「蒼穹のファフナー」を見直した感想 Part7(BS11)

 2020年7月3日からBS11で再放送されている一期15話~23話を見た時の感想をまとめました。『THE BEYOND』のネタバレが含まれています。

 

・こそうしがマークニヒトに乗った理由

ルヴィ「あなたが何者かを告げる器があります。
    それに乗ってください」
『THE BEYOND』3話

 ルヴィはなぜこそうしをマークニヒトに乗せたのだろうか。

 

 一騎の母、紅音はフェストゥムに同化されていなくなった。

真壁紅音は、一騎の母親で、日本自衛軍のエース・パイロットだった。
だが、竜宮島での戦闘中、史彦をかばってフェストゥムに同化された。
2133 皆城鞘 死亡、真壁紅音 同化。

 一騎は母がいなくなった理由を父に尋ねたが、父は答えなかった。

一騎「なんで死んだの、母さん。
   病気だったのか」
史彦「俺のせいだ」
一期15話

 一騎の目の前でフェストゥムが母の姿をしたミョルニアを同化した。この時、一騎は母がいなくなった瞬間を目撃したということになる。

 一騎はミョルニアを同化したフェストゥムを攻撃することで、母のかたきを討とうとしたということになる。

 戦いが終わった後、一騎は溝口から母がいなくなった時の話を聞いた。

溝口「史彦をかばってフェストゥムにやられたのさ、紅音ちゃんは」

一騎「教えてくれて、ありがとうございます。
   お陰で、少しすっきりしました」
一期15話

 一騎は母がいなくなった時の状況を知っただけでなく、母がいなくなった時に感じたかたきを討ちたいという気持ちを満たした後だったので、すっきりしたのである。一騎はミョルニアを通して、母の死を受け入れたということになる。

 

 一騎はこそうしの目の前でこそうしの妹を演じていたフロロを同化し、アルヴィスはこそうしの住んでいた偽竜宮島を破壊した。

 ルヴィは海神島に戻ってきたこそうしにマークニヒトに乗るように指示した。

 ルヴィ「あなたが何者かを告げる器があります。
     それに乗ってください」
『THE BEYOND』3話

 一期15話の一騎の行動と重ね合わさせると、こルヴィは妹と故郷のかたきを討たせるためにこそうしをマークニヒトに乗せたということになる。こそうしはファフナーに乗るのは初めてであるのに対して、アルヴィスのファフナー・パイロットは手練の戦士である。そのため、こそうしは一騎と海神島にを滅ぼすことはできなかったが、妹と故郷を奪われた時に感じたかたきを討ちたいという感情は満たした結果、妹を殺した一騎を許しいないものの、妹の死と故郷の喪失を受け入れた。そのため、美羽がこそうしを眠らせた後、こそうしは次の段階に進んだ。

こそうし「僕はここ、知ってる」
 ルヴィ「偽りの現実から逃れなさい、総士」

こそうし「この島の砂浜を誰かと歩いてた。
     あれは、誰?」
『THE BEYOND』4話

 ルヴィはこそうしの気持ちを整理させるために、こそうしをマークニヒトに乗せたのである。

 

・ザルヴァートル・モデル

 一期では一騎の母、紅音の姿をしたフェストゥム、ミョルニアが一騎にマークザインを渡した。

ミョルニア「私はお前というアルヴィスの子にミールの器を渡す。
      乗れ」
一期15話

 

 『EXODUS』ではプロメテウスがミツヒロにマークレゾンを渡した。

プロメテウス「さあ器に乗って」
『EXODUS』23話

 

 『THE BEYOND』では総士がこそうしにマークニヒトを渡した。

    総士「もし君がこの機体と出会うなら、それが君の運命となる」
『THE BEYOND』3話

 一期で一騎にマークザインが渡したのが一騎の母(の姿をしたフェストゥム)だったことから、以後、ザルヴァートル・モデルを渡す人はパイロットの母ということになる。マークレゾンの場合は「プロメテウスが母、ミツヒロが子」であり、マークニヒトの場合は「総士が母、こそうしが子」ということになる。コアはその姿とは関係なく、生物学的には女ということになる。

 

・名は体を表す

 竜宮島での初めてフェストゥムとの戦闘時に公蔵が戦死したため、皆城兄妹には父と母がいなかった。そのため、総士が乙姫の父を、総士の母を乙姫が担った。

 乙姫の父の役割を担ったのは総士だった。総士は子どもの望みをかなえようとする父だったが、乙姫からダメ出しを食らった。

総士「なんでも望み通りにしよう」
乙姫「家族みんなで、暮らしたいな。
   安心して、ただのわがままだから
   そういう時はお兄さんらしく無理だって言っていいんだよ、総士」
一期17話

