【蒼穹のファフナー THE BEYOND】憎しみと悲しみ

 『THE BEYOND』は生まれ変わった総士が別の道を選択する物語だったが、それはフェストゥムも同じだった。

 

●一期

 乙姫はフェストゥムに「悲しみ」を理解してもらおうとしました。

  乙姫「もし戦いばかりの世界を悲しいと思うなら
     悲しさを消す一番の方法は何だと思う?」
  史彦「フェストゥムに我々の悲しみを理解させることだ」
  乙姫「そう、真壁紅音が世界で最初に考えついた、簡単でとても難しい方法」
  史彦「まさか。
     君は戦闘中にそれを試みているというのか」
  乙姫「そうしないと、彼らはきっと違う気持ちを選んでしまう。
     命があることで生まれた、もう一つの気持ち、憎しみを」
一期22話

 しかし、その試みは失敗。フェストゥム(イドゥン)が選んだ感情は「憎しみ」でした。

  狩谷「いやー、やめて、やめて、やめて。
     ミツヒロさん」
イドゥン「これが憎しみ。
     これが」
一期23話

 フェストゥム(イドゥン)が選んだ「憎しみ」は大切な人をいなくなった直後に感じる感情です。

  保「真壁、システムの調整、俺にやらせてくれ、頼む。
    衛や千沙都が味わった苦しみを、
    フェストゥムの奴らにも味あわせてやるんだ」
一期24話

 『HEAVEN AND EARTH』と『EXODUS』では、フェストゥムが手に入れた「憎しみ」という感情の行き着く先が描かれました。

 

●「THE BEYOND」

 フェストゥム(レガート、セレノア、フロロ)は人間と同じように家族を作り、世界から隔離された場所(偽竜宮島)で人間のように暮らしていました。

 フロロ「私たちみんなで平和に暮らしてるの。
     感情を学んだのよ。
     最初はマレスペロの命令だったけど。
     今は本当の家族だと思ってるの」
『THE BEYOND』2話

 突然、フェストゥム(レガート、セレノア、フロロ)が暮らしていた場所は、人類から攻撃され、フェストゥム(レガート、セレノア)は家族(フロロ)はいなくなりました。

セレノア「フロロの声が消えた」
『THE BEYOND』3話

 その後、海神島を訪れたフェストゥム(セレノア)は操、甲洋と話をしました。

セレノア「ここと同じ島を作ることもできる。
     お前たちが愛した者たちもすべて用意しよう」
  甲洋「結構だ。
     どれほどの力があっても同じ命は二度と生み出せない」
『THE BEYOND』5話

 フェストゥム(セレノア)は甲洋の言葉を聞いた後、フロロのことを思い出したかのように、そばにあった花(エスペラント語でフロロは花を意味する)を一輪、摘み取りました。

 セレノアは海神島から去る時、フロロを思い出し、フロロはいない=悲しいという感情を体験したのではないだろうか。


 つまり、セレノアは悲しいという感情を体験することによって、いない、つまり死を理解し始めたのではないだろうか。

 

 大切な人がいなくなった後に感じる悲しみは消えない。『THE BEYOND』4話、甲洋は羽佐間家に飾られた翔子とカノンの写真を見た後、目を閉じていた。翔子がいなくなったのは10年前、カノンがいなくなったのは5年前のことである。


 

 ゲディ・リーは『ゲディ・リー自伝 我が奇妙なる人生』(シンコーミュージック)で、突然、夫がいなくなった母について以下のように語っていた。

母の悲しみには限りがなかった。母は打ちのめされ、その後の人生においても、心の底では最後まで立ち直ることはなかった(長年のあいだ、母は父の墓を訪れるたびに、父が死んだ日のように深い悲しみに沈んだ)。
『ゲディ・リー自伝 我が奇妙なる人生』第2章

 

 「憎しみ」は大切な人いなくなった瞬間に感じる感情であるのに対し、「悲しみ」は大切な人がいなくなった後、大切な人について触れた時に感じる感情です。「憎しみ」というある瞬間の感情は同化という方法で手に入れることが可能でしたが、「悲しみ」という継続する感情は自分で経験することによってのみ、手に入れることのできる感情でした。そのため、フェストゥムは『THE BEYOND』で大切な人がいなくなるという経験をすることになったのです。