蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-19 「”あなた”から”みんな”へ」と蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-20 「島のミールが学んだもの」で書いた内容を総括。
●一期の三人組
一期のメンバーには同性2、異性1という組み合わせの三人組が三組あった。
一期開始時 | ||
一騎 | 総士 | 真矢 |
真矢 | 翔子 | 甲洋 |
剣司 | 衛 | 咲良 |
『EXODUS』では最終的に甲洋が帰ってきたが、総士がいなくなった。その結果、一期のメンバーの同性のペアはすべて片方が失われ、異性のペアのみ残るという形になった。
EXODUS終了 | ||
一騎 | 真矢 | |
真矢 | 甲洋 | |
剣司 | 咲良 |
しかし、総士が生まれ変わったので、完全版は以下の通りである。
EXODUS終了(完全版) | ||
一騎 | こそうし | 真矢 |
真矢 | 甲洋 | |
剣司 | 咲良 |
しかし、残った男女のペア三組の関係はすべて異なる。
- 一騎、総士、真矢のグループは以前と変わらず。
しかし、一騎はこそうしと親子になり、真矢との距離は開いた。 - 真矢と甲洋は単なる同級生。
- 剣司と咲良は結婚して、男女のペアになった。
・剣司 衛 咲良
剣司「ははは、今の咲良が見てたら驚いたろうなあ。
咲良に言われたんだ、弱い男には興味ないって。
咲良、自分のお父さんみたいな人、タイプだったから。
一騎、俺も衛みたいに強くなれるかな」
一期24話
剣司「俺も強くなるよ、衛」
『EXODUS』20話
一期22話でいなくなった衛の思いは剣司が引き継ぎ、剣司と咲良が結婚したことにより、二人が引き継いだと言えるだろう。
・真矢 翔子 甲洋
真矢「あたしも戦うよ、翔子」
一期19話
翔子「一騎くん、あなたの島、私が守るから」
一期6話
カノン「丈瑠島で働くのもファフナーに乗ったのも、
一騎の居場所を守るためか」
真矢「どうだろう。
気づいたらそうしてた」
『EXODUS』3話
翔子「私はあなたの帰ってくる場所を守っています」
一期5話
甲洋「守るよ、みんなの帰る場所を」
『EXODUS』20話
一期6話でいなくなった翔子の「あなたの場所を守る」という気持ちは真矢と甲洋が引き継いだ。『EXODUS』では真矢と甲洋を通して、この気持ちが二人称から三人称へ拡大されたときのポジティブな面とネガティブな面が描かれた。(※1)
・一騎 総士 真矢
総士「一騎、ぼくはフェストゥムに痛みと存在を教えた。
そして僕は、彼らの祝福を、存在と無の循環を知った」
一期26話
カノン「皆城総士が存在と無の調和を選んだように、
お前が世界を祝福するなら、
我々が生と死の循環を超える命を与えよう」
一騎「選ぶよ。
まだ俺にも命の使い道があるなら、それを知るために生きたい」
『EXODUS』24話
一騎は総士と同じように島のミールとの調和を選んだので、総士の後を継いだと言うことができるかもしれない。『EXODUS』の最後に総士はいなくなったが、別の存在に生まれ変わった。ザインとニヒトは「二つで一つの力」(※2)であり、ザイン(=一騎)が存在し続けるためにはニヒトが必要。そして、そのパイロットとして総士という存在が必要ということである。
『EXODUS』では総士の後を追うように一騎もフェストゥム側へ行ってしまったが、真矢は人として存在し続ける存在。『RIGHT OF LEFT』放映前の雑誌のインタビューで冲方丁は真矢についてこう語っていた。
最後方にいるのでもっとも遠い場所から全員を見ながら、乙姫とは違い、人間としての弱さを持たざるをえない。つまり孤独を強要されるキャラクターです。(※3)
「剣司 衛 咲良」と「真矢 翔子 甲洋」のグループはいなくなった衛と翔子の思いを残りの二人が引き継ぐという形になったが、「一騎 総士 真矢」では総士が別の形になったにせよ存在し続けることになったため、一騎と真矢が引き継ぐという形にはならなかった。
●後輩組
一期のメンバーと同じく、後輩組にも同性2、異性1という組み合わせの三人組がいた。
EXODUS開始時 | ||
織姫 | 芹 | 広登 |
広登は島外で死亡。芹のSDPは機体と自分を再生させること。その結果、芹は不死の存在となり、一騎とは違う形で生と死の循環を超える命を得た。(※4)
EXODUS終了 | |
織姫 | 芹 |
一期の三人組はすべて『EXODUS』終了時に同性のペアがいなくなり、すべて異性のペアが生き残った。しかし、この三人組では異性のペアがいなくなり、同性のペアが生き残った。織姫は島がアルタイルとともに海中に沈む時、島に命を返したが、島のコアは生まれ変わる存在なので、総士と同じく存在していると考える。
広登「俺もお前も、島が平和を与えてくれた。
