【蒼穹のファフナー 】謎の描き方

 一期と『EXODUS』、『THE BEYOND』の謎の描き方について比較してみました。

 

●「EXODUS」と「THE BEYOND」

 『EXODUS』と『THE BEYOND』には明確な答えが示されていない謎がいくつかあります。

・「EXODUS」15話

1. 総士はマークニヒトの空間跳躍を使って第19キャンプから第23キャンプに移動し、人類軍がマークフュンフの機体を鹵獲しているのを目撃したが、救出しなかった。

2. 戦闘終了後、総士は広登について以下のように話していた。

 暉「広登がさらわれたんです。
   助けに行きましょう。
   あいつはきっとまだ生きてる」
総士「その可能性を否定する気はない」
『EXODUS』15話

3. 総士が広登を救出しなかった理由は明らかにされていない。

 

・「EXODUS」17話

1. カノンは12月17日より先のデータを見た後(ファフナーを降りた後の体重は3.012kg)、ファフナーに再度、搭乗する。

 容子「これ以上の無茶は許可できないわ」
イアン「敵と戦う前に倒れるぞ」
カノン「わかったんだ、答えが。
    大丈夫だよ、母さん。
    これが最後だから」
『EXODUS』17話

2. この時の戦闘の様子は一切描かれていない。ファフナーを降りた後のカノンの体重は21gだった。

3. この後、カノンはキールブロックへ行き、織姫と話した。カノンは最後にファフナーに乗った時、何を見たのだろうか。

 

・「EXODUS」24話

1. 目覚めた一騎は海神島に行き、ディアブロ型に乗っ取られた機体のいる一帯を同化したが、ベイグラントのフィールドを防いでいたゼロファフナーのいる場所までは同化しなかった。

2. その後、マークザインはルガーランスを手に取り、そこからベイグラントのフィールドを攻撃した。

3. 一騎が同化を肩代わりして美三香は人間の姿を取り戻したが、一騎が同化を肩代わりしなかった暉はいなくなった。

4. 一騎はダーウィン基地から帰ってきた総士と真矢に暉がいなくなったことを告げた。

一騎「暉は、もう、いないんだ」
『EXODUS』25話

5. 一騎がゼロファフナーのある場所まで同化することは可能だったはずであるが、なぜか同化しなかった。その理由は明らかにされていない。

 

・「EXODUS」26話

1. 一騎は存在と無の地平線を越える総士を見送った後、マークニヒトのコックピットで赤子を見つけた。

2. その赤子は皆城総士の生まれ変わりで、皆城総士と名付けられた。

皆城総士
第四次蒼穹作戦にてフェストゥムに同化され砕け散った皆城総士の生まれ変わり。
転生前の皆城総士とは別の人格を有している。
『THE BEYOND』公式サイト/CHARACTER

3. 総士は存在と無の地平線を越える前、一騎に「互いの祝福の彼方で会おう、何度でも」と言っていることから、一騎は総士が生まれ変わったことを知っているはずである。事実、一騎は総士と同じように生まれ変わって別の人格を有していた島のコアには名前を聞いていた。

一騎「君の名前は?」
織姫「まだないの」
『EXODUS』6話

4. それではなぜ一騎は生まれ変わって別の人格を有している人間に、生まれ変わる前と同じ名前をつけたのだろうか。

 

・「THE BEYOND」2話

1. 島の外の世界を知りたいこそうしは無線機で呼びかけた。

こそうし「僕は知りたい。
     海の向こうには何があるのか。
     世界は本当はどうなっているのか。
     誰か教えて下さい」
『THE BEYOND』2話

2. こそうしの発信した電波を受信した一騎がこそうしに真実を見せた。

  一騎「これが真実だ。総士」
『THE BEYOND』2話

3. 一騎がこそうしの目の前で妹を同化するという一番残酷な方法で真実を教えた理由は明らかにされていない。

 

 一期放送時、制作スタッフは以下のような発言をしていました。

千野 この作品では全て逐一解説するのは止めようと考えていました。
――それはなぜですか?
羽原 演出する上でかっこわるいじゃないですか。例えば総士に設定を解説させる。それって、本来視聴者のことをしらないはずの総士に無理な演技をさせることになるわけですから。
『月刊ニュータイプ』2004年12月号付録
蒼穹のファフナー Log-Book

 『EXODUS』と『THE BEYOND』は冲方丁が脚本を手掛けたこともあり、この時の考え――作品を理解すると、自ずと謎が解ける――に基づいて作られているのではないでしょうか。すなわち。

 

●一期

 『EXODUS』と『THE BEYOND』とは異なり、一期7話で描かれた翔子の墓が汚された事件は冲方丁が脚本を手掛けていないため、別媒体(ドラマCD)で答えが明かされました。

1. 墓参りに来た甲洋は汚されている翔子の墓を見た。

2. 墓地に来る前、甲洋はアルヴィス内でメカニックの愚痴を聞いていた。

   放送「ブルクスタッフに業務連絡。
      マークゼクス抹消により作業シフトが繰り上げとなりました。
      各自担当部署での作業、確認をお願いします。
      繰り返します。
      マークゼクス抹消により」
スタッフ1「全くあの野郎面倒なことやってくれたよな」
スタッフ2「俺たちの大事なマークゼクスをよ」
スタッフ1「メカニックの身にもなってみろっていうんだよ」
一期7話

3. アルヴィスのスタッフの愚痴はミスリードであり、一期7話放送から2ヶ月後に発売されたドラマCDで翔子の墓を荒らした犯人が明かされた。

   真矢「あのね、翔子の悪口の噂を流したの、皆城君。
      ねえ、もしかして、翔子の墓にあんなひどいことさせたの」

   総士「否定はしない」
ドラマCD『NO WHERE』

 

 一期はドラマCDで謎を解くという形を取りましたが、本当は『EXODUS』と『THE BEYOND』のような形で描きたかったのかもしれません。

――では、謎は謎のままに?
中西 いえいえ、謎はなるべく解いた形で着地させます。営業的で申し訳ないのですが、発売中のサントラアルバムに付いているドラマCDを聞くとより分かる事実があったりしますよね。
『月刊ニュータイプ』2004年12月号付録
蒼穹のファフナー Log-Book