冲方丁「蒼穹のファフナー」(電撃文庫)

 アニメ「蒼穹のファフナー」のノベライズですが、アニメとは物語、設定がかなり異なります。沖方丁は12話~15話は前任者と共同名義、16話以降は単独でシナリオを手がけましたが、自分がシナリオを手がける前(1~11話)を自分の手で書き直した物になっています。そのため、この本は物語の前半部分(7、8話の間くらいかな)で終わっているので、明らかにアニメを見ている人に向けたノベライズとなっています。といっても文庫1冊なので、内容の大半は物語の発端部分(アニメでいうと1、2話)に割かれています。また、映像に比べて文字の方が情報量が多いので、細かい部分まで設定されていることがよくわかります。また、私はアニメ以上に突っ込んで描かれた思春期の子供の持つ、ダークな内面描写に引き込まれました。

 個人的にはアニメの1、2話では、主人公とその友人の間に起きた痛ましい過去を具体的に描いていないこと。そして、それに伴って主人公がロボットに乗る理由がはっきりしていない点に不満を感じていたので、このノベライズには満足しています。いずれにせよ、「ロボットは面白くない、キャラクターデザインも好みではない」にもかかわらず、私がこのアニメに夢中になったのは、シナリオの力だったということがよくわかりました。

 第1話からシナリオを沖方丁が手がけていれば、翔子は好きなキャラになったと思います。そこが残念でなりません。