 乙姫の母の役割を担ったのは千鶴だった。千鶴は一人でフェストゥムと戦おうとする乙姫のそばにいることを望み、その身を呈して乙姫を守ろうする母だった。

乙姫「千鶴は戻って。
   シェルターはまだ安全だから。
   ここまで一緒に来てくれてありがとう、千鶴」
千鶴「私も行くわ。
   システムの研究者、いえ島に住む人間として見届けたいの」
一期16話

 

 総士の母の役割を担ったのは乙姫だった。乙姫は子どもの話をきちんと聞き、子どもの望みを受けれる母だった。

総士「新国連の最終決戦計画に参加する場合、一騎達と共に戦いたい。
   僕がこの島を出るためのコアの許しがほしい」
乙姫「とっくの昔にあたしから離れていたくせに。
   でも、そんなに長くはみんなと一緒にいられないよ」
総士「ジークフリードシステムとファフナーの二重の負荷がかかっても、
   18時間は活動できる」
乙姫「それが一番大切な人達と一緒にいられる幸福な時間」
総士「そうだ」
乙姫「あたしのことは気にしないで行ってらっしゃい」
一期22話

 総士の父の役割を担ったのは史彦だった。史彦は総士が間違った判断をした時は叱った。

総士「明日は僕も行きます」
史彦「君はパイロット同士で海に行くのだろう」
総士「そんな場合では」
史彦「こんなときだからこそ、仲間との時間を大事にすべきではないのかね」
一期22話

 『THE BEYOND』では史彦と千鶴の関係が進展していたが、一期で史彦と千鶴が父と母を失った総士と乙姫の両親の役割を担っていたことを暗に示しているのではないだろうか。

 

・千鶴と真矢

 真矢が初めてファフナーのシミュレーション訓練を行う時、母、千鶴が見送った。

千鶴「気分が悪くなったら、すぐに言うのよ」
真矢「大丈夫だよ、お母さん」
一期19話

 こそうしが初めてファフナーのシミュレーション訓練を行う時、真矢がこそうしを見送った。

真矢「ファフナーは操縦しなくていい。
   自分がファフナーになるの。
   代わりに心も体も影響を受ける。
   命を奪われるくらいに」
『THE BEYOND』5話

 こそうしには母のいないため、その代わりとして真矢がこそうしの母の役割を担っていたということになる。

 

・道生と真矢

 一期19話、道生とカノンが咲良を同化しようとしているフェストゥムを攻撃すると思った剣司は二人に銃を発砲した。戦闘終了後、道生は剣司と衛に鉄拳を下し、味方に銃を向けるという行動を叱った。

道生「今度、味方に銃を向けてみろ、俺がぶっ飛ばしてやる。
   貴様らの行動は馬鹿げた自滅だ」
一期20話

 『THE BEYOND』4話、妹と故郷を奪われたこそうしは海神島を攻撃した。アルヴィスはこそうしを同胞だと考えているため(※1)、こそうしは同胞を攻撃をしたと認識していた。そのため、真矢は同胞を攻撃したこそうしの行動を叱るために、銃を二発、発砲して、脅したのではないだろうか。

真矢「覚えときなさい。
   もしまたファフナーで私たちを襲ったら、
   私があなたを撃つ」
『THE BEYOND』4話

 道生と真矢の行動は明らかにやりすぎだった。そのため、道生の行動を史彦が、真矢の行動を美羽が咎めた。

史彦「そこまでだ。
   あとは私が引き受ける」
一期20話

美羽「真矢お姉ちゃん、やめて」
『THE BEYOND』4話

 

・後継者

道生「せめて後続のパイロットが育つまで降りるわけにはいかないんだ」
一期23話

 道生のこの台詞を聞いた時に思い出したのが、『THE BEYOND』の零央の台詞だった。

零央「適正を持っているのは何年も下の奴らですから
   もう少しがんばります」
『THE BEYOND』4話

 道生と零央は後継者が育つまで、ファフナーに乗ることを選んだ。しかし、里奈は後輩をファフナーに乗らせたくないという理由でファフナーに乗り続けていた。

里奈「あーあ、パイロットなんて辞めたいのにさ。
   次は後輩の番って思うと、続けなきゃって気になるのね」
『EXODUS』2話

 

 

※1 バーンズの質問に対する史彦の答えを参照。史彦はこそうしがフェストゥムに教育された後も、同胞として接しようとしていた。

バーンズ「だが、道しるべとなる子どもは何年もの間、敵の支配下にあった。
     その子どもが人類の脅威と判断された時はどうする」
  史彦「同胞たるべく務める」
『THE BEYOND』5話