「HEAVEN AND EARTH」を見直した感想 Part1

 キッズステーションで『HEAVEN AND EARTH』を放送すると聞き、思わずパッケージ版と上映版を見てしまいました。『THE BEYOND』のネタバレを含む内容は別の記事として公開します。

 

・喫茶楽園

 喫茶楽園の窓辺の席は今、ここにいない人と会える場所だった。

HEAVEN AND EARTH

『EXODUS』17話

 向かって右側が今いる人、左側がいない人というのは2作品で共通している。『HEAVEN AND EARTH』では一騎が総士の幻影に、『EXODUS』17話ではカノンが一騎の幻影に会っているが、その状況はあまりにも対照的だった。

    HEAVEN AND EARTH EXODUS 17話
  時間 午後
  幻影を見た時の状況 眠っていた 目が覚めていた
  二人の接触方法 バックハグ 手を差し出す
  物理的な接触 二人は触れ合う 二人は触れ合わない
  最終的な結果 この世にいなかった人が戻ってきた この世にいた人はいなくなってしまった

 『EXODUS』17話ラストでのカノンと一騎のシーンは『HEAVEN AND EARTH』の一騎と総士のシーンを念頭に置いていると思われる。この世にいる人と幻影が物理的に接触すると幻影をこの世に引き寄せることができるが、この世にいる人と幻影が物理的に接触しない場合、幻影に引っ張られるかのように、この世にいる人がいなくなってしまった。

 

・水中展望室

■エーギル・モデル
起動実験中に暴走し、パイロットを含めた複数の犠牲者を出す事故を起こしてしまった。この起動実験中事故現場は、水中展望室として保存されている。(※1

 皆城鞘が同化され、乙姫が生まれたキールブロックが皆城家にとって大切な場所であるのと同じように、『HEAVEN AND EARTH』以降、暉と里奈の両親が亡くなったゼロファフナーの前は西尾家にとって大切な場所になった。暉と里奈が亡くなった両親について話していた。

里奈「あんた、しゃべれるんじゃん」
 暉「ファフナーに乗ればまたしゃべれるって思ってた。
   父さんと母さんが乗って消えたっていう機体、乗りたいなあ。
   ゼロファフナーに」
『HEAVEN AND EARTH』

 

 暉と里奈の祖母の行美も水中展望室で娘夫婦に対する思いを語っていた。

西尾「あんたはえらいよ保。
   ファフナーから逃げなかったんだから」
小楯「先生」
西尾「あたしは娘夫婦をこの世から消したこれをずっと避けていた」
『HEAVEN AND EARTH』

 

 『EXODUS』24話にも暉と里奈が水中展望室で話す場面があった。

 この時、両親についての話は出ていないが、里奈は過眠という新同化現象に悩まされていたとはいえ、ベンチに横になるというリラックスした姿が描かれている。

 

・島の外の人間

カノン「自分と機体を信じて戦え」
『HEAVEN AND EARTH』

カノン「ファフナーが怖いなんて初めてだ」
『EXODUS』16話

 『HEAVEN AND EARTH』で機体を信じていたカノンだが『EXODUS』では一変、機体を信じられなくなった。『究極BOX』のブックレットに収録されている対談の中で、冲方丁が新同化現象の詳細について説明しているが、それを読むと「ファフナーが怖いなんて初めてだ」という台詞を竜宮島で生まれ育った人間ではなく、島の外で生まれ育ったカノンに言わせている意味が理解できる。

 

・フェストゥムの本能

   操「そう、俺に君たちのコアを同化させて」
  史彦「なんだと」
   操「そうすれば戦ったりせず、
     ここのミールを俺たちのミールが同化できる。
     俺たちに痛みや死の恐怖を与えたのはこの島だから」
  史彦「我々ごとお前たちの痛みを消すと」
『HEAVEN AND EARTH』

 ボレアリオス・ミールは竜宮島のコアを消そうとしたが、思えばフェストゥムは個を持った瞬間から常に人間が教えた知識を消そうとしていた。

イドゥン「戻せ、我々を無へ戻せ」
一期26話

 おそらくこれはフェストゥムの本能なのだろう。

 竜宮島のミールを同化して消すというボレアリオス・ミールの作戦が失敗したことで、地球上のアザゼル型のフェストゥムは現在の地球上にある戦力で竜宮島を消すのは無理だと判断し、新たなミールを地球に呼んで地球上の全てものを同化しようとした(※2)。

