【蒼穹のファフナー】春日井正浩、諒子、甲洋

 甲洋の育ての親だった春日井正浩と諒子はどういう考えに基づいて甲洋を育てたのだろうか。

 

・春日井正浩、諒子

  正浩「うちはアルベリヒド出身だからね。
     これでもう仕事は終わりさ」

  正浩「羽佐間んところと同じでうちのも体がね。
     この仕事じゃないと計画に参加できなかったんだ」
一期7話

 春日井正浩が子育てを「仕事」と言っていることから、アルヴィスの入植者として募集した仕事の中に「里子を育てる」というものがあり、春日井夫妻はこの仕事の担当者として採用されたのではないだろうか。春日井夫妻はアルベリヒド機関から里子を渡された時の気持ちをこそうしが代弁している。

こそうし「誰よりも優れた兵士になってみせる」
『THE BEYOND』5話

 この言葉を春日井夫妻の立場に置き換えると「誰よりも優れた兵士を育ててみせる」となる。そのため、春日井夫妻は甲洋を子どもではなく兵士として育てたのではないだろうか。そう考えると、春日井夫妻が赤紙を受け取った時の反応も納得できるのではないだろうか。

  正浩「本当か」
  諒子「やったわ、あなた。
     ほら」
  正浩「おお、ちょっと見せてくれ。
     おお、本物だ」
  諒子「甲洋、降りて来なさい、甲洋」
一期3話

 春日井夫妻の目標はアルベリヒド機関から託された子どもが有能な兵士になることであり、その判断基準は「一体でも多く敵を倒す」(※1)ことだった。そのため、春日井夫妻は同じく里子だった翔子と甲洋を比較し、翔子の方を評価した。

  正浩「あそこの娘は当たりだったのさ。
     敵を一体倒した。
     うちのははずれだな」
一期7話

 里子を育てることが春日井夫妻のアルヴィスでの仕事であるならば、子どもを託したアルベリヒド機関からの評価が気になるのは当然である。

  正浩「じゃあ、俺たちはずっとはずれを育てたというレッテルを張られたまま、この島で生きていくのか」
  諒子「そんなの嫌よ」

  正浩「あいつのお陰で俺たちまで評価が下がるんだぞ。
     新しい子供に期待するのは当然だろ」
  諒子「羽佐間さんのようにレベルの格下げはごめんだわ」
一期9話

 当然、子どもの戦闘に能力によって、親を評価するシステムもあったのだろう。

  正浩「あいつのお陰で俺たちまで評価が下がるんだぞ。
     新しい子どもに期待するのは当然だろ」
  諒子「羽佐間さんのようにレベルの格下げはごめんだわ」
一期9話

 だが、アルヴィスに入植した人々の多くは子育てを通して変わった。

  総士「あなたは、血を流したことがあるのですか」
  史彦「嫌というほどな」
一期15話

  史彦「一騎がいなければ俺もミツヒロと同じ道を選んでいた」
一期21話

 そのため、子どもの能力で親を評価するシステムは形骸化していたのではないだろうか。

スタッフ「評価の問題ではありません。
     まだ息子さんは生きているんですよ」
一期9話

 一騎が生まれる前の史彦は春日井夫妻に近かったため、史彦には春日井夫妻の考えをよく理解していたと思われる。

  史彦「優秀なパイロットを一名育ててくれたことを感謝する。
     だが、お前たちに人の親になる資格はない」
一期9話

 

・親を選ぶ

 春日井夫妻が甲洋を兵士として育てたことは甲洋の言葉からも明らかである。

  一騎「なあ、甲洋はなんでパイロットなんかになりたいんだ」
  甲洋「そりゃあ、義務だし、親が喜ぶし、
     それに一緒にいたい相手がいるし、な」
ドラマCD『STAND BY ME』

  甲洋「お前らみたいに早く役に立たないと、
     島から追い出されちまうからな」
一期4話

 しかし、両親の当てははずれ、甲洋は兵士向きの性格ではなかった。

   衛「お前も狩谷先生のところで戦闘映像見せてもらえば」
  甲洋「やめとくよ。
     自信なくしそうだから」
一期4話

  甲洋「みんな、みんななにやってるんだよ。
     戦争なんだぞ」
一期4話

 実戦形式の訓練でも甲洋は「誰よりも優れた兵士を育てる」という親の期待には応えることができなかった。

  甲洋「俺の力ってこの程度だったみたいだね」
  諒子「いいのよ、あなたの実力がわかっただけでも。
     成果はあったわ」
  正浩「さあ、これでもう終わりだ」
一期7話

 甲洋が親に隠れて飼っていた犬が父、正浩に見つかってしまった時、父、正浩の本音が漏れた。父、正浩にとって甲洋の仕事とはパイロットだった。

  正浩「うちには犬になんか食わせる飯はないぞ」
  甲洋「俺の食事を分けるから飼わせてよ」
  正浩「もうよけいなことはするな。
     お前はパイロットだけやっていればいいんだ。
     さっさと捨ててこい」
一期7話

 甲洋は父の言葉に従ってショコラを捨てるのではなく、新しい飼い主を探していたことから、甲洋の方から正浩、諒子という二人の親を捨て、別の親を探していたと見ることができる。それは容子がショコラは引き取ってから10年後、海神島で甲洋は容子の世話になっていたことからも明らかである(※2)。

 

 

※1 一期13話、日野洋治の「一体でも多く敵を倒すのではなく」という台詞から引用。

※2 羽佐間家の容子、甲洋、操は、容子が母、甲洋が父、操が子という関係になっている。