るつもりだったんじゃないかな。
   そのために君のパパはそれ(指輪)を作ってもらった
   ママに持っていてもらうために。
   自分が帰る場所を忘れないために」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 美羽がエメリーから学んだ戦い方も道生の戦い方も間違った解釈であることが示された。そして、美羽の役割は戦うことではないと道生から指摘され、美羽は自分に与えられた力と役割を再認識する。

道生「君が一番得意なことは?
   なんのために島を出てきたんだ」
美羽「おはなしすること」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 美羽とエメリーと出会ったことで島は戦いの道を選んでしまったが、これまでの島の戦い方を否定するものではないことが示された。これは一期14話で人類軍の兵士と共に戦った一騎を思い出す。次々に斃れる人類軍のファフナーを見ながら、一騎は「命は惜しくない」という人類軍兵士の言葉を思い出す。しかし、一騎は翔子と甲洋のことを思い出し、「そんなの、そんなの嘘だ」とこの言葉を否定した。美羽のたどり着いた結論もまた一騎と同じものであった。

 

 そういえば、『HEAVEN AND EARTH』では美羽のセリフに「おはなし」という単語がよく出ていました。遠見先生にも「彼女は、おはなしという言い方にこだわります」という台詞がありました。『HEAVEN AND EARTH』で「おはなし」という言葉の出てくる美羽のセリフを以下に紹介します。美羽のセリフだけだと、どの場面じゃわかりにくいので前後のセリフも引用しました。

 史彦「島で初めての自然受胎。
    皆城乙姫によりミールが生と死を学び、誕生した最初の子供。
    皆城総士にとっても未知の、ミールに等しい存在だ。
    美羽くんもまた日常的にクロッシング状態にある。
    それも島のミールそのものと」
 美羽「ママ、お願い、美羽におはなしさせて」

 美羽「美羽、もっとおはなしできるよ」
 史彦「行こう、君にしかできない」
 兵士「やめなさい、止まるんだ」
 弓子「美羽をどこへ連れていく気ですか?
    私から美羽を奪わないで」

 美羽「美羽、たくさんおはなししたよ」
 千鶴「どんなことを、おはなしたの?」
 美羽「みんな痛いんだよって」

 史彦「外へ出る?」
 美羽「だっておはなしできないよ」
 弓子「美羽!」
イアン「き、危険すぎます」
 史彦「だが、唯一可能な突破手段だ」
『HEAVEN AND EARTH』

 

 このドラマCDを聞くと、美羽の立ち位置を乙姫に重ねているように感じた。

弓子「私こそあなたにお願いするわ。
   美羽のお友達でいてあげて。
   どんな時も」
ドラマCD『THE FOLLOWER』

 一期16話で乙姫と芹の会話を思い出した。

乙姫「ねえ、一つお願いしていい?」
 芹「いいよ、おんぶでもなんでも」
乙姫「ううん、あたしと友達になってほしいの。
   あたし、一人も友達いないの」
一期16話

 美羽と同世代の子どもが島にいないので、美羽は友達がどういうものなのか知らないのだろう。弓子がエメリーに「友達でいてほしい」と言うのはちょっと悲しい。