「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第10~12話の感想 Part1

 『THE BEYOND』のエピローグとして見ることもできる『After All Alone』を読み、内容を理解した後の感想です。

 

●一騎

 今はただ、一騎のそばにいてあげたいです。それは私がずっと意味にわからなかった以下の言葉の意味を理解したことを意味します。

救済する者に救いを
ワーグナー/舞台祝典祭典劇『パルジファル』第3幕

 

●『THE BEYOND』とは

 『THE BEYOND』は徹頭徹尾、一騎が総士を理解するための物語でした。『THE BEYOND』を見終わった時、私は以下の言葉を思い出しました。

私は生きた。そして運命が与えた道のりを最後まで歩き通した。(※1
ヴェルギリウス『アエネーイス』第4巻

ラテン語では、「生きる」という言葉の完了形が死を意味する点に注意します。文字通り死とは生をパーフェクトなものにするということです。
「山下太郎のラテン語入門」
Vixi et quem dederat cursum fortuna peregi.


『EXODUS』24話

 

●美羽とこそうし

 美羽とこそうしは以下の言葉を体現した存在でした。

慈悲(共苦)によって悟りを得る、純粋で無知な者
ワーグナー/舞台祝典祭典劇『パルジファル』第1幕

 仏教学者、渡辺照宏の「仏教でしばしば用いられる anukampā <慈悲、哀愍>は言葉の構成からすれば συμπάθεια〔ギリシャ語〕や Mitleid〔ドイツ語〕に近い」(※2)という文章を参考にして、「共苦」と翻訳されることの多い Mitleid を『ファフナー』の中に出てきた言葉を使って「慈悲」(※3)と訳しました。『広説佛教語大辞典』(東京書籍)では「慈悲」を以下のように説明しています。

じひ【慈悲】
仏・菩薩が衆生をあわれみ、いつくしむ心。あわれみの心。万人に対する愛。いつくしみと同情。

 

●あなたは誰ですか

ルヴィ「あなたは誰ですか」
『THE BEYOND』5話

 私は総士でした。『THE BEYOND』が終わった時、私はこそうしになりました。

 私にとって『ファフナー』とは一騎を理解する物語でした。私が出会った一騎は無色透明、つまりどこにもいなかったのですが、今はしっかりとした姿を持って、私の目の前にいます。

 

 

P.S. 舞台祝典祭典劇『パルジファル』から引用した言葉は私自身の訳によるものです。

※1 山下太郎が twitter に掲載した訳文を使用しました。

※2 渡辺照宏「愛・隣人愛・慈悲」(『理想』1957年7月号)より引用。

※3 『EXODUS』22話のヘスターの台詞「これは慈悲なの」。