だから世界を憎まずにいられたんだ。
俺は、俺が知っている平和を世界に広めたい」
『EXODUS』13話
暉「広登は世界を見れてよかったって言った。
平和を広める価値を知ったって。
俺もそう思う」
『EXODUS』24話
史彦「人類軍の兵士たちに告ぐ。
現在、我々は、新たに到来するミールを
人類に有益なものとする作戦を遂行中である。
我々の成果であるすべてのデータを、諸君に提供したい」
『EXODUS』26話
広登の持っていた「平和」という考えは暉が引き継いだ。暉ととも島に帰ってきた後は、島が引き継ぐことになった。いわば島のコアである織姫と織姫とともに生きることを選んだ芹がその意思を引き継いだという形になっている。
その一方、『EXODUS』で後輩組は織姫と芹が永遠の存在、広登と暉がいなくなるという結果となり、同性のペアが命運を分けるという残酷な結末を迎えた。
●双子
西尾の双子は暉が真矢に思いを寄せ、里奈に思いを寄せる彗という関係だった。
EXODUS開始時 |
真矢 ←(暉、里奈)← 彗 |
『EXODUS』開始時には暉と里奈が一心同体とも言える状態だったので、あえて暉と里奈をカッコでくくった。このグループも三人組と見なせると思う。最終的に暉が同化されていなくなった結果、このグループから真矢が離脱。最終的に残ったのは異性のペアだった。
EXODUS終了 | |
里奈 | 彗 |
暉は島を出て外の世界を見た結果、里奈から離れ、自分の考えを持つ大人になった。
里奈「うー、起きたばっかなのにもう眠い」
暉「無理せず、起動の負荷は俺に回せよ」
里奈「あんたこそボロボロじゃん。
島の外になんきゃ行かなきゃよかったのに」
暉「広登は世界を見れてよかったって言った。
平和を広める価値を知ったって。
俺もそう思う。
命を使う価値がある」
里奈「使う…なにそれ」
暉「里奈」
里奈「ふざけろっつーの。
あんたは降りな。
あたしが全部やるから」
暉「島に爆弾を落とした人に会ったよ」
里奈「えっ」
暉「いい人だった。
俺たちを守っていなくなった。
譲ってもらった命、捨てる気はない」
里奈「お腹すいた。
作ってよ」
暉「カレーでよければ」
『EXODUS』24話
里奈は暉が自分とは異なる考えを持つようになった結果、自分から離れたことをなかなか受け入れられなかった。この時、暉は里奈にウォルターのことを話したが、里奈にその思いは伝わらなかった。
暉「ウォルターさんに島に来てくれって言った。
その時思ったんだ。
広登の無事がわかったら、別の願いを書こうって。
世界中に竜宮島の平和を知ってほしい。
そのために俺は生き残る」
『EXODUS』25話
里奈が暉のことを本当に理解したのは、暉が同化されていなくなった後、里奈は暉が残した映像を見た時だった。その時、里奈は暉が伝えたかったことをやっと理解することができた。
『EXODUS』において、里奈は竜宮島の住人の人類軍への感情を象徴し、彗の一家はL計画で家族を失った者の感情を象徴していた。それはいわば島の悲しみ、負の部分であった。『EXODUS』ではそれを受け入れた上で許したと言えるだろう。
●カノン
『EXODUS』開始時にファフナーに乗らない者=記録者ということで、カノンは真矢からその役割を引き継いだ。最終的に島の未来を掴むために命を使い、記録者という役割を織姫=島のミールに引き渡した。
カノン「この島はいなくなった者たちのことを決して忘れないんだな。
私も島のことを忘れない。
どんなに遠く離れても、
ここに私がいたすべての記憶が残り続けてくれる。
遠い未来までずっと」
織姫「私も忘れない、あなたのこと」
『EXODUS』17話
自らの役割を島のコアである織姫に引き継いだ後、カノンは島に同化されるようにいなくなった。
残されたドライツェンはボレアリオス・ミールのコアである来主操が引き継いだ。島の外から来た者(カノン)のために作られた機体はやはり島の外から来た者(来主操)が引き継ぐという形になっている。
ファフナーの人間関係は物語開始時は3であったものが、物語終了時にはペアという安定した2という形に落ち着くのだが、一組だけ例外がある。それは一騎、総士、真矢のグループだ。一期ラストから『HEAVEN AND EARTH』を見るとわかるように(※5)、このグループだけは2が不安定、3が安定である。一期は総士がいなくなったため2、つまり不安定で終わった。『EXODUS』は総士はいなくなったが転生したため3となり、安定して終わったということになる。
※1 詳細は蒼穹のファフナー EXODUS 第26話-19 「”あなた”から”みんな”へ」を参照。
※3 『Charada ! (きゃらだ) 』Vol.1(2006年、宙出版)より引用。
※5 『Preface of 蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』及びangela「FORTUNES」の歌詞を参照。