【蒼穹のファフナー】第1話の構成

 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」PVの感想 Part7 偽装鏡面-偽りと真実の壁-を書いた後、一期1話の物語の構造が気になって見直した。

 

 一期1話Aパートで真矢は家を出て、翔子の家に寄り、通学路で甲洋に会い、教室に入ってきた総士に声を掛けられる。フェストゥムが襲来した後、真矢はシェルターには行かず、学校を休んだ翔子の家に行った。同級生はみな学校から直接、シェルターに避難したため、偽装鏡面の解除を見たのは真矢だけだった。シェルターに避難する途中で敵の攻撃に遭遇したため、真矢と翔子がワームスフィアによる攻撃を見た。この後、シェルターに避難した後、真矢がファフナーに乗れば、ロボットアニメの主人公の行動そのものである。しかし、真矢はこの物語の主人公ではない上に、ファフナーに乗るのは物語が終盤に差し掛かる一期19話(!)である。

 ロボットアニメではまず主人公が巨大な敵の攻撃を目撃した後、相手と対等に戦える道具を手に入れる、もしくは与えられるという流れが一般的だが、ファフナーでは主人公の一騎ではなく、敵の攻撃を目撃するのは真矢と翔子である。真矢と翔子がシェルターに避難し、真矢が一騎にワームスフィアによる攻撃について話すという流れであれば物語が繋がるが、シェルターの入り口が破壊されてしまったために真矢と翔子は避難することができず、フェストゥムとの戦闘が終わるまで外にいた。一騎と真矢が主人公という物語というのであればこの展開も容認できたが、物語の主軸は傷つけあった一騎と総士の相互理解であり、真矢はその二人を見守る位置にいるキャラクターにすぎない。一騎の性格、一騎と総士の関係が難しく、脚本家はそれをうまく描写するための状況を作れず、一期1話Aパートヒロインの親友という脇役でありながら、動かしやすい真矢の視点で描いてしまったのではないだろうか。

 

 ファフナーは衛が修理した無線機でフェストゥムの声を受信し、応答してしまったことから物語が始まるが、その場にいたのは一騎、総士、甲洋、衛、咲良(※1)の5人だった。一期のOPは線画のためキャラクターがわかりにくいので、画像は『EXODUS』の後期OPから引用した。

 アニメの真矢は誰にも相談せず一人で翔子の自宅に行くが、ノベライズでは学校からシェルターに避難した後、真矢が翔子が自宅にいることを思い出して一人で迎えに行こうとするが、危険すぎるということで一騎、総士、甲洋、真矢、蔵前の5人で翔子を迎えに行くことになった。その結果、偽装鏡面の解除、ワームスフィアの攻撃を皆で見た。アニメとノベライズの違いをまとめて見た。

   アニメ   ノベライズ
偽装鏡面の解除 真矢 一騎、総士、甲洋、
真矢、蔵前、翔子
 
フェストゥム なし 一騎、総士、甲洋、
真矢、蔵前、翔子
 
ワームスフィア 真矢、翔子 一騎、総士、甲洋、
真矢、蔵前、翔子

 アニメでは真矢が翔子の家に着く前に偽装鏡面が解除されるが、ノベライズでは翔子と合流してから、偽装鏡面が解除されるのが大きな違いである。また、ノベライズでは名ありの一騎の同級生全員が見ていることから、アニメに比べると群像劇という部分が強調されている。物語は子どもたちがフェストゥムの声に応答してしまったことから始まることを考えると、無知ゆえの好奇心が招いた結果(フェストゥムの襲来)を最初に目の当たりにするのは、当事者である子どもたちでなければならない。さらに総士と蔵前という同級生でありながら、大人の立場に近いキャラクターもいるので、子どもたちだけでファフナーに乗って戦うところまで描けるようなキャラクター配置になっているだけに、アニメガこの設定を活かした脚本になっていないのは残念だ。

 

※1 Arcadian Project 02(DVD2巻に付属)では、声を聞いたのは一騎、総士、咲良、剣司、衛となっているが、一期1話と『EXODUS』の後期OPで描かれているのは一騎、総士、甲洋、衛、咲良である。画像の左端のキャラが甲洋であることは、子どもの頃の設定画(『蒼穹のファフナー ビジュアルブック』に掲載されている)で確認した。ドラマCD『NO WHERE』で一騎は総士に「俺とお前と、衛や甲洋もいた」と言っている。