「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第10~12話の感想 Part5

 「蒼穹のファフナー THE BEYOND」第10~12話の感想 Part4 を公開した後に書いた感想です。

 

●初見時の感情

 自分の記憶を探した結果、2021年7月4日に感じた感情が『THE BEYOND』10~12話を初見時の感情でした。この時の感情を言葉にすると、「『ファフナー』が突然、終わってしまった。しかし、解決していない疑問点があるので、ここで終わるのは困る」でした。

 

●喪失感

 一騎は『THE BEYOND』11、12話で人生の通過儀礼をすべてこなした。

  • 『THE BEYOND』12話:総士の灯籠を流すという形で、子ども時代と決別した
  • 『THE BEYOND』12話:竜宮島を出るという形で父と母(史彦と真矢)と別れた
  • 『THE BEYOND』11話:子ども(こそうし)が親殺し(一騎)をした

 視聴者の感情が作品についていけないのは当然のことだったのです。

 

●大人になるということ

・総士と一騎

 物語開始時、総士がフェストゥムを象徴し、一騎が人間を象徴していた。しかし、『THE BEYOND』では総士と一騎の立場が入れ替わり、総士(こそうし)が人間になり、一騎はフェストゥムになった

 

・一騎と真矢

 物語開始時、真矢は天才症候群により一騎が考えていることをだいたい理解していた。一騎は真矢の考えていることを理解していなかった。

 『THE BEYOND』1話、真矢はセレノアに右目を奪われた後、SDPが使えなくなったことから、右目の視力と一緒に天才症候群(※1)も奪われた。その結果、真矢は他人の考えを読むことができなくなった。一方、フェストゥムになった一騎は『THE BEYOND』4話で真矢の手を触ることで、真矢の考えを読んでいた。つまり、『THE BEYOND』では一騎と真矢の立場が入れ替わり、フェストゥムになった一騎が真矢の考えていることを理解し、人間になった真矢は一騎の考えていることを理解できなくなっていた。しかし、真矢は以前と同じく、一騎の考えていることを理解していると思っていたので、一騎の「一緒に来るか」(※2)という予期せぬ言葉に驚いた。

 

・一騎と史彦

 物語開始時は一騎は史彦の考えていることを理解していなかった。しかし、『THE BEYOND』12話で一騎は「ここが帰るべき場所だ」と史彦の言葉を先取りしたことからもわかるように、史彦の考えを理解していた。

 

 一騎は竜宮島が平和だった時、甲洋に言った言葉通り、竜宮島を出て行った。『RIGHT OF LEFT』の冒頭で描かれたように、竜宮島を出ること=大人になることを意味していたので、一騎は総士、真矢、史彦との関係が逆になった時、大人になったのである。

 

●命の使い道

総士「未来へ導け、一騎」
『EXODUS』26話

 一騎は『THE BEYOND』11話で総士の言葉通り、未来を導いた。

 

一騎「総士、俺はここにいる。
   ここでお前を待っている」
一期26話

 総士は生まれ変わって別人になった。そのため、一騎が一騎はここ(竜宮島)にいる理由にしていた総士はもういない。

 一騎は自分がフェストゥムになるという形で、人間である父(史彦)と母(真矢)とは別の存在になった。一騎の「命の使い道」という言葉は、親と子という家族から開放された後、私たちはどのように生きるべきなのか、という問いかけなのかもしれません。

 

●終わりに

 『THE BEYOND』を理解し終わったことで、自分の中で『ファフナー』は完結しました。『THE BEYOND』12話ラストを見た日を2019年11月7日とすると、2年1ヶ月で答えにたどり着いたことになります。

 私が『ファフナー』を理解できた理由の一つに「物語の中で描かれた内容をすべて受け入れ、肯定することができた」があります。これは自分とは全く違う価値観を描いた物語を理解する力になるのです。

 

 

※1 冲方丁『冲方丁のライトノベルの書き方講座』(宝島社文庫)の遠見真矢の項に「天才症候群の兆候により、異常な推測能力を発揮し、相手の顔を見ただけで、『だいたい考えていることがわかる』といった読心術的な観察眼を持つ」という記述があります。

※2 『THE BEYOND』12話、祭りの後、喫茶楽園前での台詞。