【蒼穹のファフナー THE BEYOND】望み

 『THE BEYOND』2話、家族とマリスがこそうしの疑問に答えることができなかったため、こそうしは答えを求め、無線を使って島の外の世界に呼びかけました。

こそうし「僕は知りたい。
     海の向こうには何があるのか。
     世界は本当はどうなっているのか。
     誰か教えて下さい」
『THE BEYOND』2話

 こそうしの言葉を聞いた一騎はこそうしが知りたいものに対して名前をつけました。

  一騎「真実を知りたいか」
『THE BEYOND』2話

 こそうしは祭りで飛ばす灯籠に願いを託す時、一騎が教えた言葉を使いました。

こそうし「真実を知ることができますように」
『THE BEYOND』2話

 こそうしの声を聞いた一騎は偽竜宮島を訪れ、こそうしの望みをかなえました。

  一騎「これが真実だ。総士」
『THE BEYOND』2話

 

 海神島に連れてこられたこそうしはルヴィの指示でマークニヒトに乗ります。マークニヒトの中に残されていたメッセージの中では、以下の言葉が繰り返しされていました。

  総士「君は知るだろう」
『EXODUS』2話

 一騎の「真実を知りたいか」、こそうしの「真実を知ることができますように」、総士の「君は知るだろう」という3つの言葉から想起されるのは、『ヨハネによる福音書』8章32節です。

そして、あたなたちは真実を知るだろう。(※1
『ヨハネによる福音書』8章32節

 『新約聖書』はギリシ語で書かれており、「知るだろう」はギリシ語で γνώσεσθε となり、 γνώσεσθε は γιγνώσκω(知る)の直説法・中動態・未来形・二人称・複数です。γιγνώσκω(知る)という単語は以下のような意味を持っています。

γιγνώσκω = 経験を通して知るようになる。
織田昭『新約聖書ギリシア語小辞典』(教文館)

γιγνώσκω 2.(知識を持っている:)知っている。
『古代ギリシャ語語彙集』(大阪公立大学共同出版会)

 「君は知るだろう」の「知る」という言葉は「経験を通して知り、その意味を知っている状態になること」を意味しています。総士がマークニヒトの中に残した言葉は、生まれ変わった自分に対して、「知る」ということの意味を教えるためのものだったのです。それではこそうしが真実を知る、つまり真実を知った後、こそうしはどうなったのでしょう。『ヨハネによる福音書』8章32節の続きにその答えがあります。

そして、真実はあたなたちを自由にするだろう。(※2
『ヨハネによる福音書』8章32節

 一騎はこそうしに知りたいものを表現する言葉(真実)を教え、総士はこそうしに知りたいものを知る方法を教えました。こそうしは一騎は一騎と総士が教えた言葉を通して、真実を知った時、人間になったのです。フェストゥムに育てられたため、フェストゥムの考えを持つこそうしの望みとは、人間になることだったのです。

こそうし「何者にも従属しない一人の人間だ」
『THE BEYOND』12話

 

 

※1 『ヨハネによる福音書』8章32節は『ファフナー』で使われている言葉と合わせるため、ギリシャ語から私訳しました。『新共同訳聖書』では「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする。」となっています。

※2 『ヨハネによる福音書』8章32節はギリシア語から翻訳しました。この文章は国立国会図書館、東京本館1階のカウンターの上にギリシャ語で刻まれています。国立国会図書館のコラム「真理がわれらを自由にする」でその写真を見ることができます。

 


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