空白の4年間

 『EXODUS』16話の感想を書いていたら、一期最終話、『RIGHT OF LEFT』、それから5年後に公開された『HEAVEN AND EARTH』あたりのことをいろいろ思い出したので書き出してみた。

 

2004年12月27日 『蒼穹のファフナー』最終回放映
2005年12月30日 『RIGHT OF LEFT』放映

 『EXODUS』の1クール目と2クール目の間に今年に入ってファフナーを一気に見た人の感想をいろいろ読んだのですが、一期のラストを見て「ここで終わり!?」とショックを受ける人が多かった。今はすぐに続きを見ることができるけど、あそこで物語が終わることに今でも衝撃を受ける人が多く、『HEAVEN AND EARTH』公開前に一期を見た人は、一期の結末を自分なりに受け止めて消化する必要があったのだと思う。制作側も気を使って2005年2月号のアニメージュの表紙はラストから1年後を想定し、総士が生きて帰ってきた設定。アニメージュの表紙になった版権絵は現在、復刻版 竜宮島回覧板0127号で見ることができる。私は同人誌を一切読まないので知らないけど、一期ラストのその後を書いた同人誌が多かったんじゃないかな。
1年後に『RIGHT OF LEFT』放映、私はこの作品が安易な続編ではなく前日譚であることを気に入っていた。作品の完成度も高く、私自身は続編を望んでいないこともあり、この作品を以ってファフナーは完結した。『RIGHT OF LEFT』放映後に一期を全部見直した後、一期26話は『HEAVEN AND EARTH』公開後まで見ることができなかった。あのエンディングは好きだけど、同時に心に深い傷を負った。

 

2009年 2月 4日 『蒼穹のファフナー』DVD-BOX発売
2009年 3月   パチンコ、WBC
2009年12月下旬 『HEAVEN AND EARTH』制作発表
2010年12月25日 『HEAVEN AND EARTH』公開

 『RIGHT OF LEFT』放映から約3年後、DVD-BOXが発売され、パチンコになり、そのCMがWBCで流れて話題になっていた。この時はパチンコをきっかけに続編が作られるとは思わなかったものの、ファフナーの情報を再び追い続ける契機となり、2009年12月下旬に『HEAVEN AND EARTH』の制作発表はほぼリアルタイムで知ることができた。『RIGHT OF LEFT』の放映から4年が経過し、一期終了後から続編を望まず自分の中で完全に終わっている作品のため、続編が望まないという感情も自分の中で消化された後だった。そのために客観的に見ることができ、続編を作ること自体は肯定的に受け止めた。大ヒットしたわけでもなく、数年間、音沙汰の無かったオリジナル・アニメの続編が作られるとは思わない。

 制作側のインタビューを見ると、1年後に前日譚『RIGHT OF LEFT』を制作したことからもわかるように、ジーベック、下地志直氏によると「『ファフナー』の場合はちょっと違って、シリーズ展開を考えていた」(※1)とのことだった。能戸総監督は『HEAVEN AND EARTH』公開後のインタビューで「劇場版まで時間がかかったとは、個人的に思っていなくて、どうしても寝かす時期が必要だと考えていました。(中略)2007年に再起動。そろそろ動ける気がして」(※2)、「自分としては『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』を最後と考えていた」(※3)ということなので、当初から『アニメージュ』2005年2月号の「26話で総士はいなくなりましたが、人体を再構築して再び戻ってくる」(能戸PD)という約束を果たしたいという気持ちはあったんだと思う。

 長い空白期間が結果的に続編を望んでいた一期からのファンは総士の帰還を待つ一騎と同じ体験をすることになった。ファンが主人公と同じ経験をするというのはなかなかない。これは一期からファンだった人への制作スタッフからの祝福なのだろう、たぶん。
私自身は作品への気持ちを一度整理してしまっていたので、残念ながらそういう感覚は味わなかった。しかし、長年ファンをやっているあるバンドでの経験を思い出した。メンバーの一人が相次ぐ家族の不幸により、音楽活動を続ける気持ちを失い、バンドは活動停止。バンドの残りのメンバーとファンはその人が立ち直って再びバンドに戻ってくる日を待ち続けた。ちなみにバンドの活動再開が発表されたのは、最初の不幸な出来事から4年後のことだった。(※4

 

 正直、一期最終話を見た後、内容を受け入れるのが辛かったことを考えると、すぐに『HEAVEN AND EARTH』をを見た人が羨ましい。しかし、一騎と同じように一旦立ち止まって最終回の意味を考える時間があったというのは、作品を理解する上ではプラスになったのだと思う。

 

2011年 7月 9日 『EXODUS』制作発表
2015年 1月 9日 『EXODUS』放映開始

 『HEAVEN AND EARTH』公開から『EXODUS』放映開始まで4年という歳月が流れ、作中では3年が経過していた。『EXODUS』の1話を見た時、竜宮島は数年ぶりに帰った田舎で、島の子供たちは成長した親戚の子と同じ視線で見ていた。現実とアニメで同じように時が経過すると、なんとも不思議な感覚を味わうのだなと思った。

 

※1 安藤健二『パチンコがアニメだらけになった理由』(洋泉社)。この本によるとファフナーのパチンコの契約締結は2006年。

※2 『グレートメカニックDX18』

※3 『オトメディア』2015年10月号

※4 このバンドはカナダのRUSH。バンドのドキュメンタリー「Beyond The Lighted Stage」でも触れられている。ニコニコ動画に日本語字幕付きの映像あり。https://www.nicovideo.jp/watch/sm19646112