2020年5月9、10日から2020年6月30日まで、YouTubeで『RIGHT OF LEFT』と『HEAVEN AND EARTH』が配信され、見直しました。その時のメモです。この記事には『THE BEYOND』の内容が含まれています。
●RIGHT OF LEFT
・人類の価値観の否定
遼MONO「誰かが生き延びるため……誰かが犠牲になった」
『RIGHT OF LEFT』
『ファフナー』はこの時代の人類の価値観を示してして始まったが、人類軍の支配する世界で育ったこの価値観をマリスが否定した。
マリス「誰かが生きるために誰かが犠牲になる、
そんな世界を捨てて生きよう、総士」
『THE BEYOND』1話
つまり、『THE BEYOND』は人間がフェストゥムの価値観を肯定したところから物語が始まったということになる。そのため、マリスはフェストゥムが人間の価値観を受け入れた世界ではなく、人間がフェストゥムの価値観を受け入れた世界になることを望んだ。
マリス「あいつらは誰かを犠牲にして生き延びようとする。
でもベノンは違う。
たとえ敵でも祝福を与えて仲間にする」
『THE BEYOND』2話
マリスは降伏した人類軍の指揮官がマレスペロの祝福を受けるところを見た後の会話から、自分の意思でマレスペロの祝福を受けることを選ばなかった者がソルダード化されると思っているのかもしれない。
マリス「あの人、もう元に戻れないね」
マレスペロ「君とは違うよ、マリス」
『THE BEYOND』5話
マリスは自分の意思でマレスペロの祝福を受けた人間だと思っているが故に、人類に対してマレスペロの祝福を受けることを迫っているのかもしれない。
マリス「マレスペロの祝福を受けろ。
そうすればフェストゥムとの共存もできるだろう」
『THE BEYOND』第7~9話PV
・竜宮島の大人
遼「狭い島ですから、誰かが助けてくれます。
それに……一人じゃ、ないですから」
『RIGHT OF LEFT』
総士はフェストゥムとの最初の戦闘で父と義姉を失い、以後、アルヴィス内で暮らしをしていたが、そのことに関して島の大人たちは誰一人、疑問を抱かなった。
●HEAVEN AND EARTH
・アルヴィスの価値観の否定
狩谷「所詮、私たちは実験台だったのよ。
下の世代を真の子孫にするためのね」
弓子「それと人類軍となんの関係があるのよ」
一期17話
人類軍に協力するという形でアルヴィスの価値観を否定した狩谷の姿勢を咎めていた弓子は真矢のパイロットの適正データを改竄し、真矢を戦いから遠ざけるという形でアルヴィスの価値観を否定した。この件はコアが介入したことで弓子は無罪になり、真矢がパイロットになった。
弓子は道生との間に子どもが生まれたが、その子どもはフェストゥムとお話ができるという特殊な力を持っていた。ボレアリオス・ミールに空を奪われ、アルヴィスは袋小路に追い詰められていたため、2歳の子どもを戦争の道具として使うことに対して、何の疑問も抱いていなかった。
美羽「美羽、もっとおはなしできるよ」
『HEAVEN AND EARTH』
そのため、史彦は美羽の提案を即座に受け入れた。
史彦「行こう、君にしかできない」
『HEAVEN AND EARTH』
しかし、美羽の母、弓子は2歳の子どもを戦争の道具として使うことを拒否。史彦に銃を発砲してしまった。
保安員「やめなさい、止まるんだ」
弓子「美羽をどこへ連れていく気ですか。
私から美羽を奪わないで」
『HEAVEN AND EARTH』
娘を守るためにアルヴィスに利用されることを拒んだ弓子の価値観はマリスのこの台詞そのものである。
マリス「あいつらは誰かを犠牲にして生き延びようとする」
『THE BEYOND』2話
マリスは9歳になった美羽に、5年前亡くなった母、弓子の価値観を突きつけているということになる。
※ 『RIGHT OF LEFT』のテキストはすべて冲方丁『蒼穹のファフナー ADOLESCENCE』(2013年、ハヤカワ文庫JA)に収録された脚本から引用しました。