 

・灯籠

 暉「フェストゥムの無を見た。
   父さんと母さんが消えたのと同じ。
   二人はどこかにいると思ったけど、どこにもいなかった」

里奈「灯籠流すのも嫌がってさ」
『HEAVEN AND EARTH』

 暉はファフナーに乗るまで父と母の死を受け入れていなかったので、祭りで父と母の灯籠を流さなかった。

 

香奈恵「早苗の灯籠を流したこともないのね、私たち」
『EXODUS』17話

 『EXODUS』の鏑木充と香奈恵も暉と同じく、娘、早苗の死を受け入れていないので祭りで灯籠を流さなかった。

 『HEAVEN AND EARTH』では暉を通して、両親がいなくなったことを受け入れられない子の姿が描かれたが、『EXODUS』で逆に鏑木充と香奈恵を通して、子がいなくなったことを受け入れられない両親の姿が描かれた。

 

・フェストゥムと人間

        操「お願い、降伏して
          みんないなくなる」
『HEAVEN AND EARTH』

ベイグラントのコア「みんないなくなればいいのに」
『EXODUS』14話

 フェストゥムである操は竜宮島に住む人間を消すことは望まなかったが、元々、海神島のコア、つまり人間側にいたベイグラントのコアはすべての人間を消すことを望んだ。

 

・見送る人

  操「生まれよう、一緒に」

 乙姫「本当のお別れだね、芹ちゃん」
『HEAVEN AND EARTH』

 『HEAVEN AND EARTH』乙姫はボレアリオス・ミールのコアが生まれ変わったのを見届けた後、いなくなった。その場に立ち会ったのは芹だった。

 

  彗「わかったんです、敵の正体が」

カノン「母さん、ショコラをお願い。
    ごめん、先に家に帰りたいんだ」
『EXODUS』17話

 『EXODUS』でカノンはゴルディアス結晶を奪われないようにするために引き寄せた最善の未来をすべて見届けた後、いなくなった。すべてを知っている織姫は祭りの前にキールブロックでカノンに会って話をし、灯篭流しが終わった後、家に帰るカノンの姿を見送った。

 

・暉の心象風景

 水中展望室からの眺めは暉の心象風景だった。最初の実地訓練を終えた後、里奈と水中展望室で話した。

暉「ファフナーに乗ればまたしゃべれるって思ってた。
  父さんと母さんが乗って消えたっていう機体、乗りたいなあ。
  ゼロファフナーに」
『HEAVEN AND EARTH』

 暉はファフナーに乗れば父と母に会えると信じていたように感じる。父と母がいなくなったことで発症した失語症から回復しつつあるものの、父と母がいなくなったことをまだ受け入れていないため、水中展望室からゼロファフナーはぼんやりとしていた。

 

 暉はその後の戦闘でフェストゥムに同化されたかけた後、父と母がいないことを受け入れた。

暉「フェストゥムの無を見た。
  父さんと母さんが消えたのと同じ。
  二人はどこかにいると思ったけど、どこにもいなかった」
『HEAVEN AND EARTH』

 この後、水中展望室で祖母、行美がゼロファフナーの起動試験を見守っていたが、その時は水中展望室ではっきりとゼロファフナーの姿を見えた。

 

 『EXODUS』24話、水中展望室で暉と里奈が話をしていたが、その場面ではゼロファフナーの姿ははっきりと見えていた。

 

 

※1 『蒼穹のファフナー』DVD-BOX、BD-BOXのブックレットのファフナー/機種のゼロ号ファフナー(DVD-BOX)、エーギル・モデル(BD-BOX)の項から引用。

※2 『EXODUS』BD-BOXのブックレットに掲載されている冲方丁「作品コンセプト キャラクター概要 主要キーワード」で以下のように説明されている。

◯六つのアザゼル型
「新たなミール」を呼んで、ともに地球を同化したがっている。

 


関連記事
 ・「HEAVEN AND EARTH」を見直した感想 Part2