「蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE」の感想 Part2

 2023年1月20日から劇場先行上映された『蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE』の感想です。

 

●一騎の望み

 『EXODUS』で一騎が喫茶楽園で短冊に書いた言葉は、『HEAVEN AND EARTH』で物語を終わることを選んだ時に訪れる未来でした。

 一騎が短冊に書いた「生きる」という言葉の先にあるのが、蒼穹のファフナー THE BEYOND」第10~12話の感想 Part1 で引用したヴェルギリウス『アエネーイス』の「生きた」だったのだと思います。

私は生きた。そして運命が与えた道のりを最後まで歩き通した。(※1
ヴェルギリウス『アエネーイス』第4巻

ラテン語では、「生きる」という言葉の完了形が死を意味する点に注意します。文字通り死とは生をパーフェクトなものにするということです。
「山下太郎のラテン語入門」

 一騎は喫茶楽園にこの言葉を残してシュリーナガルに旅立ったことから、この言葉は一騎が死んだ後の望みだったのです。

 

●真矢の望み

一騎「遠見、一緒に来るか」
『THE BEYOND』12話

 ファフナーに乗って旅に出る一騎=ファフナーであることから、物語の最後に真矢は今後もファフナーに乗るのか、それともファフナーから降りるのかを問われました。この後、真矢は一騎の服の袖をつまみましたが、それは迷いや未練といったものだったのでしょう。

 『THE BEYOND』11話の美羽の祝福で全世界が平和になった時、人類は「否定する」を手に入れました。真矢=人類であることから、真矢は「肯定する」だけでなく「否定する」ことができるようになり、真矢は一騎と一緒に行かないことを選びました。

真矢「私じゃ一騎君のいる場所には行けないから、
   ここで帰る場所を守ってるね」
『THE BEYOND』12話

 「義務感と孤独」(※2)からファフナーに乗った真矢は、「否定する」を手に入れた時、元の自分に戻ることができたのかもしれません。

総士「機体に乗る時の自分を逃げ場にするな。
   元の自分に戻れ」
『BEHIND THE LINE』

 

●私にとっての「BEHIND THE LINE」

 私は自分の視点と引き換えに『ファフナー』を見る視点を変えていきました。

2019年11月16日:フェストゥムの視点で物語を見られるようになった
2021年11月07日:人間の視点で物語を見られるようになった

 『THE BEYOND』4~6話の公開後、フェストゥムの視点で見られるようになった時、自分を失い、『THE BEYOND』10~12話を見終わった後、人間の視点で見られるようになりました。2022年11月に祝福した後の世界を見たのですが、元の自分に戻れませんでした。2023年12月27日に総士生誕祭で『BEHIND THE LINE』を見た後の2023年1月2日、フェストゥムと人間の視点がなくなり、元の自分に戻りました(※3)。物語の中のファフナーパイロットと同じように、私にとって『BEHIND THE LINE』とは元の自分に戻るための作品でした。

 

 

※1 山下太郎が twitter に掲載した訳文を使用しました。

※2 一期12話の総士の台詞「確かに彼女の動機は知ってる。義務感と孤独だ」を参照。

※3 The Who『Tommy』(1969年)を聞いている時、元の自分に戻りました。