「蒼穹のファフナー」第21話の感想

 現在、GYAO!で一期が週2回(月・木)のペースで配信されています。一期21話を見た感想です。咲良の視点で見ると、これまでとは少し違うものが見えてきました。

 

・21話の男女観

 合宿の時、夕食を作っていたのは、弓子、真矢、咲良、カノンと全員女性だった。


 体育館で剣司が一騎と勝負することになったが、この二人の他にいたのは総士と衛なので、体育館にはいたのは全員男性ということになる。

 一騎と総士が体育館に入る直前、真矢も一緒だった。

一騎「遠見、悪いけど外してくれないか」
真矢「えっ、なんで」
総士「なんでも、だ」
真矢「なにそれ」
一期21話

 真矢には場を外された意味がわかっていなかった。

 一期19話、遠見家で道生と一騎が夕食を作るという場面があったことを考えると、一期21話で描かれた男女観は少々古い。もしかするとこの少し古い男女観というのは咲良に与えられたキャラクターなのかもしれない。咲良といえば、冲方丁が書いた『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』には以下のようなシーンがある。ノベライズの道場娘は咲良である。

 いわく「一騎に勝って、チューしてもらおう」という、実に健全な娯楽である。
 別に一騎がチューするわけではない。道場娘にである。道場娘は「馬鹿じゃないの」ときっぱり商品化されることを拒んでいるが、少年たちはそんなことは気にしない。
冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』一章3(※1

 少年たちは咲良を優勝者に与えられる商品化された女性にしてしまった。さらに咲良が倒れる直前の台詞も古い男女観を意識したものになっている。

咲良「うーん、まだ決着ついてないと思うけど。
   待っててやりますか、女の子らしく」

咲良「頑張れ、頑張れ男の子」
一期21話

 一期21話は咲良の価値観が反映された話数なのかもしれない。

 

・ファフナーのパイロット=ヒロイン?

 一期で竜宮島の女性キャラクターがファフナーに乗って戦った話数は以下の通りになる。

  5、6話: 翔子
  7話~21話: 咲良
  19話~26話: 真矢

 咲良と真矢がファフナーのパイロットだった時期が重なっているが、真矢が初めてファフナーに乗って戦った一期19話で、咲良はフェストゥムに取りつかれたことで戦いに対して自信を失い、一歩下がった状態になった。その咲良と入れ替わるような形で、戦場において全面に出てきたのが真矢だった。つまり、一期ではファフナーのパイロットになった女性がその時の物語上のヒロインだったということになるのではないだろうか。

 

・翔子、咲良と広登と暉

 『EXODUS』で一つ下の世代の広登と暉がいなくなったが、一期の翔子と咲良の状況と重なっていた。

  翔子   広登
  フェンリルで自爆   人類軍に狙撃された
  遺体は残っていない   遺体はわずかに残った
 
  咲良  
  同化現象により   同化現象により
  昏睡状態に陥った   いなくなった

 翔子と広登は人類が作った兵器によりいなくなり、暉と咲良はファフナーに乗って戦う時の代償である同化現象に襲われたという部分は共通している。しかし、それ以外の要素は一期と『EXODUS』で逆になっている。一期で犠牲になったのが女性だったのに対して『EXODUS』では男性だった。さらに一期と『EXODUS』で対照的な結末を迎えた。

 

※1 冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』(2013年、ハヤカワ文庫)より引用。ノベライズで咲良がモブの道場娘となった経緯は『冲方丁のライトノベルの書き方講座』(原著は2005年刊行)を参照。