『THE BEYOND』の終着点 に到達した後、書いた文章です。
●理解した後
私が『THE BEYOND』を理解し終わった後に得たものは、自由でした。『蒼穹のファフナー』が一騎が総士を理解する物語であり、『蒼穹のファフナー』が終わることは一騎が総士を理解し終わったことを意味します。つまり、私が『THE BEYOND』理解し終わる=一騎が総士を理解し終わるであり、今の私の心境は『THE BEYOND』最後で旅に出た一騎の心境そのものなのだと思います。そして、私が『THE BEYOND』を理解するまでの2年3ヶ月間、『THE BEYOND』の一騎と同じ体験をしていたことを意味します。
2021年7月4日、『THE BEYOND』第10~12話のPVの「蒼穹のファフナー 最終章」という文字を見た時、一人で秘密を抱える日々が終わりました。この時、肩の荷が下りて、ホッとしました。
●ネタバレ
中西プロデューサーは『THE BEYOND』1~3話の先行上映前に放送された 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」劇場先行上映直前 TVスペシャル で以下のように話していました。
中西 こんなに過酷な話になる前にラピュタみたいなものを作りたかったんですよ(爆笑)。男の子と女の子が立ち向かっていって世界を変えるという。
『THE BEYOND』はこそうしと美羽が世界を変えて終わったので、この時の中西プロデューサーの言葉はネタバレだったのです。
●亡霊
マークニヒトの内部には亡霊がうろうろしていた。
総士「静まれ、亡霊ども」
『EXODUS』7話
ギリシャの悲劇詩人、ソポクレスにこんな言葉があります。
「人間は息と影にすぎない」
マークニヒトの中にはマークニヒトが同化して「息」がなくなった人間、つまりいなくなった人間の「影」だけが残っている、と考えることができるかもしれません。
●死者の望み
『THE BEYOND』12話で一騎は総士の灯籠を流し、真矢を旅に誘った。
総士は人間として生きて、命を終えること(※1)を望んでいたので、こそうしに強制される形といえ、一騎は総士の「灯籠を流してほしい」という望みをかなえたのかもしれません。
総士は真矢に恋をしていましたが、真矢に告白することなく、この世を去りました。一騎がこの世にいない総士の代わりに真矢に告白することで、この世にいない総士の気持ちにけりをつけたのかもしれません。『RIGHT OF LEFT』の冒頭の会話を思い出しました。
生徒A「お前も自分の気持ちにけり、つけとけよ。
義務教育の世界にいられるうちにさ」
僚「……どんな気持ちさ?」
生徒A「好きな相手に告白するとか、なんでも良いさ。
心残りってのは最悪だ、きっと」
『RIGHT OF LEFT』(※2)
『EXODUS』12巻のジャケットと『THE BEYOND』4巻のジャケットに終了時点の総士の心境が描かれています。『EXODUS』終了時、総士はまだこの世に心残りがあったので、この世を見ているが、『THE BEYOND』終了時にはこの世に心残りがなくなったので、この世に背を向けています。
●二つで一つの力
織姫「二つで一つの力だから」
『EXODUS』6話
一騎「俺が戦ってる時、システムの中にはお前がいる。
怖いと思う必要もない」
総士「僕一人では、戦えない
パイロットがいて初めて戦えるんだ」
ドラマCD『NOW HERE』
一騎、総士、織姫の言葉を並べた時、以下の言葉を思い出しました。
Individually, we are a ass, but together, we are a genius
Neil Peart / test for echo OFFICIAL GUIDEBOOK AND USER’S NAMUAL(※3)
『ファフナー』の内容を踏まえて、以下のように訳してみました。
一人では、私たちはバカだ、しかし、一緒になれば、私たちは天才だ
※1 『EXODUS』14話、総士は「僕は人間として生き、命を終える」と言っていた。
※2 冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』(2013年、ハヤカワ文庫JA)より引用。
※3 RUSHのTest For Echo Tour のツアーパンフレットから引用。RUSH『Test For Echo』の日本盤(AMCY-995)の解説書に翻訳が掲載されています。